トランプ政権の仮想通貨推進姿勢を背景に、トランプ・メディア&テクノロジー・グループの幹部3名が、米国拠点の仮想通貨またはブロックチェーン企業の買収を検討している。

3月14日の規制当局への提出書類によると、この3名はケイマン諸島に拠点を置く特別買収目的会社(SPAC)「レナタス・タクティカル・アクイジション・コーポレーションI」を通じ、1億7900万ドルの公募・私募を目指している。この動きはフォーブスが最初に報じた

レナタス・タクティカルの経営陣とトランプメディアとの関係

レナタス・タクティカルのCEO(最高経営責任者)であるエリック・スウィダー氏は、トランプ・メディアの取締役であり、以前はデジタル・ワールド・アクイジション・コーポレーション(DWAC)のCEOを務めていた。DWACはSPACを通じてトランプ・メディアと合併し、同社の上場を実現させた経緯がある。

また、レナタス・タクティカルのCOO(最高執行責任者)であるアレクサンダー・カノ氏は、DWACの元社長である。さらに、トランプ・メディアのCEO兼会長であるデビン・ヌネス氏は、レナタス・タクティカルの会長も兼任している。

レナタス・タクティカルは、特定の企業買収を明示していないものの、「1社または複数の企業の買収」を検討していると述べている。また、データセキュリティや軍事・非軍事向け技術への投資も視野に入れている。

「世界中のあらゆる産業で事業を追求する可能性があるが、米国を拠点とする高成長企業に焦点を当てる」と同社は説明している。

トランプ政権の仮想通貨政策とレナタス・タクティカル

提出書類の中で、レナタス・タクティカルは、「トランプ政権は、デジタル資産を国家の金融戦略に統合するために前例のない措置を講じている」と指摘した。

その例として、トランプ氏が3月上旬に発表したビットコイン準備金とデジタル資産備蓄の創設に関する大統領令や、仮想通貨規制を提案する作業部会の設立命令を挙げている。

一方で、レナタス・タクティカルは、トランプ氏との関係が事業の障害となる可能性にも言及している。

「当社の経営陣および取締役会がトランプ氏およびトランプ・メディアと関係していることから、一部の企業は当社と取引することを躊躇する可能性がある」と警告している。

トランプ氏との関係が企業に与える影響は、テスラの事例からも浮き彫りとなっている。

テスラのCEOであるイーロン・マスク氏が「ホワイトハウスのコスト削減責任者」に就任したことを受け、米国内でテスラ車の焼却事件やディーラーへの破壊行為が相次ぎ、同社の株価は年初から40%以上の下落となっている。

トランプ氏の資産とトランプ・メディアの影響

トランプ氏は、トランプ・メディアの筆頭株主であり、同社はソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」を運営している。

フォーブスの試算では、トランプ氏の資産は約48億ドル、ブルームバーグは65億ドル以上と評価している。両社の推計によると、トランプ氏の資産の大部分はトランプ・メディアの1億1475万株に依存しており、現在の株価20.59ドルで約23.6億ドルの価値がある。トランプ氏は、利益相反を回避するため、2023年12月にこれらの株式を信託に移管している。