ステーブルコインは、投機的な資産から、新興国における不可欠なインフラへと位置付けを変え、先進国でも導入が急速に拡大している。一方で、市場の見方は割れている。分散型プロトコルを通じてステーブルコインが主流になると見る向きがある一方、トークン化預金が成長の原動力になると予測する声もある。
これは、貨幣の将来像に関する重要な問いを投げかける。ステーブルコインは世界的な決済を変革するのか、それとも従来の銀行が適応し、境界線が曖昧になるのか。
そして何より、ステーブルコインは市場を不安定化させるのか。
コインテレグラフは、2026年のステーブルコインについて、仮想通貨業界の幹部20人に見解を求めた。市場の普及、規制動向、技術進展、新たなビジネスモデルを網羅し、新年を迎える時点でのステーブルコインの全体像を示す。
ステーブルコインは金融インフラの中核へ
ステーブルコインの24時間365日稼働するハイブリッド設計は、リアルタイム決済、取引コスト削減、アクセス性の向上を支えている。
ニューラの共同創業者兼最高プロダクト責任者であるタイラー・スローン氏は、ステーブルコインが決定的な転換点に達したとみている。
「2026年には、ステーブルコインは『仮想通貨の基礎要素』から、DeFiや広範な金融システムにおける中核的な決済インフラへと移行する。送金は即時決済となり、ガス代は抽象化され、コンプライアンスがスタックに直接組み込まれる」と述べた。
エフジー・ネクサスでデジタル資産部門の共同創業者兼CEOを務めるマヤ・ブイノビッチ氏は、次の段階は「不可視化」だとし、ステーブルコインがインターネット上で資金を動かす「基本的な配管」になると予測する。
同様の見方を示すのが、エリプティックでEMEA政策・規制対応責任者を務めるマーク・アルリア氏だ。同氏は、2026年がステーブルコインがグローバル金融に組み込まれる年になると見ている。
規制の追い風がステーブルコインの拡大を後押し
規制は、2026年に向けた成長と競争の強固な基盤を築いた。
デジタル・ソブリンティ・アライアンスのマネージングディレクター、エイドリアン・ウォール氏は、ステーブルコインは「仮想通貨製品」という枠を超えつつあると指摘する。ルールが明確になれば、より迅速で安全、かつ準拠した製品が開発され、ステーブルコインの可能性が広がるという。
「2026年までに、規制されたドル建てステーブルコインは主流の決済システムに直接組み込まれ、銀行、フィンテック、流通業者に利用されるようになる」と述べた。
コスモス・ラボの共同CEOであるマグナス・マレネック氏も、勢いの拡大を指摘する。
「テック企業から通信会社まで、法定通貨や実世界資産に裏付けられたデジタルトークンを監督下で発行する新たなステーブルコイン発行体が急増する。逆説的だが、規制が成長を阻害するのではなく、促進する」
オープン・ワールドの最高法務責任者ステファン・ダラル氏は、ステーブルコインが国際送金の10〜15%以上を決済し、加盟店向け決済インフラを支えるようになると予測する。
アジアでは、ストレイツエックスの共同創業者ティエンウェイ・リウ氏が、2026年にはステーブルコインが従来の銀行インフラと競合するのではなく、共存し始めると述べている。
規制がもたらす分断とリスク
一方で、ステーブルコイン規制は市場の分断やリスクも生み出す。規制の断片化は、運用上の課題やコンプライアンスコストの増大、システミックリスクの高まりにつながる。
コンコルディウムのCEO、ボリス・ボーラー=ビロヴィツキ氏は、「ステーブルコイン成長の主なボトルネックは、利用者の信頼不足と安全性への懸念だ。2026年は、誇大な期待と実用性が切り分けられる年になる」と述べた。
同氏はさらに、「生き残るのは、セキュリティ、プライバシーを保護するアイデンティティ、消費者にとっての実際の有用性を重視する、本格的なインフラ構築者だ」と続けた。
市場の二極化もリスク要因だ。セントリフュージの最高法務責任者であり、アネモイの最高コンプライアンス責任者でもあるエリ・コーエン氏は、この分離が、理解不足の利回りメカニズムによって個人投資家に大きな損失をもたらす可能性を警告する。ドル安などのマクロ経済変動が、金裏付け型ステーブルコインといった代替ペッグへの移行を促す可能性もある。
来年は、ステーブルコイン普及が本格的な加速局面に入る可能性がある。タックスビットのCEO、リンジー・アーガラス氏は、機関投資家側の備えが不可欠だと指摘する。
「勢いは本物だ。実験段階から本格導入へ移行しており、早期にコンプライアンスと運用体制へ投資した機関が、世界的に主導的立場に立つ」
機関投資家の財務で採用が進展
オーケーエックスの社長であるホン・ファン氏は、2026年にはステーブルコインが、事業者間決済、財務フロー、B2B決済、給与支払い、日常的な金融業務など、従来は仮想通貨と縁遠かった分野で使われ始めると語る。
「ステーブルコインは、資金が本来あるべき形で動く仕組みに自然に適合する」
サーガの共同創業者兼CEO、レベッカ・リャオ氏は、ステーブルコインが多くの人にとって仮想通貨との最初の接点となり、この分野で最も成長の速いセクターになるとみている。
メルキュリオの共同創業者兼CEO、ペトル・コジャコフ氏は、「2026年には、加盟店での受け入れ拡大とデジタルウォレットへの統合が進み、世界的に浸透が深まる」と予測する。
今年、仮想通貨全体の時価総額は一時4兆ドルを超えたが、ステーブルコインの時価総額は3,000億ドル強にとどまっている。変動性資産と安定資産の間にあるこの大きな乖離は、2026年に向けたデジタル金融分野で最大級の機会の1つだと、ラークのCEO、ケビン・ラッシャー氏は述べている。
トークン化預金が競合に浮上
ステーブルコインには、強力な競合としてトークン化預金が浮上する可能性がある。
アップホールドのCEO、サイモン・マクラフリン氏は、トークン化預金が、預金保険などの規制上の保護を維持しつつ、従来の銀行預金をブロックチェーン上でデジタル表現することで、ステーブルコインの優位性を揺るがす可能性があると指摘した。
銀行が許可型台帳やプログラム可能なマネー機能を導入するにつれ、トークン化預金は、規制銀行の安全性と安定性を必要とする用途で、優先されるデジタルマネーとなる可能性がある。
「2025年がステーブルコインの年だったとすれば、2026年はトークン化預金の年になる」と同氏は述べた。
新興国で包摂を後押し
アフリカ、アジア、中南米では、日常決済、送金、資産保全の手段としてステーブルコインの採用が進んでいる。ファセットの共同創業者兼最高執行責任者であるダニエル・アハメド氏は、中東で進むデジタル資産エコシステムの深化と、規制当局の明確かつ協調的な対応を指摘する。
「グローバルサウスでデジタル資産の普及が加速する中、ステーブルコインは投機的手段から、包摂的で効率的、価値観に沿った金融システムを支える基盤へと進化している」
オンチェーン市場での進化
来年、オンチェーン市場においてステーブルコインは大きな進化を遂げる。スカイ(旧メイカーダオ)のルーン・クリステンセン氏は、利回りを生まない遊休ステーブルコインが2,300億ドル規模に達しており、機関投資家はDeFiやUSDSを通じて資金を活用し始めると述べる。
マタリキ・ラボの創業者シアン・ブレトナック氏は、「債務トークン」が実質的な信用創出と流動性の厚みを支えると予測する。
デプロイ・ファイナンスの共同創業者ベンジャミン氏は、2026年をこう総括した。
「ステーブルコインは単なる資産ではない。トークン化された世界が待ち望んでいた基盤レイヤーだ」
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