ビットコイン(BTC)の価格は、史上最高値である11万1800ドルを数パーセント下回る水準にとどまっている。オンチェーン分析プロバイダーのグラスノードによると、今回の強気市場は「このサイクル特有の力学」が働いており、強気相場の終盤にもかかわらず長期保有者が依然として市場の動向を左右しているという。これは過去のサイクルとは大きく異なる動きだ。
データによれば、155日以上ビットコインを保有している長期保有者(LTH)は、大きな利益を実現しており、その実現損益の純額は1日あたり最大で9億3000万ドルに達している。それでもなお、長期保有者の保有量は増加している。通常なら利益確定によって長期保有者の保有量は減少するタイミングであり、異例の事態といえる。
この力学は、一部の長期投資家が売却する一方で、それを上回る規模のコインが新たに長期保有の対象へと移行していることを意味している。レポートでは、これを「市場構造におけるユニークな二重性」と表現しており、売り圧力を買い増し需要が上回っている状況だと述べている。この保有行動の変化は、主に米国の現物ビットコイン上場投資信託(ETF)や機関投資家による長期保有志向によって説明されている。
この特有の動きは、実現損益比率にも現れている。現在この比率は9.4に達しており、多くの長期保有コインが大きな利益を伴って売却されていることを示している。過去には、こうした水準は市場の熱狂と一致し、局所的な天井やサイクル終盤の兆候となることが多かったが、需要が持続する限り、こうした状況は数カ月続くこともある。
ビットコインのボラティリティは高まるか
ビットコインの現在のボラティリティには矛盾する側面が見られている。一方では、実現供給密度(現在の価格帯でどれだけのビットコインが保有されているかを示す指標)が過去数週間で上昇しており、10万5000ドル〜11万ドルの価格帯で多くの投資家が購入していることが示唆されている。このように保有が特定価格帯に集中した状況では、小さな価格変動でも感情的な反応を引き起こしやすく、急激なボラティリティのリスクが高まる。
その一方で、デリバティブ市場からは逆のシグナルも出ている。ビットコインのオプション価格から導出されるアット・ザ・マネー・インプライド・ボラティリティ(ATM IV)は、すべての期間で低下を続けており、近い将来に大きな価格変動が起きると見ているトレーダーは少ないことがうかがえる。
また、Ecoinometricsによると、ビットコインの週次ボラティリティは現在、過去10年の90%以上の週を下回る水準まで低下している。これは5月にビットコインが史上最高値を更新し、大きく上昇したにもかかわらず、ボラティリティが抑制されていたことを示している。こうした安定した上昇は、リスク調整後リターンを重視する機関投資家にとっては理想的な環境とも言える。
現在のビットコイン価格は、厚い供給クラスターの上部に位置し、機関投資家の資金流入が需要を支えている。この状況下では市場は安定して見えるが、非常に張り詰めた状態にある。新たな需要が利益確定を上回れば、ビットコインはボラティリティの上限を突破して上昇する可能性がある。だが、もし市場心理が崩れた場合、調整は想定以上に急激なものになるおそれもある。
本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。