ここに表示された見解および意見は、著者のものであり、必ずしもコインテレグラフの見解を反映するものではありません。すべての投資とトレーディングにはリスクが伴うため、意思決定の際に独自の調査を実施する必要があります

前回の記事で見事ビットコインの下落の予測を的中させたコインテレグラフのレギュラーコメンテーターである仮想通貨トレーダー、トシムリン氏が今後のビットコインの相場展望について寄稿した。

去年の11月に投稿した記事では以下の2つを背景に「2021年内の動きは短期的に4月14日つけた最高値である64850ドルを一時的に超える局面があったとしても短命に終わり、来年は2021年のビットコインの上昇は短命的な動きだったと総括される」という予測を提示した。

  1. 過剰流動性相場の終幕が近づきつつあるため
  2. 足元で起こっているインフレが今年の年末から2022年前半に落ち着く可能性があるため

さらに、同記事では「月を追うごとに量的緩和が縮小されていくため、それに伴ってビットコインも上昇の勢いが衰えていくと考えるのが自然である」として時間の経過とともに、ダウンサイドへのリスクが増加していくことに対して警告してきた。

その後、11月23日にアメリカ政府は高騰が続く原油価格を抑制するねらいで、石油の備蓄の一部を市場に放出すると発表し、イギリスや中国、日本などの主要石油消費国と協調した動きだと説明した。それに続き、岸田内閣も24日、アメリカと協調し、石油の国家備蓄の一部放出を決定したと発表したことがキッカケとなり、去年の10月25日には約80ドルをつけていた原油(WTI)が12月3日には62ドル台まで下落した。

また、FRBのパウエル議長は11月30日、高インフレを「一時的」とする表現を事実上撤回。粘り強い金融緩和を続ける根拠としてきた認識を改め、早期利上げも視野に、インフレ対応の自由度を高めるために去年の11月に始めたばかりの量的緩和縮小の終了を急ぐ意向を表明した。

さらには、1月6日に公表された議事要旨ではインフレが加速すれば、従来想定よりも早期かつ迅速に利上げに踏み切ることもあり得るとの見方が示された。一部の当局者はバランスシート縮小を利上げ後の早い時期に開始することが望ましいとの見解を明らかにしたことで市場では金融政策の正常化を急ぐ方向性を示唆する、タカ派的な内容だと受け止めれた。これにより、流動性の巻き戻しが意識されてダウ平均株価を始めとする米株が反落した。

パウエル議長がインフレ抑制を優先事項とした構えを見せていることから、期待インフレ率も11月15日に2.76%まで上昇したものの、1月21日現在では2.33%まで低下し、予測通り去年の秋まで続いていたインフレは一旦抑制された。

これに伴って「インフレヘッジ」と「過剰流動性」に支えられて、上昇していたビットコインも前回の記事を投稿した11月17日は終値で約60140ドルだったものの、1月21日現在は38000ドル台まで下落しているため、筆者の予測通りの展開となっていると言える(図1参照)。

図1:金融正常化懸念で下落しているビットコイン


現在の市場ではコロナのパンデミック(世界的大流行)に関連するサプライチェーンの混乱が米インフレ率を約40年ぶり高水準に押し上げたことや、オミクロン株拡散で米国の感染者数と入院者数が過去最多を更新したことを受けて、秋までに起こっていた「見かけ上のインフレ」とは質の異なる本格的なインフレ加速が懸念されている。

これにより米国ではバイデン大統領による財政拡大がインフレを加速させたという認識をもっている国民が増加しており、政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、就任後1年の支持率は40%となっており、第2次世界大戦後に就任した大統領の中ではトランプ前大統領に次いで2番目に低くなっている。

パウエル議長の再任を巡って、与党・民主党の急進左派からは、金融機関の規制や気候変動問題への取り組みが不十分だとして再任を支持しない声もあったが、バイデン大統領はこれまでの手腕を評価した形で再任が決定した。

つまり、パウエル議長にとっては再任したのはバイデン大統領の後押しのおかげでもあるため、バイデン大統領の支持率を下げないことも一つのミッションとして掲げていることだろう。

現在、市場では世界的な経済の正常化で需要が増え続けるとの見方に加え、原油の生産量の増加ペースが十分でないとの警戒感が原油価格を再び押し上げており、市場参加者は年内に少なくとも4回の利上げを見込んでおり、今週は5回目の利上げもあるとの見方が強まっており、米2年債利回りは1%台まで上昇し、これに引っ張られる形で10年債利回りも1.8%台まで上昇しているため、市場参加者が金融引き締めをかなり強く意識している様子が伺える。

