米セントルイス連邦準備銀行が『仮想通貨の世界の概要』と題した白書を発表した。全編を通してデジタル通貨と将来的なブロックチェーンの応用について好意的な評価をしている。

 白書はアレクサンダー・ベレンツェンとファビアン・シェアが執筆。書き出しはユーモラスで、ビットコインシステムをヤップ島にたとえている。

 ヤップ島の住民は誰がどの通貨を所有しているか仮想的な台帳をつけていた。貨幣は大きな石でできていたため、移動が困難であり、所有者が誰であっても、一カ所に置いておかなければらなかった。また、海に沈むこともあった。

 研究者は次に、ビットコインのマイニングのメカニズムを詳しく説明し、ハッシュ計算の裏にある数学や、取引承認の仕組みを解説して、ビットコインが未来の資産として有益だと説いている。

 「ビットコインのような仮想資産は独自のアセットクラスになり、人の関心を引く投資や分散的な商品に発展する可能性が高い。ビットコイン自体は時間と共にゴールドに似た役割を持つようになるかもしれない。」

 それから、白書はブロックチェーン技術の応用分野に言及し、「カラードコイン」のような効果的な応用ができると予想している。カラードコインは現物資産や実社会のサービスと連動する仮想通貨で、スマートコントラクトやセキュリティ向上などの機能性をもつ。

 一方で、ブロックチェーン技術の活用に対する否定的な意見として、研究者は分岐の可能性のほか、マイニングにかかるエネルギーの浪費、中央の管理者が存在しない通貨であるゆえの価格変動を挙げている。

 白書は結論として新たなデジタル通貨のアセットクラスになる可能性を再度強調している。

 「ビットコインやブロックチェーンを使ったアルトコインを軽視すべきではない。イノベーションにより、中央の権威を介さずデジタル資産の存在が可能となる。これは、新しいアセットクラスの誕生を導き、ポートフォリオの組める価値ある分散的な商品に成熟する可能性がある。」

 FRB議長のジャネット・イエレンは17年1月、連銀がブロックチェーンを使う可能性と、それが世界の金融取引を簡素化する潜在性について好意的な意見を述べた。しかし、その実行方法の詳細については語っていない。

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