金融業界では当たり前のことであるが、アメリカの証券取引委員会が規制に動き始めた個人や企業はおのずと有名になる。そして、それが今のICOにもあてはまる。証券取引委員会は7月、取引されている仮想通貨のうちいくつかは有価証券にあたり、その規則が適用されると定めた。この出来事によって、ある人はこう考えるだろう。〝ICOの市場規模は一体どれほど大きいのであろうか“。最も大きいICOとその成り立ちを見てみよう。

Filecoin:2.5億ドル規模でさらに成長中

ブロックチェーンデータのストレージネットワークであるFilecoinは2017年8月10日にICOを始めた。いくつかの記事によると、その分散型のストレージはICOを始めてから、信頼できる投資家からの出資もあり、およそ2億ドルを集めることに成功した。2017年8月21日の時点では、ベンチャーキャピタルから5200万ドルの出資に加え、ICOで2.5億ドルを超える資金調達を行った。FilecoinのICOは、信頼のおける投資家に限られており、ほとんどは純資産が多く、未登録の有価証券への投資リスクにも耐えうる投資家である。この制限は前述の証券取引委員会の新たな規定によるものである。そして、FilecoinのICOは9月の初旬に終わる予定である。

Filecoinのモデルはデータを蓄積し、保護するのに、ピア・ツー・ピアのIPFSというシステムを採用している。このモデルは、ユーザーがユーザー自身のハードのストレージを提供させることで、お金を稼ぐことを可能にしている。FilecoinはMaidSafeなどの他の分散型ストレージに対抗することになるだろう。

Tezos:2.32億ドル

自己修正型の暗号台帳であるTezosは2017年7月1日から14日までの間で、およそ2.32億ドルのICOを行った。この規模は、締め切り日の時点で、65,627ビットコインと36,122イーサリアムに相当し、ICO史の記録に残るものである。Tezosのコンセプトは仮想通貨市場で目にすることができる。

Tezosは安全で、将来性のあるスマートな取引システムである。Tezosは組み込み型のコンセンサスメカニズムを搭載しているので、システム仕様の変更に伴って市場を分裂することなく、そのプロトコルは何度も発展し、革新的な技術や仕組みを組み入れることができる。Tezosはほかのブロックチェーンの派生ではなく、自身のブロックチェーンを保有している。Tezosはビットコインやイーサリアムから派生しているわけでもなく、それらにただレイヤーを足したものでもない。このゼロから作られたスマートな取引システムによって、Tezosのブロックチェーン上でやり取りされているどの取引も検証がより容易になった。

Tezosのグループでは、Tezosのネットワーク内で自動的にソフトウェアをアップデートすることを目指している。そうすることで、理論上では、ビットコインなどのシステムで起こっていた闘争を避けることが可能になるそうだ。TezosのCEOと共同創立者はフォーチューン紙にTezosのICOで30,000以上のTezosの口座開設が行われたと語っている。

Bancor:1.53億ドル

Bancorは、‟prediction blockchain project”と言われるもので、2017年6月に仮想通貨イーサリアムのネットワークの下で資金調達を始めたが、その額はおよそ1.53億ドルに達した。ICOという手法自体に議論の余地はあるが、規模が390,000イーサリアムに相当し、概算ではあるが、ICO市場の記録を塗り替えた。

一般的なブロックチェーンの流動的な性質の正当性は、しばしば批判にさらされるが、Bancorプロジェクトはこれを解決しようとしている。コーネル大学のコンピューターサイエンスの准教授Emin Gün Sirerは、仮想通貨に流動性を与えるBancorのアプローチには欠陥があると指針のブログで記し、話題になった。また、Bancorは、情報処理の障害に関して度々議論の的になっていた。イーサリアムのネットワークでは大きな混雑が見られ、最低処理時間が3時間に引き延ばされた。そうすることで、イーサリアムのネットワークが差し迫った取引を処理することができ、取引を再試行できなかった問題を解決した。その反面、この時間の引き延ばしによって、参加者は過剰供給によってBancorネットワークの仮想通貨の価値が下がらないか、心配しなければならなくなった。そのうえ、この論争に伴って、イスラエルのビットコイン連盟の代表であったMeni RosenfeldはBacorのアドバイザー役を降りた。このような問題を抱えているが、BNT(Bancorネットワークの仮想通貨)はティム・ドレーパーのような大きい投資家には魅力的なようだ。

Status:1.08億ドル

分散型アプリのスタートアップであるStatusは2017年6月20日のICOでおよそ1億ドルを調達した。ico.token.imというウェブサイトによると、StatusのICOは299,897.84イーサリアムに相当したという。また、Statusのオフィシャルウェブサイトによると、イーサリアムのネットワークの下、Statusはウェブブラウザー、メッセージアプリ、分散型ネットワークの入り口の役割を持っている。しかしながら、Bancorのケースと同様に、イーサリアムネットワークに混雑が見られ、当初、参加者は処理の行き詰まりに直面しなければならなかった。

ちなみに、Statusプロジェクトのプライベートメッセージアプリ以外にも、このネットワークは他の開発者による分散型ネットワークアプリの受け入れ用意ができているそうだ。

EOS:1.85億ドル

2017年7月、タックスヘブンであるケイマン諸島にある企業ブロック・ワンは仮想通貨EOSへのICOでおよそ1.85億ドルを集めた。Reuters reportというニュースサイト(このサイトはブロック・ワンの共同創立者のブロック・ピアース氏の発言を引用している)によると、ブロック・ワンは規模の大きいビジネスにおいて、プロセスを自動化し、多方向アプリを開発や、資産を管理するのに、EOSが利用されることを目指している。ブロック・ワンはEOSのプラットフォームは多方向対応の分散型アプリを提案していくと主張している。

ICOが今までの記録を次々と塗り替えるにしたがって、マーケットの関心を集める可能性はより高くなるであろう。そして、それに伴い、世界中の政府機関はそのマーケットを規制しようとする。しかしながら、いずれにしても、今のところのICO市場における成功は、政府やビジネスからの関心と対になって成り立っていて、仮想通貨とブロックチェーンの技術が世間に根付いている証拠といえるだろう。