しかし、米国では死者の急増はないものの、10日はオミクロン株の拡大により1日当たりの新規感染者数が140万人を超える事態となっており、1月7日に発表された雇用統計では失業率は22カ月ぶりの低水準となったが、その一方で、新規雇用者数は市場予想の40万人増を下回って19万9000人増となり、労働参加率は低調な状況が続いた。

雇用の伸びは過熱もなく底割れもなく、緩やかな状態に留まっており、このような状況下では市場が恐れているほどのインフレは今すぐに問題にはならないと筆者は見ている。

次々と現れる変異種によるコロナ禍再燃から景気悪化懸念も台頭している中では、すぐに経済活動が完全に再開され、需要が拡大するとは考え難いため、ここから半年程度は米長期国債の利回りが2%越えて定着することはないと予測する。

確かに、今起こっているインフレは去年の秋とは質の違うインフレに見えるので対処する必要はあるが、筆者の私見を言えば、市場参加者が予測している3回、ましてや4回~5回という予測は過剰だと考えており、米経済回復の鈍化と国際金融市場の乱高下を気にして、3回~5回の利上げを断念し、緩慢な金融引き締めに再度転じて様子をうかがうものと予測している。

去年の秋までインフレは「一時的」だとして、ハト派姿勢を示していたパウエル議長は10月以降、タカ派姿勢に転じている。しかし、これはバインデン政権を支援するための政治的ポーズにすぎないと見ており、パウエル議長の心の内は現在、起こっているインフレはサプライサイドのボトルネックに伴う一過性のものに過ぎないと考えているはずであり、現段階では3回~5回の利上げは難しいと考えているはずだ。

従って、早期利上げとバランスシート縮小懸念から流動性の巻き戻しが意識をされて売られ、4万ドルを下回っているビットコインは市場の過剰な利上げ懸念が意識をされて、やや売られすぎだと考えているため、30385~36385ドル近辺では一旦サポートされると考えている(図2参照)。

この価格帯を大陰線で下抜けない限り、ここは現物の仕込み場所としては妥当だと考えているため、この水準近辺では中長期的に見て、積極的に現物を買い戻す戦略(筆者は去年の10月~11月にかけて仮想通貨の現物をすべて売却したため)を取っている。

相場の傾向としては10月頃に台頭したインフレ懸念のように「一時的に行き過ぎた予測」が先行して想定していたポイントよりもオーバーシュートする局面も見られるため、30385~36385ドルを下抜けるシナリオも想定しておく必要はあるが、それはいずれ修正されるのも相場であるため、万が一、この水準を下回った場合は絶好の買い場と捉えるべきだろう。

図2:ビットコインの妥当な買い場

上記をまとめると、筆者は、2022年は市場参加者が期待している3回~5回の利上げは過剰な期待だと考えており、米経済回復の鈍化や相場の乱高下を気にする形でFRBは徐々に緩慢な利上げ姿勢を示すと予測しているため、現段階では30385~36385ドル以下は売られすぎだと見ている。従って、特にデリバティブ市場で取引をしている方は、この価格帯以下での突っ込み売りには十分に注意した方が良さそうだ。

万が一、この価格帯を下抜けたとしても23420~27750ドルではサポートされて一旦反転すると見込んでいるため、絶好の買い場となる可能性がありそうだ。

ここ半年の動向予測をするのであれば、市場が期待しているほどの金利正常化の動きは時期尚早であることが判明にするにつれて利上げ懸念で価格が落ちた分、つまりは47845~53770ドルくらいまで落ち着きはあってもおかしくないが、今年の半ば以降にはコロナ禍が収束し、金利が上がっていくことは避けられないため、仮想通貨市場の反発があったとしても短命に終わり、既につけたトップである69010ドル近辺を超えることはないだろう。

著者 トシムリン

トレード歴16年の現役為替トレーダー。20歳の頃から専業トレーダーとなる。6年間はトレードが上手くいかず一時借金を背負ったが、研究と分析を積み重ねて独自手法を編み出し、7年目からプラス収益となり、そこからは安定的に利益を出し続けている。一般投資家が持ちえないマーケットの内部構造を多角的に分析して市場を予測していくことが得意分野。分析能力と育成能力に定評があり、トレード教育によって多くの常勝トレーダーを輩出している。

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