2020年の年末から2021年にかけてビットコインの価格相場は上昇し、ついに5万ドルの大台を突破した。ビットコインの価格相場を左右する要因はさまざまなものがあるが、中でも大きな要因の一つとされているのが半減期とよばれるものだ。

しかし、仮想通貨に詳しくない人にとっては半減期とは何なのか、どのような仕組みとなっているのかわからない人も少なくないだろう。そこで本記事では、ビットコインの半減期と価格に与える影響についても紹介する。

マイニングと仮想通貨ビットコイン発行の仕組み

ビットコインの半減期を理解するうえで、あらかじめ押さえておきたいのがビットコインのマイニング(採掘)の仕組みだ。そもそもビットコインはブロックチェーン上で取引されるが、膨大な取引データをチェックし承認することで、その報酬として新規発行されるビットコインを受け取ることができる。これを「マイニング報酬」と呼び、マイニングを行う人または団体のことを「マイナー」と呼ぶ。2021年2月現在のマイニング報酬は6.25BTCだ。

ビットコインを手に入れるためには、取引所での売買またはユーザー同士による交換という方法があるが、これはあくまでもすでに流通しているビットコインを取引するものだ。一方、マイニングは新規発行されるビットコインを手に入れるための唯一の方法といえる。

ビットコインのマイニングはおよそ10分間に1回のペースで行われる仕組みとなっているが、ブロックチェーン上での取引量が膨大に増えた現在、マイニングに成功するためには極めて大きなコンピューターリソースが必要だ。私たちが所有している一般的なPCでは処理が追いつかず、企業や団体が莫大な設備投資を行ってマイニングを行っているのが現状なのである。

マイニングするにはマイニング機(ASIC)やグラフィックボード(GPU)を使う 左:Antminer S19 Pro(出所 BITMAIN) 右:GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO(出所 MSI)

マイニングするにはマイニング機(ASIC)やグラフィックボード(GPU)を使う
左:Antminer S19 Pro(出所 BITMAIN) 右:GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO(出所 MSI

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ビットコインの半減期とは

ビットコインのマイニングは前述の通りおよそ10分に一度のペースで行われ、そのたびに新規にビットコインが発行されるが、一定の期間を経るごとにこのマイニング報酬が半減する仕組みとなっている。これを「半減期」と呼ぶ。半減期はおよそ4年に一度のペースで訪れる。すなわち、4年ごとにマイニング報酬が少なくなっていき、ビットコインの新規発行量が減少する。現在のマイニング報酬は6.25BTCだが、2020年に半減期が来る前は12.5BTCだった。

ビットコインは、あらかじめ発行量の上限が2100万枚と決められている。これは、ビットコインが世の中に溢れ希少性がなくなることを防ぐためだ。希少性を確保するためには、新規発行量を適切にコントロールする必要がある。

ビットコインは円やドルといった法定通貨とは異なり、中央集権的な管理者が存在しない。そのため、発行量の上限やマイニング報酬、そして半減期も、あらかじめプログラミングされており、そのルールに則って実行されている。

ビットコインの半減期 発行枚数とマネタリーインフレーション

半減期は4年に一度のペースで訪れると述べたが、厳密には取引データを記録するブロックが21万個積み上がるごとに半減期を迎える。マイニングによりブロックが約10分に1回のペースで生成されるため、21万ブロックを生成するのにおよそ4年かかるということだ。

ビットコインが2009年に誕生してから最初に迎えた半減期が2012年末、その後2016年に2回目、直近では2020年5月に3回目の半減期を迎えた。2012年以前のマイニング報酬は50BTCであったが、1回目の半減期で25BTC、2回目の半減期では12.5BTC、そして3回目の半減期を迎えた現在では6.25BTCとなっている。

半減期

マイニング報酬

半減期前

50BTC

1回目(2012年11月28日)

25BTC

2回目(2016年7月9日)

12.5BTC

3回目(2020年5月12日)

6.25BTC

4回目(2024年)

3.125BTC

5回目(2028年)

