イーサリアムの共同創業者ヴィタリック・ブテリン氏は、12月10日、一連の長いツイート内で、プルーフオブステーク(PoS)を基にしたシャーディングを活用し、今後ブロックチェーンを「何千倍も効率化」させる宣言した

シャーディングとは、一般にはデータを複数のサーバーで分散管理する技術を指す。イーサリアムの開発段階におけるシャーディングの導入は、トランザクションの承認を行う単一の集団を複数グループに分散させ、各々のグループでトランザクションの承認を分担して行うようにすることを意味する。単一母体でのトランザクションの承認は高いセキュリティを維持できるものの取引速度の低下などを起こし、イーサリアムが提供するサービスに支障をきたす。しかし複数母体が分担して全体の作業効率を上げ、スムーズな承認作業が実現されれば、イーサリアムはより多くのユーザーや大規模なプロジェクトに対応できるようになると考えられている。

計16に及ぶ連続ツイートで、ブテリン氏は、ブロックチェーン技術を金融分野以外にも活用すると語る。同氏は、スケーラビリティが改善され(運用コストの低下)やユーザー・エクスペリエンス(UX)が向上するにつれて、金融分野以外での活用が「ブロックチェーン技術史の一層大きな部分」を占めるようになるだろうと述べている。

さらにブテリン氏は、ブロックチェーン技術は「計算コストの削減」とは関係なく、その代わりに「社会的コスト」を減少させながら計算コストを増加させるものだと指摘する。同氏は、今後70年で、あらゆる地域の人件費が2~10倍上昇する一方、コンピューターの価格は現在の1兆分の1に低下しているだろうと話す。

ブテリン氏は、「高額の技術コストを負担して社会的コストの削減を達成することが、少なくとも時には、非常に安上がりな結果になることがある」と付け加えた。そして、将来のスケーラビリティについてこう述べた。

 9. PoSとシャーディング技術を備えた未来のブロックチェーンは、何千倍も効率が良くなり、その結果、チェーン上にモノを置くという行為がますます受け入れられるようになるだろう。
— Vitalik Non-Giver of Ether(@VitalikButerin)18年12月10日

PoS(プルーフ・オブ・ステーク)とは、仮想通貨を維持・管理するシステムの一種。仮想通貨の保有量(ステーク)の大小により、仮想通貨の維持・管理にかかる作業に対する報酬が得やすくなる特徴がある。これによりPoWのシステム的欠陥であった、中央集権化への危惧(高性能コンピュータを大量に持つものが仮想通貨を操れる)や電力の大量消費などの解決が期待される。

PoSアルゴリズムへの移行に際し、イーサリアムの開発者たちは、「キャスパー」を中間ステップとして採用している。ブテリン氏が子供向けテレビアニメ「Casper the Friendly Ghost」にちなんで「フレンドリーゴースト」と呼ぶ「キャスパー」は、プルーフオブステーク(PoS)とプルーフオブワーク(PoW)のパラメータを組み合わせたハイブリッドプロトコルだ。

コインテレグラフで報じたようにキャスパーは、過剰なエネルギー消費について、さらには「マイニングハードウェアへの平等なアクセス、マイニングプールの中央集中化、ASIC(特定用途向け集積回路)の新興市場といったマイニング関連の問題」を解消するために導入されたものだ。シャーディングと共に、PoSはイーサリアムのオンチェーンスケーリング・ソリューションとなることが期待されている。

ビットコイン(BTC)やその他のPoWベースの仮想通貨のマイニングに対する環境上の懸念は、仮想通貨の人気上昇と共に高まり続けている。昨年10月には、ビットコインのマイニングで消費されるエネルギー量が288メガワットに到達すると見積もられている。PoSは、PoWよりも遥かにエネルギー効率が良く、仮想通貨マイニングのエネルギー消費問題に対するソリューションになりうると期待されている。