イーサリアム開発者と愛好家たちよ、再び「サイファーパンクの精神」を取り戻そうー。("Make Ethereum Cypherpunk Again")
イーサリアムの共同創立者ヴィタリック・ブテリン氏が28日、自身のブログで新たな論説を発表して話題を呼んでいる。
「サイファーパンク」は暗号技術を使ってより自由でオープンな社会をうちたてることを提唱する社会運動だ。80~90年代に米国で活発化し、ビットコイン誕生の精神的素地になったともいわれる。
ヴィタリックによるとイーサリアムは「孤立したツールやゲームを作るためだけにあるのではなく、技術、社会、経済のさまざまな部分が互いに適合するような、より自由で開かれた社会と経済に向けて総合的に構築していく」ためにある。ところが2017年にイーサリアムの「金融化」が進むにつれ、その本来の理念が薄れ始めたという。
Make Ethereum cypherpunk againhttps://t.co/qEiOcZLEeg
— vitalik.eth (@VitalikButerin) December 28, 2023
ヴィタリックが呼びかけるのは、「分散化」「オープンな参加」「検閲への抵抗」「信頼できる中立性」等「サイファーパンク」の根本理念に立ち戻ることだ。金融以外のアプリケーションがブロックチェーン上で繁栄することが大事だという。
This is Ethereum
— sassal.eth/acc (@sassal0x) December 29, 2023
This is why we are here pic.twitter.com/onMU20q9w2
ヴィタリックによると「暗号資産の生態系の中で、これら(サイファーパンクの)価値観に従わないものを構築することは簡単」だが、「そのような誘惑に抵抗しなければ、<中略>既存のWeb2エコシステムのクローンを再創造する危険性がある」。
例えばマルチシグで保護された高度に中央集権化されたレイヤーを構築したり、DeFi等において「すでに最大のステーキングプールにユーザーを不必要に誘導するようなインターフェースを構築する」ことも反サイファーパンク的な仕事だという。
一方、イーサリアムではサイファーパンクの理念を実現するテクノロジーが少しづつ台頭しつつあると指摘。
現在台頭するロールアップ技術やゼロ知識証明、またアカウント抽象化、第二世代のプライバシーソリューションを挙げた。
また自分のプライバシーを明かすことなく投票に参加することや、より民主的な投票の仕組みといわれる「クアドラティックボーティング」、また異なったコミュニティを跨ぐ合意形成メカニズムを実装することが大事と力説した。
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また、ヴィタリックはこういった新しい技術を開発していくのみならず、よりよい社会を構築するために協力しあう「ソーシャルレイヤー」が大事と説く。ただその「社会性」のありかたも一筋縄ではいかない。
「『X』に取り組んでいる連中は堕落している、『Y』をやっている連中は本物だ」と言うのは簡単だ。しかし、これは怠惰な対応だ。真に(イーサリアムを)成功させるためには、技術スタックに対するビジョンだけでなく、そもそも技術的なスタックを構築することを可能にしている社会的な部分も必要なのだ。」
「イーサリアムプロトコルのガバナンスそのものは金融化されていないことが特徴だ。このことがガバナンスが金融化されている他のエコシステムよりも(イーサリアムを)はるかに強固なものにしている。これがイーサリアムが強力な社会的レイヤーを持つことに価値がある理由です。このレイヤーは純粋なインセンティブでは実現できないような場所において、強力にその価値を発揮する。」
「ここにイーサリアムのソーシャルレイヤーのユニークな価値提案がある。インセンティブを大切にしながらもインセンティブに飲み込まれないというユニークな中途半端さがある。温かくて結束力のあるコミュニティを大切にすると同時に、内側から『温かくて結束力がある』と感じられるものは、外側からは『抑圧的で排他的』と感じられやすいことを忘れないようにする。コミュニティ主導の行き過ぎたリスクから身を守る方法として、中立性、オープンソース、検閲への抵抗といったハードな規範を大切にするという、ユニークなバランスが必要だ。このバランスをうまく機能させることができれば、今度は経済的・技術的なレベルでビジョンを実現するための最良のポジションに立つことができるだろう。」
ヴィタリックの深い「思索」に共鳴しながら、2024年を迎えたい。
<終>