メタバースの普及とブロックチェーンインフラストラクチャの向上により、NFTの活用領域が急速に拡大している。NFTをバーチャルリアリティの世界に導入し、NFTの価値を最大化することは、すべてのブロックチェーンプロジェクトにとって知恵のしぼりどころと言ってよい。
Blocklikeは4月19日、『NFT:メタバース内でのアイデンティティ』 をテーマに円卓の討論会を開催した。NFTプロジェクトでリーダーを務める5人のパネリストが招待され、NFTの価値、メタバースにおける革新的なアプリケーション、クロスチェーン技術などのトピックについて、熱い議論を戦わせた。本イベントは、Binance LiveとMars Finance Liveでも中継され、1万人の視聴者を集めた。以下は、討論会の議事録からの抜粋である。
1. NFTの本質は、アイデンティティと所有権にある。ユーザーがNFTにより、独自の社会的価値とデジタル所有権を獲得できるよう、開発者はどんなシナリオを持っているか?
ユミコ(Yumiko:Realyのチーフマーケティングオフィサー):私たちはメタバースを「インターネットの未来」と定義している。メタバースでは、人々は交流し、交換し、創造することができる。分散化技術が実現した合理的な経済システムであり、これまで現実世界でできたことなら、ほとんどが実行できる。簡単なログインと一意のIDにより自らのアイデンティティを証明できる、第二の人生のはじまりだ。
ビョルン・ニクラス(Bjorn Niclas:RockiのCEO兼共同創設者):プラットフォーム上のコンテンツ制作者とそのファンは、ソーシャルグラフとの連動で、「DID-verified」(認証)を受けることができる。これは、あらゆるユーザーにとって、NFTをアップロードした際、自分が権利を持っていることを証明するための最初のステップである。プラットフォームは、大企業からのきびしい要求にも耐えうる、誰もが信頼できる情報源となったと感じている。
マーシュ・マロー(Marsh Mallow:MetaFriendsのコミュニティマネージャー):NFTを持つユーザーは、ウォレットに直接接続することができる。私たちは、NFTを活用することで、コミュニティにオーナーシップの「所有感」を与えることに注力してきた。たとえばユーザーは、独自のスタイルでメタバース向きにカスタマイズされたアパレルNFTを陳列することができる。このようにコミュニティのオーナーシップの感覚を大切にしている。
ウィルソン(Wilson:CyberConnectの共同創設者):ユーザーが匿名で接続して、自分のグラフデータを閲覧したり、Web3アドレス上の潜在的な友人を見つけたりすることができるようにしている。CyberConnectプロトコルに統合されたプラットフォーム上で、他人をフォローすることも可能だ。ユーザーデータはID構造システムにおいて、IPFS上に分散して復元される。
マルコス(Marcos:The Bird WorldのCEO):私たちは、ブラウザ上で簡単に管理できる資産として、NFTを提供している。ウォレットを介して、ユーザーはブロックチェーン情報を閲覧したり、各種記録を書き込んだりすることができる。各個人が自分でシステムにアクセスでき、チェーン上には対応するNFTが存在している。
2.DIDインフラ上に構築されたメタバースNFTは、ユーザーの生活用品・衣服・アバター・BGMなどとして、多様な形態で使用することができる。どのようにすれば、メタバースはNFTの長所を最大限に引き出すことができるだろうか?
マルコス:メタバースにおけるNFTのチャンスは無限といえる。現実世界のすべてのユーザーにとって、無限のチャンスがある。私たちは今や、物理的な世界とデジタルな世界の両方が融合した、完全な経済エコシステムを手に入れた。
ビョルン・ニクラス:メタバースには無数のチャンスがあり、すでに多くのすばらしいプロジェクトが立ち上げられている。メタバースとの統合により、NFTマーケットプレイスは非常にすぐれたツールとなるだろう。メタバース業界に進出することで、たとえば音楽のNFTを、音楽マニアだけでなく、メタバースに住む潜在的な数万人の一般消費者に提供することができる。これまでとはまったく違った層に、自分の音楽を売り込むことができる。
メタバースにはアプリケーションプラットフォームとしての役割もあるが、メタバースにおける私たちの存在はブロックチェーンに依存している。私たちはできる限り多くのメタバースに参加し、さまざまなサービスを提供したいと考えている。今後5〜10年のうちに、誰もがメタバースにアクセスし、メタバースのさまざまな製品やサービスを利用できるようになるだろう。
3.メタバースに相互運用性をもたらすのが、クロスチェーン機能である。チェーン間の相互運用性が実現した場合、NFTの将来はどう変わると思うか? またマルチチェーン技術を活用したNFTの将来的な応用についてどう思うか?
