”アップコイン”は、アプリケーションに紐付けられデジタルトークンとして作られた暗号通貨を指すタームの一つだ。もともと、アップコインは一般的にクリプトエクィティに関連した用語だったが、徐々に新たな分散型アプリケーションとして利用する際に必要不可欠なものとしてその形態を変えてきた。

今回、コインテレグラフは分散型コンテンツ配信プラットフォーム、LBRYのテクノロジー・エバンジェリストであるMike Vine氏にインタビューをする機会があり、昨今クリプトエクィティの範囲を超え利用されつつあるアップコインについて話を伺った。

 

コインテレグラフ (以下CT): アップコインとはどんなものなのでしょうか?

 

Mike Vine 氏 (以下MV): アップコインとは、ただ単に価値の交換や店舗の手段としてというよりも、ユーザー・アプリケーションに力を与えるよう特別に設計されているものです。プライベート・カレンシー (プライベートなものであれば何でも良いのですが)の素晴らしい側面の一つとして、枠にとらわれず、フリーサイズである点が挙げられます。スマート・コントラクト向けに適したコインや、銀行間の巨額の取引に適したコイン、ミュージックビデオを閲覧するのに支払いをしたい億単位の人々へ最適化されたコインなど様々なコインを利用することが可能です。

弊社のこのビルトインされた暗号通貨LBRY Credits (LBC)、であれば、その定義にぴったりと完璧に合致します。

 

CT: 何種類くらいのアップコインをご存知ですか?

 

MV: Namecoinは早期に登場した良い例の一つでしょう。イーサリアムも一つだけに限らず様々なアプリケーションを容易にしたメタ・アップコインの一種です。しかしLBRYは一般大衆に初めて浸透する可能性のあるアップコインなのです―ユーザーの数だけ見ればビットコインをも凌いぐ可能性があります。多くの人が暗号通貨を使っているかなど知ろうともしませんし、気にも止めないと思います。気になるのはどの曲をダウンロードするのか、ということだけでしょう。

 

CT: ビットコインや他のテクノロジーではなくアップコインを利用しようと思ったきっかけは何だったのでしょう?

 

MV: 弊社のLBRY創設者一同、自由市場経済を信奉していますし、ビットコイン支持者です。昨今の早くお金持ちになろう、というアルトコインにまつわるスキームには目が回るばかりです。市場におけるグローバル通貨の利回りにおいて、どのような特徴や機能を加えればビットコインと張り合えるようになるアルトコインを作り出すことが出来るのか判断をするのはかなり難しいです。

どの試みも、LBRYがどうすればビットコインを超えることができるのか、ということを想定して作られていますが、結果的にはビットコインにとっても、LBRYにとっても、そうすることで悪い結果に繋がるだろうと我々は判断しました。LBRYのブロックチェーンはメディアを検索することに特化したデータを保管していて、既存の暗号通貨では不可能なネーミングシステムをオペレーションしています。ネームとは、十分なリソースのアロケーションに関する経済理論を試験的に実行するための、進行中の入札過程の対象である、という状態を指します。我々の言語で簡単に言えば、プロトコルの結果によってユーザーが簡単に欲しいコンテンツを皆が知っているワードで検索ができるということです。例えば、”ワンダフルライフ”と打てば、映画のイッツ・ア・ワンダフルライフが検索できる、というような。ビットコインはそういったネーミングを実行できるようには作られていません。

また、LBRYによってたくさんの少額取引を処理することが出来るようになる予定です。現在のブロックサイズに関する議論が表沙汰になり、ビットコインはより高額な取引を行うような向きが強まっています。おそらくビットコイン・コアによって無尽蔵に小額決済を行うことが可能になると思いますが、LBRYがうまく行ったとしても、この段階ではまだビットコインブロックチェーンを圧倒するような存在になることはないでしょう。

最終的には、プロトコルのロールアウトをきちんと管理された状態で行う予定です。言い換えれば、我々創設者は単にシステムをリリースして人々が使ってくれるよう願うだけではない、ということです。それは従来のユーザー・アプリケーションが成功してきたような形ではありません。Satoshi氏は、格好の良いものを作り、リリースして、後は放置、といったある意味当てにならない先例を作ってしまったと言えます。もちろん、これによってビットコインが成功した、というわけでありませんが、他の暗号通貨関連のアプリケーションを開発しているチームはこういったアプローチを取っているような気がかなりしています。今の段階では、LBRYはFacebookがまだただのネットワークアプリケーションのスタートアップだった時のようなそんな状態なのです。ユーザーの利用数が指数関数的に成長し、NetflixやiTunesのような中央集権型のサービスにきちんとサービスを存続してその競合足り得るような戦略的な決定が下せるかは我々次第でしょう。

LBRYアプリケーション上でも、ビットコインを支払いオプションの一つとして考えていますが、それによってネットワークが活性化するということはありません。幸いにも、ShapeShift.ioのようなサービスによってLBRY Creditsをビットコインなどに簡単に換金することができるようになります、その逆も然りです。

 

CT: 課題はありましたか?

 

MV: それはもう!アップコインをデザインする際には深刻にビジネスの展開方法を考えなければなりません。他のどのスタートアップよりも辛くシビアなものなのです、何故なら一度決めてしまえば将来的に変更することがほぼ難しいような決定を今下しているところだからです―そして、プロトコルがどのように実際に利用されているのかなど、基本的に経験則一切なしで我々はこれを行っているからです。そのような理由から、我々はジェネシスブロックが現れる前のアルファリリースの段階で、これだけ時間を割いているというわけです。

我々のチームに経済についての知識がしっかりあるということは大きな財産です。Satoshi氏のチームがそうであったように。先人たちが残してくれたプリンシプルを元に、その道を辿れば我々が到達すべきこのマーケット上のゴールへと辿り着くことが出来るでしょう。

 

CT: 御社のアップコインがアルトコインと成り(意図的なものかどうかに関わらず)、通貨としてビットコインと競合する可能性はありますか?

 

MV: ええ、どのアップコインにもビットコインに成り代わる可能性はあります。商品の世界では、その物理的な特徴や性質、独自性から見て、金銭としてゴールドほどに競合できるものを見つけるのは難しいですが、ハイテク機器を造りだし時代を築いてきたと言えるプラチナの方をゴールドより好む人もいます。一方で、プラチナは主に非金銭的な用途で使われることが多いので、価格が変動しやすい点もあります。この点に関しては主に金銭として利用される資源を持ちたくないという強い論拠が存在します。LBRY Creditsはそういった意味でビットコインを打ち負かすようにはデザインされていません。

しかし、もし、ビットコインの普及率がLBRYと並び、LBRYアプリが何十億人もの人に使われる時が来れば、その時は暗号通貨へ投機している人やユーザーなどがより広く求められ使われているアセットとして保持し、使いたいと思うようになるかもしれません。

 

CT: 過去にはアップコインは主にクリプトエクィティと関連付けて考えられていましたが、その主な目的はプロジェクトのための資金調達でした。御社のコインに対して同じようなビジョンを持たれていますか、また、そういった側面での機能や役割などを考えていらっしゃいますか?

 

MV: LBRY.Incの価値は、Creditsにより企業に対する最小限のシェアを確保することにあると考えていますので、そういった側面はあると思います。しかし、別のアルトコインを単に発行し投機家から資金を集めようなどとは考えていませんし、そういった考えには反対です。アップコインはエンドユーザーに向けてしっかりとデザインされるべきです。話は変わりますが、常識的に考えれば、起業家はビットコイン上にアプリケーションを実用的に構築できるとなれば、よしやれ!と考えてしまうと思います。一時的には、マイニングネットワークにおいて景況感が維持されていれば、どのような暗号通貨や大規模な既存のユーザーベースなどからでも、利益を得ることは出来るでしょうから。