イーサリアム・ネーム・サービス(ENS)は、17年5月4日にメインネット上で開始された。いわば、現在ネット上で使われているドメインネームサービス(DNS)の、ブロックチェーン版である。発足当時、誰でも簡単にオークション手続きを利用して「.eth」で終わるアドレスを登録できる自動レジストラプロセスが注目された。

このオークションシステムでは、誰でも最低7文字からの.ethアドレス購入が可能。開始以来、6万8000件以上のオークションが行われ、3,298,707 ETHが入札された。ENSは進化を続けており、今後2年以内にアップグレードされ、さらに7文字未満のアドレスのオークションも可能になる予定だ。

イーサリアム・ネーム・サービス(ENS)とは?

イーサリアム・ネーム・サービスは、読みやすいEther(イーサ)アドレスを提供する。これは、仮想通貨のマス・アドプション(一般大衆層への浸透)のための重要なステップだ。通常のEther(イーサ)ネットアドレスは42桁もあり、初心者にとって非常に分かりずらい。ENSを使用すると、誰でも、例えば JohnDoe.eth のように人名をそのままアドレスにするなど、ユーザーフレンドリーなアドレスを作成できる。

ENSドメインへの投機が始まっている

大抵のイーサリアム・アドレスがENSオークションで購入されるため、.ethの所有者は、取得済みの.ethアドレスの所有権を第三者に再譲渡するための効率的なツールを探していた。

イーサリアム・アドレスは珍重されるものもあるため、権利譲渡のエスクローサービスは重要だが、従来存在していなかった。そのため、売り主・買い主は、信頼に基づくか、個別に作成されたスマートコントラクトまたは弁護士が提供する法的契約に頼る他なかった。

ENS開始以来、過去6ヶ月で、.ethの名前は、時には天文学的な金額で落札された。とりわけ高価だったものとして、exchange.ethが 6,660ETH(609,000米ドル、約7000万円)、foundation.ethが 300ETH(27,000米ドル、約300万円)、weather.ethが101ETH(9,000米ドル、約10万円)等がある。

ethアドレス購入は、多くの場合、転売または「占拠」によって利益を上げる目的で行われている。.ethの転売市場は、多くの投機家が目論んでいるように、大きな可能性のある市場なのだ。さらに、現行形式のENSシステムがアドレス名の「不法占拠」を奨励しているとの批判もある。

初期のインターネットバブルの頃の2000年代初頭の「pets.comドメイン名論争」の現代版ともいえるこの現象。そこから利益を得ようとする投機家には事欠かない。

初のENSドメインマーケットプレイスも登場

初のパブリックENSマーケット、Name Bazaarが最近、サービスを開始し新たな .ethアドレスの所有権譲渡方法を提供した。このプラットフォームでは、イーサリアムのアドレス所有者は完全にトラストレス(信頼のおける第三者を必要としない)な、スマートコントラクトベースのインターフェイスを使用して、容易にイーサリアムの名称の所有権を譲渡できる。

これにより、売り手・買い手の売却に伴う取引コストを削減し、よりスムースな取引が可能となった。所有権を譲渡するために必要なのは、MetaMaskまたはParityブラウザの拡張機能によるイーサリアムのアドレスだけだ。

また、ENSドメインは米国版2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)ともいわれるレディットという巨大掲示板の ENSMarketスレッドで取引することも可能だ。 英文記事作成時点で、申し込み人数は300人を超え、ENSドメインの販売を目論むのは数百人に上る。

現在全世界でに2900を超えるDNSドメインレジストラ、つまり通常使用される標準的なウェブアドレスのプロトコルが存在する。

イーサリアムがより多くの人に採用されるようになれば、ENSドメインレジストラの潜在マーケットもさらに拡大するだろう。