IT業界のゲームチェンジャー、Web3の時代が目前に迫っている。メディア業界やクリプト業界も当然無関係ではいられない。Web3の定義には若干のブレがあるが、分散化、開放性、データの自律性については衆目の一致するところだろう。パブリックチェーン、プロトコル、クロスチェーン、その他のインフラストラクチャを駆使して、デジタル世界におけるさまざまなコネクション、サービス、データアクセスを再構築することで、新しいバリューフローと平等なインタラクションが実現される。今日、アプリケーションレベルで急成長している領域は、GameFi、SocialFi、NFTの3つであるが、ジャンルはちがってもその焦点がユーザーアイデンティティと所有権の確立であることにちがいはない。Web3の導入期においてユーザー視点に重きがおかれることは、ブロックチェーン開発の方向性と行動原理を明確化するうえで役立つだろう。将来は、Web3エコロジーにおいて競争優位を築く土台となるはずだ。
5月26日、Blocklikeは「Web2からWeb3へ:クリエイターとユーザーがつくる新しい経済圏 」をテーマにしたパネル討論会を開催した。Web3指向プロジェクトのGEMS、Cassava、Blocksport、Canoe Finance、Parsiq/IQ Protocol、Film Tokenのプロジェクトリーダーがライブ中継に招待され、オンチェーンのエコロジーについて熱い討論が行われた。パネル討論会はBinance LiveとMars Finance Liveの両方で中継され、3万5千人もの視聴者を集めた。以下は討論会の議事録からの抜粋である。
1 Web3:ビジョンと価値の再構築
巨大なインターネット企業が支配するWeb2においては、彼らが運営するプラットフォームがストレージの使用権とデータの所有権を握り、ユーザーアイデンティティ(ID)の価値と影響は単一のプラットフォーム内に限定されていた。一方、Web3は、ネットワーク上の個人に自律性と所有権を与えるという理想が出発点だ。データ価値を再構築することで、分散化され、オープンで、互換性があり、トラストレスなデータ交換ネットワークが実現する。
Web3は美しい理想といえる。だが、その道のりは険しい。ボトムレイヤーだけでなく、アプリケーションレイヤーにおいても多大な技術的努力が必要となるだろう。
CassavaのCEOであるオバシ・フランシス(Obasi Francis)氏は、ブロックチェーン技術が第4次産業革命をリードし、Web3はその一翼を担うと予想する。DeFi dAppsのような金融商品やサービスが、世界経済の潜在的な発展を促進しているという。そして今、発展途上国は、数年前に失われたチャンスを再び追い求めている。
Parsiq/IQ Protocolの共同創設者であるトム・チルマン(Tom Tirman)氏は、ブロックチェーンの分散化されたパーミッションレスな性質により、Web3のイノベーションは、DeFiとNFTアプリケーションの爆発的な増加と相まって、速度とユースケースの革新性において人類史上比類ないものとなると予想する。仮想通貨、DeFi、NFTがいざなうWeb3への移行において、全体のモデルはユーザーとその自律権(アイデンティティ、ビジネス行動、利益、デジタル資産としてのデータ)を中心に運用される。究極的には、Web3ユーザーは自分のアウトプットを完全にコントロールでき、さまざまなプラットフォーム間で自由に価値を移転できるようになる。
2 ユーザー教育:Web3移行は習うより慣れろ
Web3はユーザー中心型で、ネットワークに参加するすべての人に自律性を付与することを目的としている。Web3がユーザーエクスペリエンスに革命をもたらすといわれているのはこのためだ。現在Web3はメインストリームに浸透しつつあるが、ブロックチェーン指向のプロジェクトがWeb3の世界に大量のユーザーを取り込むには、いまだ課題が残っている。従来のフレームワークに即して言えば、Web3開発の鍵は、DID、ゼロ知識証明、オラクルなどの技術的変革にある。
Web2ユーザーがWeb3の世界に飛び込むには、複雑なプロセスを踏む必要がある。その理由は、Web2ユーザーは暗号技術に興味を持っていても、Web3の知識を体系的に学ぶ心の準備はできていないからだ。したがって、プロジェクトは、ユーザーを引き付けるための戦略を練り、インセンティブ設計によってDAU/ ユーザーのエンゲージメントを維持しなければならない。その上で、ユーザーの操作手順をいかに簡単にし、それに対応したソリューションを提供できるかが鍵となるだろう。
GEMSのCEOであるアンディ・コウ(Andy Koh)氏は、Web3のユーザー教育について語った。教育や支援ツールに焦点を当てたブロックチェーンプロジェクトがいまだ少ないことが、市場の深さと幅を開拓するうえでネックとなっているという。今後、Webブラウザやウォレットアプリなどのオンチェーンアクセスを統合し、開発者がWeb3にアクセスするためのインターフェイス標準を構築する包括的プロジェクトのニーズが市場で高まるだろう。
BlocksportのCEO兼共同創設者であるブラッドミル・リルカ(Vladimir Liulka)氏は、サッカーのような伝統的なスポーツ業界やエンターテインメント業界は、意外にもブロックチェーンとデジタル化を積極的に受け入れている、と指摘する。これらの業界は、Web3のシナリオに誘導できる大規模なファン層を抱えていることが多い。ファンたちは、ブロックチェーンを架け橋に、Web2型のファンからWeb3型のファンへと進化する過程を楽しめる。ブロックチェーンベースの経済エコロジーの中で、より多くの交流と、より多くの創造活動に関与することができるのだ。
