次世代インターネットの旗手として、Web3は技術革新のブレイクスルーを引き起こしている。かつては花形だった従来型インターネットとブロックチェーンは、いまはWeb3を追いかける存在だ。Web3の世界では、ブロックチェーン技術により「接続」「サービス」「データアクセス」がデジタル的に再定義される。Web2の中央集権的機構に比べ、Web3に代表される分権的機構は、ユーザーのデジタルアイデンティティを強化する。個々人の価値創造からのマネタイズを可能にする新世代型エコシステムは、もはやインターネットの常識となりつつある。マーケットライフサイクルの初期段階において、Web3への移行過程を議論することは、ユーザーアイデンティティと所有権の問題の解決方法を議論することと、ほとんど同義である。

5月19日、Blocklikeは『Web2からWeb3への移行に不可欠なものとは?』と題するパネル討論会を主催した。今後、長期投資の最大の関心事となるであろうユーザーアイデンティティの問題に焦点が当てられた。Web3指向プロジェクトである、GEMS、Atem、Nuke Chains、Corite、Zombie Club、Crayon DAO、United Worldのプロジェクトリーダーがライブ中継に招待され、Web3のコア概念、チェーン上のエコロジー、その他のトピックについて、熱い討論が行われた。本討論会はBinance LiveとMars Finance Liveの両方で中継され、4万人もの視聴者を集めた。以下は討論会の議事録からの抜粋である。

Binance Live: https://www.binance.com/en/live/video?roomId=2103177

1. Web3:ビジョンと技術基盤

Web2は従来のインターネット企業を前提としており、データの所有権は中央サーバーに帰属する。ユーザーの生み出した価値は企業のものとなり、ユーザーのアイデンティティは複数のプラットフォーム間でそれぞれ異なってくる。

Web3は、Web2に内在する弱点や欠陥を回避することができる。データの所有権、アイデンティティ、プライバシー、およびセキュリティの問題を解決できるのだが、Web3がWeb2よりも優れていると言われるのは、まさにこのためである。Web3では、DIDや分散型コンセンサスなどの下位ブロックチェーン技術とインフラストラクチャに基づき、分散化されオープンで互換性のある「トラストレス」なネットワークが構築される。まことに美しいビジョンというほかない。

Atemの創設者であるレオ・リー(Leo Li)氏は、Web3が普及するにはまだまだ長い道のりがあると考えている。Web2とWeb3の違いは、単に読み書きの問題ではない。最大の違いは、データのコントロール権が「プラットフォーム側にあるか、ユーザー側にあるか」である。Web2ユーザーが別のソーシャルプラットフォームに引っ越す場合、データを移行する必要はないし、移行することもできない。

Nuke Chainsの最高技術責任者アレックス・ノッグ(Alex Ng)氏は、少なくともゲーム業界にとっては、Web3はデジタル暗号化技術のリブランディングにすぎないと考えている。但し、NFTとdAppsはまったく新しい価値の移転方法であり、コミュニティのユーザー間で新しいレベルの対話を可能にする。

Zombie Clubの共同設立者Disco.eth氏は、GameFiとNFTのエコロジーを構築するには、VR、AR、AV、その他の技術基盤が必要となる。そこで、彼の会社はメタバースの中でユーザーが没入感のある体験をするための電子デバイスを提供する。Web3は、NFTコレクターのコミュニティにおいて、独自の文化の形成に一役買ってきた。Web3の中核となる価値は独自性であり、所有権から生じる利益は、クリエイターとユーザーの間で分配される。

2, ユーザー教育:Web3移行は習うより慣れろ

Web3の主役はあくまでユーザーである。Web3によってもたらされたデジタル革命とは、つまるところユーザー体験の革命である。その際、ネットワークの参加者にはコントロール権と自治権が与えられることを至上命題とする。Web3はすでにメインストリームに浸透しつつあるが、業界のプロジェクトが一般ユーザーを引き付け、Web3に参入させてスケールメリットを生み出すには、もう少し時間がかかりそうだ。従来型の大企業にとっては、Web3への移行の鍵は技術的な変革にある。

一方で、Web2ユーザーをWeb3に移行させるには、複雑な移行プロセスもネックとなる。Web2.0やWeb2.5に慣れ親しんだユーザーたちは、暗号技術に興味は持っていても、Web3の体系的な知識を学ぶ意欲はない。きっと、その退屈さに音を上げてしまうだろう。一方で、ユーザーを引き付け、維持するための戦略も十分とは言えない。ユーザーとプラットフォームの両方にインセンティブを与えるエコ・エコシステムモデルを構築する必要がある。暗号技術が大衆化する以前の初期段階では、プロジェクトは、ユーザー操作を簡単かつ便利にするソリューションの開発に重点を置く必要があるだろう。

United Worldのアセットマネジメント責任者タマー・サウジ(Tamer Saudi)氏が指摘するように、サッカーと暗号業界は、「オープンさ」「包括性」「コミュニティ主導」という同じメンタリティを共有している。そのため、United Worldを含むほとんどの伝統的な業界団体は、Web3を研究し、分散化された世界に適応するための自己変革を起こそうとしている。

Crayon DAOの創設者兼CEOレオン・キム(Leon Kim)氏は、ユーザー教育だけがWeb2への適応プロセスではないと述べている。Web2の世界は、硬直的な規制を持つ伝統的な世界であり、新参者のWeb3は、ターニングポイントに到達するまでは、コンプライアンスと整合性の観点からじっと旧秩序に耐え、適応しなければならない。だが、ひとたびWeb3が成長期に入れば、今度はWeb2司法システムの方が、Web 3カテゴリーのルールに歩み寄らなけらばならないだろう。

3. Web 2からWeb 3へ:ユーザーエクスペリエンスにおけるシナジーとインターコネクション

今後Web3がメインストリームに躍り出るには、ユーザーエクスペリエンスがWeb2.0時代と同じレベルに達することが前提となる。分散化の利点は、いくつかの欠点を糊塗するだろうが、フロントエンドの相互作用の設計と運用パフォーマンスの向上は、Web3インフラストラクチャまたはアプリケーションのユーザートラフィックを維持するうえで不可欠となる。

Web2.0時代には、ソーシャルプラットフォーム、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の概念、支払アプリケーションが誕生した。Web3.0時代には、EコマースやGameFi / SocialFiでの決済に驚異的なニーズが生まれている。大規模かつ強力な分散型エコシステムを構築し、これらのニーズを満たすことは、Web3業者の最も重要な使命といえる。また、さまざまなシナリオを連携させてダイナミックシナジーを生み出し、ユーザーのニーズをタイムリーに汲み取り、新しいアプリケーションを開発し、ひいてはエコシステムのサスティナブルな繁栄を実現しなければならない。

Coriteの創設者マティアス・テンブラッド(Mattias Tengblad)氏は、Web3の成長過程は、Web2も初期の段階においては一般人から無視され、受け入れられるには時間がかかったのと似ている、と指摘する。現在、従来型のインターネットアプリケーションとサービスシステムをWeb3に置き換えることは現実的には不可能だが、だからといってWeb3を開発し、Web2に挑戦する機会がなくなったというわけではない。来るべきWeb3時代には、オンチェーンのアプリケーションプラットフォームとユーザーアイデンティティの統合が確立され、ユーザー数が大幅に増加することが見込まれている。その前準備として、ブランドの連携やコミュニティの確立に努め、ロイヤルティの高いファンを蓄積していき、ブランド力を高めることは、決して無駄ではないだろう。

アレックス・ノッグ氏は、現在彼らがWeb2世界のオンボードユーザーに対して実施している、成長の方法論を披露した。Web3製品のトラフィック獲得は、Web2と似ている部分も多い。Web2との世代間競争に生き残るためには、GameFiプロジェクトは、無料または無料に近い価格でユーザーを引き付けることが有効だろう。そのとき、Web3のユーザー体験はできる限りシンプルであるべきだ。

レオ・リー氏の見立てでは、ブロックチェーン技術によって、Web3は開発者がユーザーを理解するためのより良い方法を提供するという。デジタル資産の作成と所有を可能にするトラストレスで中立的なプロトコルにより、dAppsの開発者は、あえてユーザーを集めなくても、すべてのユーザーに最高のサービスを提供することができる。そこに独占の余地はない。

4.ユーザーアイデンティティの価値を高め、所有概念と経済モデルを再定義する

デジタル・アイデンティティの経済的価値は、Web3開発のプロセスにおけるユーザー・オンボーディングと同じくらいホットなトピックである。ユーザーと企業は、より緊密な利害関係者になるだろう。いわば呉越同舟だ。例を挙げよう。DAOの分散システムでは、プログラムされたルールに従ってメンバーが組織運営に参加し、コンセンサスメカニズムが意思決定において広く利用されている。Web3エンティティは、エコシステムの多様性に注意を向け、健全な協力メカニズムを確立し、ユーザーと企業が手を携えてトラフィック増大に努めることを可能にする。

Disco.eth氏は、コミュニティメンバーの参加により、NFTプロジェクトにおいて、プログラム可能な製品を提供し、コミュニティへの貢献システムをブラッシュアップし、ユーザーがプロトコルを改善し、自身のアイデンティティとレピュテーションを獲得するように働きかけることができると考えている。収集されたすべてのデータは、何らかのかたちでユーザーに報酬が分配され、データの持つ価値をデータ提供者自身に還元する。

レオ・リー氏は、将来、Web3コミュニティはNFTによって団結するだろうと予言する。クリエイターが作成し、ユーザーが参加するWeb2フォーラムとは異なり、Web3コミュニティはフォーラム以上の存在となる。崇高な理念によって人々を引きつけ、お互いが貢献しあう世界だ。コミュニティはNFTを基礎とし、ユーザーは容易に参加し、交流し、チェーン上で報酬と評判を得ることができる。
 
パネルホスト:

アンディ・コウ(Andy Koh):GEMSのCEO
スピーカー:
1.レオ・リー(Leo Li):Atemの創設者
2.アレックス・ノッグ(Alex Ng):Nuke Chainsの最高技術責任者
3.マティアス・テンブラッド(Mattias Tengblad):Coriteの創設者
4.Disco.eth:Zombie Clubの共同設立者
5.レオン・キム(Leon Kim):Crayon DAOの創設者兼CEO
6.タマー・サウジ(Tamer Saudi):United Worldのアセットマネジメント責任者