これについて、仮想通貨コミュニティに属する多くの人が一度は自問したに違いない。ウラジミール・ファン・デル・ラーン氏が活動を一時休止するというニュースをきっかけに、あり得ないと考える人もいるかもしれないが、起これば極めて影響の大きい状況について、私たちは詳しく検討することにした。

ビットコイン・コア開発者で、同プロジェクトのGitHubアカウントの維持担当者でもある人物(すなわち、「マスターブランチにコードをマージ」可能な人物)は貴重な人材だ。大局的な視点からこのことを考えると、ビットコイン・コアの開発者を黒帯だとすれば、ファン・デル・ラーン氏のような人物は三段に相当する。

白黒はっきりつけるべく、私たちはブロックストリーム(Blockstream)「道場」の高名なアダム・バック「師範」にインタビューを行った。ラーン氏が離脱することも、起こり得る大惨事によって維持担当者全員が行方不明になることも、ビットコイン(BTC)にとって問題とはならないだろうとバック氏は述べた。

「たとえ維持担当者全員が飛行機事故にあったとしても、あるいは非常に運悪くITが機能不全に陥ったとしても、どちらも技術的には問題ない。新たなGithubは作成可能だ」

バック氏はまた、仮想通貨コミュニティの大半の人々はエコシステムにおけるコア開発者の役割を正しく理解しておらず、その重要性を過大評価しがちであるとの見解も述べた。バック氏の見解では、ビットコイン・コアの開発者が導入できる変更は後方互換性の維持によって制約を受けるうえ、ファイナリティ、耐検閲性、インフレーション率といったそのプロトコルの基本性質を変えてはならない。また、その変更はプライバシーを保つか、向上させるものでなければならない点も指摘した。バック氏はこの枠組みから外れた原理を導入しようと開発者が試みた場合、その人物はエコシステムから拒絶されるだろうと確信している。

「したがって、ビットコインの開発者による特定の実装で、その枠内から外れる形で状況が一変することはあり得ないと思う。経済的エコシステムがそれを拒絶して、別の実装を利用するためだ」

バック氏はさらに、一切のオフチェーンガバナンスに対して反対を表明した。それが「集中型のロビー団体」 がビットコインの支配権を握る結果を招くと確信しているためだ。そして、それがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)プロトコルに伴う問題であることを強調した。私たちはその矛先をかわし、「現行の制度では、バック氏のBlockstream、Lightning Labs、Chaincode Labs、その他のビットコイン・コア開発者をサポートする組織がエコシステム内で過度の影響力を有していると考える人々もいる」と質問した。バック氏は、Blockstreamは意図的にビットコインの提案に対する立場をとっていないと返答した。同時に、同社と雇用関係にあるコア開発者は、ビットコインに対して何かよからぬことを行うようにとの圧力を受けたと感じたならば、Blockstreamを退社することができるうえ、Blockstreamはもう1年分の給料を支払わなければならなくなる。

ハッシュキャッシュの発明者であるバック氏に対し、私たちは「ビットコインのエコシステム内における意思決定プロセスがそれほど調和のとれたものであるなら、時に論争があれほど加熱してしまうのは何故か」と質問した。ブロックサイズ論争のケースなど、一部が分派にまで至っていることは周知の事実だ。バック氏は「それが起きたのは一部の参加者が強引に変更を進めようとしたためだ」という見解を示した。

「その原因の大部分は、一部の企業やマイニングプールが自らのビジネスにとって金銭面でプラスになるよう、変更プロセスを無理矢理変えようとした点にあったと考える」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン