ブロックチェーン技術にフォーカスしたシリコンバレーのスタートアップ、Chainが、オープンソースブロックチェーンプロトコルである、Open Standards 1(OS1)のリリースを発表した。
OS1は、過去18ヵ月間、Visa、Nasdaq、Citi、Fidelity、Capital Oneなど数々の金融機関と連携し開発が進められてきている。
VCのバックアップにより、4500万ドルの資金調達に成功しており、ローンやドルなどの既存のアセットを二重使用不可能且つ簡単に送金可能なブロックチェーン・レコードに換え、資産をデジタル化することで無記名証券化してしまおうという狙いがそこにある。
その技術は、密かに先月、Nasdaqのタイムズスクエアのオフィスで開かれた、Chain Partner Summitにて披露され、総勢100人のエグゼクティブたちが、ドルがデジタルマネーへと変わる瞬間を目撃している。相互運用性を確保するため、オープンソースとして現在は公に公開されている。
世界的な金融機関との連携
OS1は、世界的な金融機関と密に連携し、何か月にも渡る”試行錯誤”の繰り返しを経て設計されリリースに至っていると、Visa、イノベーション&戦略的パートナーシップ、執行副社長、Jim McCarthy氏は語る。「大半の金融機関が、この技術を市場へと持ち込むにはほど遠いような状態です」と、ChainのCEO、Adam Ludwin氏は語っており、Consensus 2016では、さらに具体的に次のように述べている―
「これは、特にハイスケールな金融市場に向けたセキュアなブロックチェーンプロトコルです。誰にも手が届くように作られた物ではありませんし、どのような問題も簡単に解決出来るような代物ではありません。これはハイスケールな金融市場のみを活性化させ、アセットをデジタル化し、そこに移動させることが出来る、そのような形の物です」
OS1は、毎秒何万ものトランザクションを処理するキャパシティを持った、特定の権限が付与されたバリデータ (ノード)上で、簡易ビザンチン・フォールトトレラント性 (SBFT)を持つコンセンサスシステムを利用している。
ゼロ知識証明
プライバシーは、ネットワーク全体がトランザクションの整合性を検証出来るようにすると同時に、取引をする当事者以外が取引金額を閲覧できないようにする、ゼロ知識証明という情報伝達手法を利用することで確保されている。
所有権は、契約とプログラム完了のチューリングをサポートする仮想マシン内でオペレートされる、スマートコントラクトを通してプログラム可能なアセットと、暗号化されたメタデータを通して確立される。
既に、シティ・ベンチャーズCEO兼Citiチーフ・イノベーション・オフィサーを務めるDebby Hopkins氏と共に、大手の金融機関によって利用されており、彼曰く、「ChainによってCitiは通貨、決済など、顧客に提供するブロックチェーンアプリケーションの模索が可能になっている」という。
Nasdaq執行副社長兼CIOであるBrad Peterson氏は、NasdaqはOS1の開発に”民間市場証券や、議決権の代理投票、手形交換など、様々なユースケースを通して”参加していると述べている。
ステート・ストリートにあるEmerging Technologies専務取締役、Hu Liang氏は、「Chainのプロトコルは、我々が考える最も複雑なユースケースの幾つかをサポートしている」と述べている。
フィアット・マネーのブロックチェーンへの統合
我々は未だブロックチェーン製品が市場でヒットするのを待ち望んでいる状態だが、OS1によって、ブロックチェーンがどのように承認を得て動作可能なのか、という今のところの最も明確な青写真が提供されていることは確かだ。最初に、Chain Coreのノードを通じて、金融機関はブロックチェーンネットワークへのアクセス許可が認められ、そしてそれが有効化されるか、アセットが発行されるに至る。ビットコインなどの新たな通貨を生成したり、新たなアセットを作り出す代わりに、既存のドルや他のローンなどのアセットがブロックチェーン上に移行される。
その時点で、一秒も経たないうちに簡単に決済情報を転送することが可能で、とあるプレスリリースによれば、コストの削減や効率性の向上、より高いレベルでの作業の自動化など、多くの利益が金融機関にもたらされるようだ。Ludwin氏によれば、”アセットやデジタル金融サービスがソフトウェア化する” ような物だという。
次の論理段階が金融機関によって踏まれるのかは定かではない―ネットワークを個人に対してオープンな物にし―おそらくSPVのウォレットを通して、同時にバリデータに権限を与えたままの状態にしておくのだろう。
この技術はまだ非常に新しい物であるため、個人が認可されたネットワークにアクセス出来るようなインフラの構築にはまだ時間がかかるだろう。
しかし、ブロックチェーンがメインストリームになれば、Microsoftがかつて、各家庭に一台コンピューターがあることが当たり前である時代をもたらしたように、おそらく現在我々はターニングポイントに差し掛かっているといえるだろう。丁度当時と同じように、オープンソース VS プロプライエタリ・ソフトウェアの論争が再燃するかもしれないし、今回に関して言えば、承認が必須なシステム VS 承認の必要のないシステム、というような論争がもう既に始まっているため、今後数か月、数年でさらに論争が激化していく可能性がある。