イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏が、イーサリアムの将来的な発展に向けての自身の考えを改めて示した。
4月30日、ブテリン氏はブロックチェーンベースのSNS「Farcaster」に投稿し、2025年の開発における個人的な注力分野を明らかにした。具体的には、シングルスロット・ファイナリティの実現、スマートコントラクト実行のアップデート、プライバシーの向上などが含まれる。
この投稿は、イーサリアムネットワークが新たな節目を迎えたタイミングで行われた。GrowThePieによると、イーサリアム関連のレイヤー1およびレイヤー2プロトコルにおいて、週間アクティブアドレス数が1540万を超え、うち1345万がレイヤー2上でのアクティビティとなった。
ブテリン氏は最近、イーサリアムにおけるプライバシー強化の必要性を強調し、短期的なプライバシー向上に向けた技術ロードマップを提示していた。4月中旬には、透明性を前提としたイーサリアムネットワークにおけるプライバシー保護の在り方についても具体的な技術的解決策を提案していた。
イーサリアム財団の共同エグゼクティブディレクター、トマシュ・スタンチャク氏は今月、ブテリン氏が研究に専念する時間を確保していることを明らかにしており、今回の投稿はその成果の一部と見られる。
「ヴィタリックが方向性を示すことで、長期的な技術革新のペースは大きく加速する」とスタンチャク氏は書いている。
提案されたプロトコル変更案
ブテリン氏は、ブロックの最終確定を1スロット(12秒)で実現する「シングルスロット・ファイナリティ」に関する研究に今年注力する予定だという。これにより、トランザクションの確定時間が大幅に短縮され、UXの向上が期待される。
また、ノードがネットワークの完全なステート(アカウント残高やスマートコントラクトなど)を保持せず、各トランザクションに必要なステートデータ(witness)を添付する「ステートレス」なイーサリアムの実現も重要課題として挙げている。これによりスケーラビリティと分散性がさらに強化される可能性がある。
加えて、フロントエンドおよびバックエンドの両面からエコシステムのセキュリティ、レジリエンス(復元力)、分散性の改善にも関心を寄せており、これはサードパーティ製ウォレットなどのクライアントソフトウェアにも適用すべきと強調している。
「イーサリアムは、高いセキュリティを持ち、中央集権的な仲介者を介在させず、プライバシー保護の下で利用可能でなければならない」
ソーシャルレイヤーとコミュニケーションの強化
ブテリン氏はまた、プロトコルレベルだけでなく、イーサリアムを取り巻く「ソーシャルレイヤー」にも注目している。ガバナンスの在り方、資源配分、オープンソース開発の資金調達、メッセージングツール、情報共有、ドキュメント整備などが含まれる。
特に暗号化メッセージングや予測市場、次世代コミュニケーションツールの構築と導入を推進すると述べている。
ブテリン氏はさらに、暗号技術、OS、ハードウェア、物理インフラといった低レイヤーの分野にも興味を示しているが、詳細には踏み込んでいない。
一方、イーサリアムのガスリミット拡大やピア・ツー・ピアシステムの改善といった一部の短期的なスケーラビリティ施策については、自身は直接関与していないと明かしている。