オバシ・フランシス(Obasi Francis)氏は、メディアを活用してブロックチェーンとクリプト業界のより良いイメージを構築することが重要で、全体的かつ長期的な利益に結び付くと指摘している。特定の国の規制環境と組み合わせることで、プロジェクトは産業の応用価値や技術的ブレークスルーを中心に、セルフマーケティングを促進することができるだろう。
3 Web2からWeb3へ:ユーザーシナジーとエクスペリエンスの最適化
Web3がメインストリームになるための強力な推進力の1つは、ユーザーエクスペリエンスがWeb2と同じレベルに達することである。使い勝手、インフラストラクチャの効率性、アフターサービスなどのWeb3 dAppsの欠点は、分散化によってある程度相殺できるが、フロントエンドのインタラクション設計とバックエンドのパフォーマンスは、Web3アプリケーションのトラフィックを増加させるために依然重要な役回りとなるはずだ。
Web2.0時代から引き続いてWeb3時代にも、GameFiやSocialFiなどの支払いフェーズにおいては驚くほどの需要がある。異なるシナリオをリンクさせ、ユーザーのニーズをタイムリーに捉えながら、ユーザーのニーズを満たす分散型のWeb3.0エコシステムを構築することは、Web3の構築者にとって長期的な課題である。
Film Tokenの共同創設者であるアジフ・バジル(Asif Bashir)氏の見立てでは、ブロックチェーンアプリの可能性を広げるため、ユーザーの所有権はWeb3にとって最重要事項だという。Web3の世界では、ユーザーはクリエーターやコミュニティとクリプト経済圏を構築し、価値交換をより簡単に行うことができるようになる。ファンは、文化的な作品やプロジェクトから得られる金銭的な実りをクリエイターと直接共有し、ユーザーにはアイデンティティの権利として還元される。
Canoe FinanceのCMOであるジャミー(Jamee)氏は、DeFiの今後の開発について、DeFiアプリケーションはWeb3における重要な領域であると確信しているという。Web3では、ユーザーインターフェースとコミュニティ中心の金融アーキテクチャに、高いレベルの「親切さ」が求められる。モジュラ型のDeFi機能により、開発者はさまざまなシナリオに応じて使いやすいオンチェーン金融サービスソリューションを構築することができ、セキュリティを犠牲にすることなく取引手数料を低減することができるだろう。
トム・チルマン(Tom Tirman)氏は、Web2開発の成熟とともに、中央集権の弊害が露呈したと考えている。Web3では、プラットフォームによる介入や一般ユーザーの権利の侵害が発生しないことを保証するために、ユーザーの地位の独立性と排他的なID所有権を確認する技術的保証を開発済みで、分散化進展の証となっている。
4 ユーザーID所有システムと経済モデルの構築
Web3の世界では、ユーザーと企業はより緊密な利害共同体を形成することができる。たとえば、分散型DAOシステムにおいては、事前にプログラムされたルールに従ってメンバーが組織の運営に参加し、意思決定と利潤最大化を行うためのコンセンサスメカニズムが広く採用されている。
Web3におけるアイデンティティ価値の確立には、価値の真の創造者であるユーザーに利益を分配するための健全な所有システムと経済モデルのサポートが必要となる。ひとたびエコロジカルな多様性と健全な協力メカニズムが構築されれば、Web3企業はユーザーがデジタルアイデンティティの価値と影響力をマスターし、エコロジーに共同で取り組み、新たな価値を創造することを支援できる。
ジャミー(Jamee)氏の見解では、Web3とDeFiは、MetaFiのインフラの一形態なのだという。Web3時代の新しい金融システムのロジックを従来の金融と統合することで、メタバース全体の流動性を高めることができる。Web3とメタバースの開発によって、DeFiは再びブームの火がつき、分散ドメインの価値をさらに高めていくだろう。
ブラッドミル・リルカ(Vladimir Liulka)氏が述べているように、Web2.0におけるファン経済圏は、DeFiスマートコントラクトやNFTを含むアプリケーションシナリオの普及の入り口となる可能性がある。Web2のファンとスター/キーオピニオンリーダーの間の相互作用は、ブロックチェーンとデジタル技術のサポートにより一変するだろう。これまで受動的だった消費体験は、直接接続、共同参加、自己管理に変わり、デジタル分散型のエンターテイメントエコロジカルプラットフォームへと進化するのだ。
パネルホスト:
アンディ・コウ(Andy Koh):GEMSのCEO
スピーカー:
オバシ・フランシス(Obasi Francis):CassavaのCEO
ブラッドミル・リルカ(Vladimir Liulka):BlocksportのCEO兼共同創設者
ジャミー(Jamee):Canoe FinanceのCMO
トム・チルマン(Tom Tirman):Parsiq/IQ Protocolの共同創設者
アジフ・バジル(Asif Bashir):Film Tokenの共同創設者