1.5625BTC


3回目の半減期までにビットコインの発行上限枚数の87.5%にあたる1837万5000BTCが発行されている。


半減期はビットコイン価格に影響するのか

半減期を迎えるとマイニング報酬が半分になるため、マイナーが市場で売却するビットコインの量は以前よりも減少すると考えられる。売り圧力が低下することにより、半減期は需要の変化がなければビットコインの価格上昇の一因になると考えられそうだ。

それではビットコインの半減期の前後で価格は実際にどのように変動したのか見てみよう。過去3回の半減期の前後3カ月の価格推移は以下のようになっている。

1回目の半減期の前後3カ月のBTC価格

仮想通貨ビットコイン1回目の半減期と価格の推移

2回目の半減期の前後3カ月間のBTC価格

仮想通貨ビットコイン2回目の半減期と価格の推移


3回目の半減期の前後3カ月間のBTC価格

仮想通貨ビットコイン3回目の半減期と価格の推移

1回目の半減期では、半減期の3カ月前〜半減期直後はほぼ横ばい、その後1カ月半後くらいから大きく上昇している。
2回目の半減期では、半減期の2カ月ほど前から価格が上昇し始めピークは1カ月前に訪れた。半減期当日前後は横ばいで1カ月後に下落し、その後ゆるやかに回復している。
3回目の半減期では、半減期の2カ月ほど前から価格が上昇し始め半減期直前は下落、その後回復し2カ月後に大きく上昇している。

ビットコインの価格に影響するのは半減期のみかといえば、決してそうではない。1回目の半減期の経験を元に投資家がだいぶ早めに買いを入れるということも考えられる。他にも主要国における仮想通貨関連の法整備、世界各国の政情、大手企業による仮想通貨の採用や投資など、ビットコインの価格相場を左右する材料はさまざまだ。

仮想通貨ビットコイン誕生から現在までの価格推移

ビットコインの価格は誕生から現在まで右肩上がりだ。発行上限と希少性を考えれば長期的には今後も上がっていくと考えられる。しかし、半減期前後のチャートを見ると、必ずしも半減期というイベント直後に価格が上がるとは言えなさそうだ。


ビットコイン以外の半減期

仮想通貨によって発行量の上限枚数や半減期の有無は異なる。ビットコイン以外にもさまざまな仮想通貨がそれぞれ供給量調整のメカニズムを持っている。ビットコイン以外の代表的な仮想通貨では、半減期はどのようになっているのか解説しよう。

イーサリアム(ETH)

イーサリアムは、ビットコインとは異なり通貨の発行上限や半減期が定められていないが、マイニングによって通貨の新規発行が行われる仕組みはビットコインと共通している。現在のマイニング報酬は2ETHだが、システムアップデートなどのタイミングで5ETHから3ETHへ、3ETHから2ETHへと過去に2度の減額が行われている。また、次回はマイニング報酬を0.5ETHにする議論がなされている。ビットコインと比較するとインフレ率が高く、これはETH保有者にとって好ましくないからだ。

リップル(XRP)

国内外における送金システムの用途として開発されたリップルには、マイニングも半減期もない。発行上限は1000億枚で、これらはすでに発行済みだ。取引が承認されるたびに手数料として徐々に通貨が消失され流通量を調整する仕組みを採用している。1000億枚のうち現在市場に流通しているXRPはおよそ半数で、残りの約半数はリップル社が定期的に売却するために予備として保有している。

ライトコイン(LTC)

ビットコインをベースに開発されたライトコインは、発行上限は8400万枚で、ブロックの生成速度は2分30秒だ。84万ブロックごと、ビットコインと同様に4年に一度のペースで半減期が訪れる。11年11月に誕生したライトコインの初めての半減期は15年8月25日だった。2回目は2019年8月5日、3回目の次回は2023年夏の予定だ。現在のマイニング報酬は12.5LTCであり、次回には6.25LTCに半減される。


今後訪れるビットコインの半減期

次回のビットコインの半減期は2024年に訪れる予定だ。需給の観点からは理論的には半減期は価格上昇の一因になると考えられるものの、過去のビットコインの半減期前後の相場を見ても、半減期直後に必ずしも価格が上がるとは言い切れない。半減期を意識した投資家の思惑も入ってくるだろう。価格を予想する際は半減期単体のイベントではなく包括的な要素を勘案する必要がある。