ユミコ:多くのメタバースが繋げられるため、「トラストレス」(認証不要)であることが重要となる。ユーザーは追加の認証なしに、他のメタバースに移動することができなければならない。
各NFTプロジェクトには独自のエコロジカルロードマップがあり、Web3文化の浸透により、将来のNFTはさまざまな仮想世界を母体とするだろう。最終的には、異なったメタバース間でNFTが流通するようになる。NFTの明るい未来の到来を心待ちにしている。
ウィルソン:なるほど、相互運用性は非常にホットなテーマになるだろう。ブロックチェーンの種類、開発者を問わず、ユーザーは購入したNFTのユースケースを利用できるよう開発しなければならない。IPFS上のすべてのデータを復元し、それをセルフソブリンデータにする方式もあるが、他とはまったく異なったアプローチだ。
マルコス:NFTとスマートコントラクトデータは、ブロックチェーンに個別に格納されている。これにより、資産計画の計算コストを削減し、フローを最大化することができる。より安全な設計により、ユーザーは資産に対する権利を所有することができ、資産が物理的に破壊されたり、契約内容が変更されたりすることはない。簡単な方法としては、NFTのクロスチェーンアクセプタンスを実現する方法がある。
マーシュ・マロー:イーサリアム(Ethereum)上のERC 721は、ラグプールのリスクが比較的低く、ほとんどのNFTプロジェクトをサポートしている。私たちはただミラーサイトに入って、コミュニティベースのプロジェクトを構築すればよい。オンチェーンの相互運用性技術は、業界全体を大きく前進させるだろう。そしてそれこそが、NFTの実用性にメタバースがもたらす力なのだ。
4.NFTプロジェクトは通常、クロスオーバーマーケティングまたは共同ブランディングが行われている。業界全体が主要ブランドやKOL(Key Opinion Leader)の影響力に依存している面があるが、今後のマーケティング戦略でもそうか?
ビョルン・ニクラス:私たちはKOLと協力して、NFTプラットフォームのブランドで市場に参入している。オーガニックでリアルな消費者と、真のつながりを持てる大手ブランドには多くのチャンスがあるだろう。私たちにとって、Twitter上で多くのファンやフォロワーを持つKOLは、メタバース内の企業のサービスに注目を集めてくれる。
ユミコ:実は私も、共同ブランディングは早い段階でユーザーの認知度を上げることができる手段だと評価している。しかしその後は、自分自身の文化、ストーリー、ブランドが主導権を握らなけらばならない。今後のマーケティング戦略は、メタバース業界全体の展開やユーザー文化の変化も考慮しなければならない。そして、いまだクリプト業界に入門していない初心者ユーザーをターゲットにした共同ブランドのアイデアはたくさんある。
マーシュ・マロー:ブランド認知度を高め、新しいユーザーを引き付けるために、これまでKOLを活用してきた。NFT 2.0への進化の過程で、企業は自分たちの社会的責任として人々を教育する必要があるだろう。それは簡単なことではない。なぜなら、すでに彼らにはコミュニティの一員であるという自覚が生まれているからだ。ときには、すべてのステップを省略せずに説明しなければならないこともあるだろう。だが、それは重要なことだ。コミュニティマーケティングは、KOL以上に、ウォンツをセールスに変える力を持つ。私たちの強みはコミュニティにあると私は信じている。ならば、それに注力すべきなのは当然だろう。
ウィルソン:プロジェクトのプロトコルに対する意識を高めなければならない。私たちには、開発者の声に耳を傾け、ソリューションの構築を支援する独自の開発者コミュニティがある。ユーザーに対しては、データを所有していることを改めて保証する。Web3では、巨大テクノロジー企業がデータを独占するという過去の轍を踏んではならない。
5.今後メタバースが確立するには、フロントエンドアプリケーションにおいて、人間・財貨サービス・社会的関係を含む、リアルシミュレーションが必要となる。メタバースにNFTを実装するための要件は何か?技術的な課題はあるか?
ウィルソン:メタバースは概念上の存在にすぎない。NFTの次の課題は、多くの人が簡単に試すことができ、簡単に導入できるようにすることだと思う。多くの巨大テクノロジー企業は、VRとARの方向に舵を切ったが、多くの問題に直面してしまっている。Web3は、ブロックチェーンのコンテキストに基づくインターネットの超大型アップグレードになる可能性がある。それはあらゆる所有権概念を覆すものだ。
マーシュ・マロー:技術的な課題としては、プロジェクトのスマートコントラクトに欠陥がないことを改めて確認する必要がある。メタバースとNFTの実装について考えるとき、NFTを現実世界のシナリオに関連付ける必要があるだろう。教育は常に新しいものであるので、デザインには特徴や独自性を持たせる必要がある。コミュニティの課題は、技術的なものだけではないということだ。
パネルホスト:
エリカ・ルー(Erika Lou)
スピーカー:
ユミコ(Yumiko:Realyのチーフマーケティングオフィサー)
ウィルソン(Wilson:CyberConnectの共同創設者)
マルコス(Marcos:The Bird WorldのCEO)
ビョルン・ニクラス(Bjorn Niclas:RockiのCEO兼共同創設者)