ValuesDAOとは、中央銀行機能のブロックチェーン化を目指す「DeFi版中央銀行システム」のうち、分散型準備通貨VALUESを基軸としたプロジェクトである。VALUESは現在、MAIとのみ兌換可能であるが、近い将来、DAI、FRAX、USDCなどのトークンとも兌換可能となる予定。本プロトコルは、経済的インセンティブの行使により、VALUESトークンの供給と価格をコントロールする「国庫」機能も有する。

DeFi版中央銀行システム

ValuesDAOは、新しい「DeFi版中央銀行システム」 を生み出すための壮大な社会実験である。民間セクターがマネーサプライをコントロールし、あたかも「中央銀行」のように振る舞うメカニズムを知れば、あなたはValuesDAOの革新性に驚くだろう。本稿では、未来の中央銀行制度から、現行の中央銀行制度の真実を知って欲しい。ValuesDAOには、VALUESトークンを発行する「財務省」も存在する。その価値の保証は空気だけ、という米ドルとは異なり、すべてのVALUESトークンは、1.00米ドル以上の価値をもつステーブルコインMAIによって担保される。

ValuesDAOのメカニズム

「国庫」にあるすべてのVALUESの担保として、MAI(またはFRAX、USDCなどのトークン)が少なくとも1種類以上準備される。これは、VALUESの最低価格が1米ドルであることを意味する。

VALUESの価格は、1 MAIを下回らないように維持される。

  • 「1 VALUES < 1 MAI」の場合 

プロトコルはVALUES価格を上昇させるため、市場からVALUESを買い戻して、VALUESの供給量を減らさなければならない。VALUESを買い戻すには、高金利を呈示することで、VALUESをプロトコルに預けるメリットをVALUESホルダーにアピールすればよい。

  • 「1 VALUES > 1 MAI」の場合

プロトコルは「国庫」に保有するVALUESをディスカウント価格で販売して供給量を増やすことで、VALUES価格を下げる。「国庫」にはステーブルコインが流入するので、財政基盤はより盤石となる。

今のところ、ValuesDAOのエコシステムは、ライフサイクルにおける成長期にあるので、基本的には「発行モード」である。したがって、VALUESを同時に売り・買いするプロトコルも目にするだろう。
なお、VALUESはペッグ制ではなく、1 MAI(1米ドル)以上の裏付けを有するにとどまるので、プレミアム価格で取引することは妨げられない。つまり、今日現在のVALUESの価格は下記のよう決まる。

  • 1 VALUES = 1 MAI + 市場プレミアム

本稿の執筆時点では、VALUESの価格は14.98ドル前後なので、市場で1VALUESを購入するには、同額の費用がかかることになる。

ValuesDAOへの参加方法

プロジェクトに興味のある投資家なら誰でも、ボンディングやステーキングのアクティビティを通じて、ValuesDAOエコノミーに参加し、ブロックチェーンウォレットから資金を管理することができる。

ボンディング

ボンディングを行うことで、「財務省」にVALUESトークンを作成する許可を与え、プロトコルから直接VALUESを「購入する」 ことができる。このとき、VALUES価格はディスカウントされている。
ディスカウント価格のVALUESと引き換えに、MAI、FRAX、DAI、USDCなどの資産が提供される。
現在、VALUESの価格を15米ドルとしよう。

1 VALUES=15 MAI
15 MAIを使用して、分散型取引所またはValuesDAOのスワップエンジンで1VALUESを購入すると、新しいVALUESがミントされる。

ユーザーはディスカウント価格でVALUESを受け取り、「財務省」はより多くの資産 (MAIやFRAXなど)を受け取ることで、VALUESトークンの財政基盤はより盤石となるため、ボンディングはWin-Winの関係といえる。

ステーキング(高APYつき)

ステーキングを行う場合、市場からVALUESトークンを買い戻し、それをプロトコルに返還する。
新しいVALUESを市場に投入するボンディングとは対照的に、ステーキングはVALUESを流通から取り除き、ValuesDAOに戻すことになる。

VALUESと引き換えに、同量の 「sValues」(ステークされたVALUESはこう呼ばれる)を受け取り、さらに24時間(エポックと呼ばれる)ごとにリベースと呼ばれる利息を受け取ることができる。複利の力は、ValuesDAOと人生においてまことに強力である。
ValuesDAOのAPYがきわめて高い(執筆時点で225%)その秘密も、リベースの複利効果にある。

つまり、今日15米ドルを支払ったとしても、新しいVALUESがプリントされるにつれて、あなたのウォレットの中のsValUは増え続け、その恩恵を受けることができる。あなたは今、自動複利の資産を手に入れたに等しい。新しいVALUESがボンディングによってプロトコルにプリントされると、報酬としてあなた(と他のステーク参加者)に支払われる。
現在のAPYは約225%である。つまり、今日100sValueから始めた場合(コストは1,500米ドル程度)、1年後には100 × 2.25 = 225 sValueになる(APYが現在以上には上がらないと仮定した場合)。

ただし、より多くのVALUESがミントされれば、将来的にはVALUESの価格も下がる可能性がある。だが、幸いなことに、24時間ごとにVALUESが生成する速度は、そのような価格下落の速度を上回っている。

たとえば、今日の15米ドルだったVALUESの価格が、1年後に10米ドルに下がったとしても、複利効果であなたのアカウントには225のVALUESがあるはずなので、その価値は 225 × 10米ドル = 2,250米ドルとなる。これは驚異的な利益だ。

まとめると、ステーキングの手順は次のようになる。
VALUESアプリのスワップページやUniswapなどの分散型取引所でVALUESを購入する。
ValuesDAO Stakeページに行き、新しく購入したVALUESをステーキングする。
ValuesDAOからsValueを受け取る。
sValueをホールドすると、24時間ごとに既定の利率(現在のAPY)でsValueが増える。ValuesDAOはいまだ導入期なので、APYの伸びしろは十分だろう。

ValuesDAOの『ゲーム理論』的考察

ValuesDAOをゲーム理論的に考察してみよう。2人の 「プレーヤー」 (投資家)がいて、それぞれ下記の3つの戦略を有している。

【Stake】: VALUESの価格が上昇すると予想している場合。上昇予想によりVALUESの価格は実際に上昇し、+2という高いペイオフが実現する。
【Bond】:相場観はニュートラルで、VALUESの大幅な下落は予想していない場合。ボンディングは価格に影響を与えないため、ペイオフは+1と高くないが、依然としてプラスは維持される。
【Sell】: VALUESの価格が下落すると予想している場合。下落予想によりVALUESの価格は実際に下落し、-1というマイナスのペイオフが実現してしまう。

最も有効な戦略は、両者が協力することであることは、いうまでもないだろう。

両者が【Stake】すれば、(3, 3)のペイオフが実現し、個々のプレイヤーにとってもプロトコル全体にとってもベストである(3 + 3 = 6) 。

一方が【Stake】し、もう一方が【Bond】すれば、ステーキングはVALUESトークンを市場から買い戻してプロトコルに戻し、ボンディングは「国庫」に流動性とMAIをもたらすので、これも望ましい結果といえる(3 + 1 = 4)。

一方が【Sell】すると、もう一方が【Stake】や【Bond】をする手間が減る(1 - 1  = 0)。

両者が【Sell】すると、両者とプロトコルにとって最悪の結果を招く(-3 - 3 = -6)。

上記の説明は非常に簡略化されたものだ。実際の相互作用は、APY、市況、マクロ環境、その他の要因によって複合的に決定される。ValuesDAO内でお互いが協力的に行動すれば、すべてのプレイヤーにとって最適な結果が得られることに注意されたい。ValuesDAOに参加する場合は、長期投資をあらかじめ計画しておくとよいだろう。

ValuesDAOのエコシステムは、今まさに加速的に成長している。資産に対する複利効果は、長期的にみて、直線的ではなく指数関数的に作用することをいま一度思い起こしていただきたい。あとから過去を振り返ったとき、VALUESを19ドルで手放したことを後悔するのもおろかであるし、ValuesDAOがムーンしかけているのを見てパニックに陥って99ドルを買い戻すのもまたおろかだ。

まとめ

ValuesDAOは、中央銀行制度と同じように、VALUESの供給を管理するメカニズムを内包したアルゴリズムによる「経済マシン」である。他の何かにペッグされているのではなく、むしろ複数の資産のバスケットによって支えられているので、機動的な通貨政策が可能となる。

ステーキングは、ValuesDAOの主要な価値創造戦略である。ネットワークの成長を反映したパッシブな長期戦略でもある。ステークホルダーは、ValuesDAOのウェブサイト上で自分のVALUESをステークし、リベース報酬を得る。Rebase Rewardsは、「国庫」に1 MAIに相当する担保がある限り、24時間ごとに生成される。このことは、スマートコントラクトレベルで保証されている。

ボンディングは、VALUESの二次的な価値創造戦略である。よりアクティブで短期的な戦略である。これにより、ValuesDAOは、VALUESトークンをディスカウント価格で売却することにより、自身の流動性を高め、ステーブルコインなどの準備資産を取得することができる。この意味でボンディングはより積極的な投資戦略とみなされている。

ValuesDAOは、これまで銀行や取引所が貪欲にも独占してきた富を、個人投資家に開放するものだ。RebasingとTreasury-backed operationの利点は、個人投資家が市場の変動リスクや詐欺プロジェクトによるリスクを軽減しながら、複利効果を日々享受し、保有資産を増やすための新しい扉を開くだろう。

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