米証券取引委員会(SEC)は4月16日、暗号資産のカストディ(保管)をテーマとした同委員会のラウンドテーブルに、業界関係者が参加すると発表した。出席者は、クラーケン、エキソダス、アンカレッジ・デジタルといった企業の幹部だ。
通知によれば、ラウンドテーブルにはSECのヘスター・ピアース委員、キャロライン・クレンショー委員、マーク・ウエダ委員長代理、そして暗号資産タスクフォースのチーフ・オブ・スタッフであるリチャード・ギャバート氏が参加する予定だ。業界側からは、クラーケンの消費者事業・製品担当副社長マーク・グリーンバーグ氏、アンカレッジ・デジタルバンクのチーフリスクオフィサーであるレイチェル・アンダリカ氏、エキソダスのチーフリーガルオフィサーであるヴェロニカ・マクレガー氏が名を連ねている。さらにウィズダムツリー、フィデリティ・デジタルアセット、ファイアブロックスの代表者も参加予定だ。
SECの暗号資産タスクフォースを率いるピアース委員は次のように述べた。
「カストディの問題は、暗号資産を現行の規制枠組みに統合しようとする上で、最も困難な課題の一つであり、SECとしても真剣に取り組むべき重要な論点だ」
また注目すべきは、4月25日のイベントにおいてウエダ氏が「委員長代理」として記載されていた点である。米上院はすでに4月9日、ポール・アトキンス氏を次期SEC委員長として承認しているが、記事執筆時点で同氏は正式に就任しておらず、SECの公式サイトにも現委員としては掲載されていない。
今回のラウンドテーブルでは、投資会社におけるカストディおよびブローカーディーラーに関する議論が予定されている。2024年1月に仮想通貨ETFが承認されたことを受け、米国内でのデジタル資産カストディ需要は拡大しており、BNYメロンのような老舗金融機関も関心を示している。
2025年1月にドナルド・トランプ大統領が就任し、ゲーリー・ゲンスラー前委員長がSECを去って以降、SECは暗号資産業界に対してより前向きな姿勢を見せている。特定の執行措置を取り下げたり、デジタル資産に対する規制権限の拡大を巡る訴訟を断念したりする動きが見られる。
タスクフォースによる初回のラウンドテーブルは3月21日に開催され、トークンの証券性が主な議題となった。4月11日には、暗号資産取引に適した規制の設計に関する議論が行われた。
DOGEがSECに“侵入”?
今回のラウンドテーブル開催と並行して、イーロン・マスク氏が立ち上げた「政府効率化省(Department of Government Efficiency、通称DOGE)」が、SECのシステムやデータにアクセスしたとの報道も浮上している。
ウエダ委員長代理は、DOGEによるアクセス要請に対して反発しているとされる。なお、DOGEは正式な政府機関ではなく、米国国際開発庁(USAID)や消費者金融保護局(CFPB)に対する“人員整理”の動きで批判や訴訟にも直面している。
マスク氏がSECにも同様の「効率化」アプローチを適用しようとしているかどうかは、現時点では明らかではない。