トランプ大統領のペトロ禁止令、今後の展開はどうなるのか?

 トランプ米大統領は19日、ベネズエラの原油備蓄に裏付けられるとされる同国の仮想通貨「ペトロ」のイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に、アメリカの投資家が参加することを禁ずる大統領令を出した

 カラカスキャピタル社のマネージングディレクター、ラス・ダレン氏は、ブルーンバーグに対し、ペトロへの投資禁止令が、仮想通貨に対する投機や関心の低下を引き起こすだろうと話した。ダレン氏は次のように言う:

 「とても大きな打撃だ。ほとんどの仮想通貨は、実際に何の現物の裏付けも持っていない。だから仮想通貨投機が拠り所としている理論は、もっとばかげたものだ。私が100ドルで仮想通貨を買うのは、200ドルで買おうとする、よりばかげた誰かがいるからだ。その均衡から米国を排除すれば、投機への関心とその可能性は、縮小してしまう」

ベネズエラへの制裁措置

 トランプ大統領は、米国の投資家によるペトロ購入を確実に禁止するため、ムニューシン財務長官に対し、あらゆる規則や政策を行うことを認めた。ベネズエラの仮想通貨への投資を禁ずる米国政府の決断は、米財務省が4人のベネズエラ政府高官に対して追加制裁を課したことに影響した可能性が高い。

 制裁措置を受けたのは、ウィリアム・アントニオ・コントレラス国内通商副大臣、ネルソン・レナルド・レパジェ・サラザール国庫長官、アメリコ・アレックス・マタ・ガルシア国立住宅住居銀行理事長、及びカルロス・アルベルト・ロトンダロ・コヴァ前ベネズエラ社会保障協会理事長の4人である。

 世界の先進経済20ヶ国から集まった金融当局者・リーダーたちとの議論の中で、ムニューシン氏は、米国が「マドゥロ政権の泥棒政治」と戦う必要があることを強調した。同氏は次のように言明している

 「マドゥロ大統領はベネズエラの経済を破壊し、人道的危機に拍車をかけた。マドゥロ政権は政策を軌道修正する代わりに、デジタル通貨「ペトロ」を通して制裁回避を企てている。そのような策略は、民主的選挙で選ばれたベネズエラ国民議会も非難しており、財務省は米国民に対し関与を避けるよう警告した」

 ベネズエラに課せられた新たな制裁措置と、同国の官製仮想通貨への投資に対する米国政府の厳しい禁止令により、仮想通貨を育て、2度目のICOでさらに資金を集めようと考えていたベネズエラ政府の計画は台無しになってしまうだろう。

ペトロ・ゴールド

 テレグラムICOの20億ドルやEOSトークンセールの10億ドルを超す、史上最大の50億ドル以上を集めたと伝えられるペトロのトークンセールを受け、ベネズエラのマドゥロ大統領は2月21日、同国がさらに別の仮想通貨のリリースを準備していると発表した。この仮想通貨は「ペトロ・ゴールド」と呼ばれ、ベネズエラの金準備により裏付けられる。

 「来週、金の裏付けを持つペトロ・ゴールドをリリースする予定だ。ペトロ・ゴールドはよりパワフルで、ペトロを強化することになるだろう」と、マドゥロ氏は現地のテレビで述べた

 マドゥロ大統領は、ペトロ・ゴールドに関しそれ以上の情報を一切提供せず、同国の負債を埋めるため新しい仮想通貨の発行を今後も続けていくとした。ベネズエラの野党リーダーたちは、同国の経済危機に対するマドゥロ大統領の対処方法を非難し、ペトロ及びペトロ・ゴールドの発行は「違法な債券発行」としている。

 また、ペトロのトークンセールに米ドルとユーロで参加した投資家たちは、同国政府の支払能力と透明性について、懸念を表す。特にペトロの公式ホワイトペーパーで、トークン保有者に同国原油備蓄の所有権が保証されていないことが明らかになったことを受け、投資家の不安は増している。

 その代り投資家は、ペトロを使って国税・手数料・寄付・公共サービス料金を支払うことができる。しかしそれは、トークンセールに参加している投資家から、メリットを奪うものだ。

 「ベネズエラのボリバル共和国は、国税・手数料・寄付・公共サービス料金の支払手段として、ペトロを認める予定である。支払いに充てられるペトロの価値は、前日のベネズエラ原油バスケット価格に、割引価値のディスカウントを加えて決められる。このような方法で、購入者は投資額に対応する回収可能価値を、常に確保することになる」と、ホワイトペーパーには書かれている。

政府発行の仮想通貨

 ブロックチェーン会議のジェネシス・ロンドンにて、ピーター・トッド氏は「国が発行するデジタル通貨は仮想通貨とは異なる」と述べた。

 現金への依存が非常に低いスエーデンや韓国のような国では、国内に循環しているお金の大部分が、銀行やその他の金融機関によりデジタル化されている。デジタル化された現金は、デジタル通貨、又はデジタル資産と見なすこともできる。

 仮想通貨を、中央権力の管理に影響されることのない、許可不要の分散型プロトコルとして運用するためには、分散化と分散型金融ネットワークが必要となる。トッド氏は次のように説明した:

 「すでにほとんどの場所で、デジタル通貨が存在する。同様にほとんどの場所で、デジタルに送金を行うことができる。仮想通貨の目的は、お金をデジタルに移動できるようにすることではないく、監査できるようにすることだ。分散型仮想通貨の場合、その目的は、許可を得なくてもお金の移動を監査できるようにすることである。しかし政府発行の通貨に関しては、明らかに許可や、中央の権力・管理が存在する。それが話の全てだ」

 さらにトッド氏は、仮想通貨の重要な側面は、公開台帳を通して透明な監査を提供する能力であると強調した。例えばビットコインは、その取引の全てがビットコインブロックチェーンネットワーク上に表示されており、ネットワーク内の誰でも取引を検証できる。

 「仮想通貨の目的の1つは、何が起こり、何が供給され、どんな取引だったのか、人々がより適切に監査できるようにすることである。だが実際には、多くの場所で、このことが重要視されていない」と、トッド氏は付け加えた。

 ベネズエラのペトロ、そして今後実現されるかもしれないペトロ・ゴールドについて、ベネズエラ政府がその資産をリアルタイムに監査し、投資家が公開台帳を通して取引や保有状況を自由に検証できるようにするかどうかは、まだ不明だ。もし政府が監査結果を提供せず、イーサリアムネットワークのように公開台帳上でその仮想通貨を開発することをしなければ、投資家に透明性を提供することはできないだろう。

 (マドゥロは必死にデジタル通貨ペトロなどの新しい計画を考え出し、説明責任を避け、権力を振るおうとしてきた。政府は[マドゥロ]政権への圧力を強め、ベネズエラの人々を支援する必要がある)

 フロリダ州選出のイリーナ・ロス-レティネン下院議員も、国際的な制裁を破る方法で資金調達しようとするベネズエラ政府の計画に対し、米国は断固たる処置を取り、マドゥロ政権にさらに圧力をかけ続けるべきだと強調した。

  • フォローはこちら: