「インターネット選挙は科学的な見地からセキュリティへの懸念がある」。米国科学振興協会(AAAS)が4月9日に州知事宛に書いた手紙の中で警告した

新型コロナウイルスの収束が見えない中、選挙実施に対する懸念の声が高まっている。米国では日本のように握手や選挙カーを用いるなどの特徴はないが、大規模集会や多くの観覧者を集めたテレビ討論会などが特徴だ。人との接触を避けるためにインターネット選挙の推進を求める声は両国で出ている。

しかしAAASは、インターネット選挙の実施は時期尚早とみている。

「現時点でインターネット投票は米国において安全な解決策ではないし、考えられる将来でもそうはならないだろう」

AAASは、投票操作が発見されない可能性やサーバーに対する攻撃やマルウェアによる侵入、大規模なプライバシー侵害などが起こりうると述べた。AAASは、代わりに郵便による投票や期日前投票の拡大で対応するように訴えた。

「ブロックチェーンも解決策にならず」

またAAASはブロックチェーン技術が解決策になるとは思えないとの立場を示した。

「もしブロックチェーン構造が使われたら、どのコンテンツが保存されるのか、どのようにブロックチェーンが公共へのアクセスのために復元されるのか、どのように投票が最終的に耐久性のある紙での記録に移動されるのかなど、深刻な難問に直面する。どんなインターネット選挙であっても上記のような懸念を払拭できると示す科学的・技術的な証拠はない」

さらにAAASは、ブロックチェーンがインターネット選挙の解決策にはならないだけでなく、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の2018年の報告によると、「悪意を持った行為者にとって攻撃対象を増やす」と酷評した。