米政府によるブロックチェーン関連の取り組み 多くが試験段階

 米国政府は企業や他国、教育機関への資金提供や協力・連携を通じて、革新的なテクノロジーや科学の発展につとめ、また継続的な開発を行っており、その中でブロックチェーンテクノロジーの評価を行っている。契約や取引、および知的財産(IP)に関する記録は、アメリカの経済・法律・政治システムにおいて決定的な部分となっている。そのような情報を管理するために設立された政府組織は、経済のデジタル変革に遅れないようにしなくてはならない。それゆえ、いくつかの政府機関でブロックチェーンテクノロジーが検討・実装され、以下のような分野の情報共有において透明性や効率、信頼性の向上をはかろうとしている。

  • 財務管理
  • 調達業務
  • IT資産・供給プロセスの管理
  • スマートコントラクト
  • 特許、商標、著作権、ロイヤリティ
  • ビザやパスポート、社会保障番号、出生証明書などの政府発行証明
  • 連邦政府職員のデータ
  • 予算資金
  • 連邦援助・海外支援

 ここで、米国の各政府部門の取り組みを紹介しよう。

一般調達局(GSA)

 GSAの「エマージング・シチズン・テクノロジー・オフィス」は、ブロックチェーンテクノロジーや政府内での実装に関心のある連邦機関やアメリカ企業のために、「米国連邦ブロックチェーン」プログラムを立ち上げた。GSAはこれまでブロックチェーンを活用して、「FAStレーン」プログラムの契約確認の自動化や迅速化を実現している

財務省

 財務省は、テクノロジーがサプライチェーンの管理に利用できるかどうかを判断するプログラムを試験的に運用している。実際に民間部門において処理時間が短縮され、効率アップや財務管理の強化につながっているようだ。

 財務省はまた、ブロックチェーンベースの仮想通貨について、「マネーロンダリング防止/テロ資金供与対策(AML/CFT)」の法整備を推進するためのイニシアティブに着手し、金融機関とPPPを構築して情報共有につとめている。

 さらに、スティーブン・ムニューシン財務長官はダボス・ブロックチェーン委員会の一員だ。

国務省

 国務省は、世界経済発展における革新の重要性に焦点を当て、現在ブロックチェーンを活用している民間パートナーとの対話を奨励している。

 「国務省は官民協働体制を支援している。例えば、海外開発・援助の影響や責任を最大化する中で、ブロックチェーンテクノロジーは透明性を向上させ、公的調達の資金繰りにおける汚職や詐欺行為、不当支出、非効率に対処することができるだろう」と、ジョン・J・サリバン副長官は説明している

 政府による調達活動は世界経済の大きな部分を占め、GDPの20%、約9.5兆ドルの公的資金が流れている。OECDの調査によると、汚職により年間20~25%(約2兆ドル)が失われている。これは膨大な額の税金に相当し、その資金規模の大きさのために、政府の活動が無駄使いや詐取、汚職の被害を受けやすくなっている。こうした腐敗により契約締結プロセスが歪められ、基本的な公共サービスの質が低下している。また、競争力のある民間部門を成長させる機会が制限され、公共団体への信頼低下にもつながっている。

 世界の国々は技術革新を公的調達の中核とし、調達活動を、収益成長や国の競争力向上、医療・経済的福祉・全体的な生活の質の改善のための戦略的ツールに転換しようとしている。国家的なイノベーション戦略やイノベーション基盤が50以上の国で創出されている。これらの国は海外直接投資の制約を緩和しつつ、国外の民間業者に資金を提供し、官民連携を活用し、税制面でも優遇しながら自国への協力を要請している。海外開発・援助の影響や説明責任を最大化する中で、ブロックチェーンの力で、資金調達プロセスにおける汚職や詐欺行為、不当支出、非効率に対処できる可能性がある。

国防総省

 昨年12月12日に成立した「2018国防権限法」(H.R. 2810)にも反映されている通り、米政府や各種機関は、分散型台帳テクノロジーによるリスクについて入念に調査した後、ブロックチェーンテクノロジーの可能性を様々な分野で探っている。連邦政府と国防総省のIT環境に関するブロックチェーンの可能性に光を当てる内容だ。  

国土安全保障省

 DHSは国境警備におけるブロックチェーンの役割について事例を作成するため、中小企業技術革新制度の助成金を出している

航空宇宙局(NASA)

 NASAのミッションを確実に成功させるには、効率的な通信システムや効果的なコンピューティング技術が肝要となる。ブロックチェーン技術により、デジタル情報の優れたアクセス性と費用効果の高い有人・無人飛行技術の一体化が進むと期待されている。オハイオ州のアクロン大学は、NASAの新たな助成金を活用し、イーサリアム・ブロックチェーン・ネットワークで稼働する深層学習AIの研究を行う。様々な宇宙通信環境において、回復力のあるネットワーキングおよびコンピューティングの枠組みを開発する予定だ。

結論

 ブロックチェーンはデジタル政府を実現する特効薬ではない。しかしそのテクノロジーが広く実装されるにつれ、スマートで適切な契約の未来像が提示され、また、米国政府と連携した業界全体が透明で効率的な活動を行うかどうかが示されていくだろう。

セルバ・オゼリ(弁護士、公認会計士)は、国際税務弁護士、公認会計士。税務、法務、会計の問題についてTax Notes、ブルームバーグBNA等に寄稿している。

ここに述べられている見解や意見はあくまで筆者/寄稿者のものであり、コインテレグラフおよびコインテレグラフジャパンの見解を反映するものではありません。

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