シンガポールに本拠を置く暗号資産取引所のフィメックス(Phemex)が、準備金証明を開示した。ユニークなのは、各ユーザーが自身の残高が同社の準備金を保管するコールドウォレットに1:1で存在しているかを確認できる新機能も同時にリリースしたことだ。

暗号資産情報サイト最大手のコインマーケットキャップの11月18日付の情報によると、フィメックス(Phemex)は現物取引で世界24位、デリバティブ取引で17位だった。デリバティブ取引では今資金保全面で懸念されているクリプトドットコムより上位に位置している。また週間のサイト訪問者数では世界トップ10位に入るなど、一定の認知がある取引所だ。

同取引所は顧客資金を全てコールドウォレットで保管するなどこれまでも顧客資産保全に力をいれてきたが、今回FTXの劇的な破綻をうけて、準備金証明を開示することをいち早く公表していた。

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フィメックス(Phemex)は企業経営上のガバナンスにも注力しており、利益相反をうむトレーディング関連会社も運営していない。また、破綻したFTXが発行して借り入れ担保にしていたようないわゆる「取引所トークン」を発行しないポリシーだ。

「顧客に提供する価値は取引所トークンではなく、より良いプロダクトやサービスをつくっていくことから創造していく」(同社広報ディレクター タイラー・ロッセル氏)

全ての顧客資産をコールドウォレットで保管

フィメックス(Phemex)は当然ながら安全性とセキュリティを最重視している。ただし同社広報ディレクターであるロッセル氏によると、こだわるのは「安心感」のみならず、各ユーザーが自身の残高がきちんとコールドウォレットで保管されているかを検証できる仕組みだ。

そもそも同社では今回のFTX事件に先立って『階層的決定論的コールドウォレット』を実装していた。これは、各ユーザーに個別のコールドウォレットデポジットアドレスを割り当てるというものだ。これならどんぶり勘定になることはない。

新機能「プルーフ・オブ・リザーブ」ページ

フィメックス(Phemex)が顧客から預かるすべての暗号資産は、オフライン署名を介して当社のマルチ署名コールドウォレットに定期的に集められる。口座からの暗号資産の引き出しもオフライン署名を介して処理されるため、すべての資産は100%コールドウォレットに保存され、すべての操作はオフラインで実行されるという。

1:1の準備金保有を開示

今回フィメックス(Phemex)が開示した準備金証明によると、同社は11月20日時点で以下の暗号資産及びステーブルコイン等を保有している。

  • BTC:1869.02827575
  • ETH:4818.29782431
  • USDT:19246878.39554316
  • USDC:6955936.27416672
  • USD in Trading:46524170.1606

また顧客からの預り金=負債表も公開しており、上記残高と一致していることがわかる。

さらに新機能「プルーフ・オブ・リザーブ」ページにて、各ユーザーのダッシュボードにある「ハッシュクライアントID」を入力すると、個人の残高がコールドウォレットで準備金として保管されていることが確認できる。

ちなみに準備金証明の手法としては顧客残高をすべて記録し、暗号化された「マークル木」に変換する。これによりデータが匿名化されるが、顧客残高と取引所が保有する資産の合計を比較することができる。「マークル木」とは大きなデータを要約する、ビットコインにも使われる技術だ。

FTXは今回事件が明るみになる前から密かに破綻していたわけだが、ユーザー残高レベルの「準備金証明」が業界スタンダードになれば同様の事件を再発する一助となると見られる。

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