日本では今年1月のコインチェック事件以来、仮想通貨交換業の新規登録が事実上ゼロとなっている。速やかな新規参入を狙う業者にとっては、登録業者の買収しか選択肢ないのが現状だ。一方でシンガポールでは、中央銀行であるMAS(シンガポール金融庁)が先月、小規模な仮想通貨交換業に正式なライセンスを付与することを含む制度改革についてコンサルテーション・ペーパー(アドバイスを募る諮問書)を発表した。利益をトークン保有者に還元することを目指す配当系取引所DECOINも「規制された市場オペレーター(RMO)」承認をうけるためにシンガポールに進出している。

シンガポール中銀は同諮問書において「2002年に施行された現行のRMO規制フレームワークは新技術をベースとしたビジネスモデルに対応できない」とする見解を発表。「ブロックチェーン技術や第三者の仲介のないP2P技術を含む仕組みを使った新たな取引プラットフォームのビジネスモデルが出てきた」ことから、ライセンス区分を三つにわけることを提案。これにより、小規模の取引所や交換業者の参入を容易にすることを目論む。

これが何を意味するかというと、大資本にかなわないDECOINのような小規模の参入者でも、シンガポール金融庁の監督の元、ブロックチェーンや仮想通貨を活用した事業展開を挑めるということだ。特に、大規模な運営業者を前提とするRMO要件を満たせないが試験的運営を終え商業的にも成立している新規参入者が恩恵をうけるようだ。

ちなみのシンガポールのRMO制度は、これまで株式取引所や商品、デリバティブ取引プラットフォームを運営する業者に適用されてきたが、これを仮想通貨取引業にも拡大するという面白い動きだ。

利益還元型の仮想通貨取引所の開発を進めるDECOINの担当者はこれについて、「現地の法律事務所の助言に基づき、申請準備を進めている」とのべている。もしうまくRMO承認されれば「シンガポールから世界中に仮想通貨取引サービスを提供していく」とした。

シンガポールはこれまでもブロックチェーンに対して寛容な姿勢をみせている。今回の同国金融庁の動きは、小規模だが面白い技術やビジョンを持つ新規参入者にもチャンスを与える賢明な動きと言えるだろう。

DECOIN(ディーコイン)とは(おさらい)

「DECOINトレーディング・アンド・エクスチェンジ・プラットフォーム」(通称D-TEP)とされる仮想通貨取引プラットフォーム(現在開発中)。

同取引所が発行するネイティブコインをDTEPという。BTC, ETH, XRP, BCH, LTC, DASH, NEO, ADA, XLM間の取引が可能。

DECOINが展開する独自のブロックチェーンはPOS(プルーフ・オブ・ステイク、保有量証明)を採用。DTEPコインの所有量にあわせた配当が支払われる仕組みだ。

DECOINでは、取引所の手数料収益の10~20%を流通している自社コインの買い戻しではなく、配当として吐き出す。他取引所で行われているコインの買い戻しが、直接価格上昇に直結するとは限らないため、配当のほうがありがたいと考えるユーザーもいるはずだ。

ちなみにバイナンスが発行したBNBは発行時から比べて200倍上がるなど、取引所が発行するコインは軒並み上昇しやすい傾向が見られる。2018年1月~5月の間、取引所トークンは平均6倍上がったという分析もある。

参考: