全米の教職員が加入する労働組合である全米教員連盟(AFT)が、米国で進む仮想通貨市場構造法案が「教員らの退職後の安全を脅かす」と主張し、同法案に反対の声を上げた。
CNBCの報道によれば、AFTは米上院銀行委員会の共和党・民主党指導部に宛てて、上院で審議中の「責任ある金融イノベーション法案」に反対すると表明した。この法案は、下院で可決された市場構造法案(通称CLARITY法案)を基盤としている。
AFTは、この法案が経済の安定と退職金制度に「深刻なリスクをもたらす」と述べた。
「この法案は、暗号資産やステーブルコインに対し、他の年金保有資産と同等の規制を提供していない。ほとんどの年金基金が仮想通貨を保有しないのは、そのリスクの高さゆえである。この法案は暗号資産が安定しており、主流資産であるかのように扱っているが、現実はそうではない」
上院銀行委員会が7月に公開した市場構造法案の草案、さらに上院農業委員会が11月に提示した草案のいずれにも、年金や退職基金でデジタル資産の利用を明確に認める文言はなかった。
しかしAFTは、「法案が成立すれば、年金基金や401(k)が、たとえ伝統的証券に投資していても安全でない資産を抱える結果になる」と警告している。
主要労働組合も懸念表明
米国の主要労働組合であるアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)も、10月に銀行委員会へ送った書簡で同様の懸念を示していた。
AFL-CIOは、市場構造法案が「退職基金および米国経済全体の金融安定性にリスクをもたらす」と指摘し、同法案が「401(k)や年金などの退職金制度にリスクの高い資産を組み込むことを認め、労働者のリスクを増加させる」と主張した。
全米州退職年金管理者協会によれば、教員を含む公的年金資産の総額は2025年第2四半期時点で6.5兆ドル超にのぼる。投資会社協会は、2025年9月時点で米国の退職年金の資産総額が45.8兆ドルと報告している。
退職年金への仮想通貨導入を推進
上院での市場構造法案の審議とは別に、トランプ大統領は、401(k)退職プランに仮想通貨を組み入れられるように政策変更を試みている。
トランプ大統領は8月、労働省に対し、確定拠出型年金におけるオルタナティブ資産(デジタル資産を含む)に関する制限を再評価するよう指示する大統領令に署名した。
資産運用会社の間でも、個人退職勘定(IRA)や401(k)にデジタル資産を組み込む姿勢が徐々に広がっている。
10月には、モルガン・スタンレーがアドバイザーに対し、顧客の退職ポートフォリオの一部として仮想通貨ファンドを提案することを許可したと報じられた。また、ミシガン州やウィスコンシン州のような州管理の退職基金も、仮想通貨ETFを通じて仮想通貨にエクスポージャーを持っている。
上院での採決時期は不透明
ただ市場構造法案が上院本会議で採決される時期は定まっていない。
同法案の積極的な支持者として知られる共和党のシンシア・ルミス議員は火曜日、「銀行委員会が今週中にアップデートされた草案を公表し、休会前に修正協議の公聴会が開かれる可能性がある」と述べた。
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