最近アップル社CEOであるティム・クック氏は、「技術に対する我々の見方を変えるプロダクトというのが存在する」と述べた。同社は「空間コンピュータ(Spatial Computer)」と位置付ける未来的なスキーのゴーグルのようなデバイスを発表したが、それも一つの候補なのかもしれない。

新しいデバイスを発表したアップル社のメッセージは明確だ。

「スマホとPCの後にくるのはバーチャルと拡張現実の時代だ。そこでは我々の体験は2次元スクリーンに限定されることはなく没入感のある3次元の世界に広がる」

クック氏は、「まるで魔法のような体験」と表現した。

メタ社はメタバース事業で大きな損失を出しているが、多くの人の印象とは対照的に、メタバースは死んでいないのが真実だ。インターネット普及にスマホが大きな役割を果たしたのと同じように、拡張現実と仮想現実のヘッドセットは「空間コンピューティング」を普及させるだろう。

空間コンピューティングにおけるルール形成

空間コンピューティングにおいて、没入感溢れる映画を見たり、同僚と会議室で白熱した議論をしたり、次世代のゲームをしたりと人々は広範囲の体験をすることができる。キラーユースケースは何になるだろうか?

そのような仮想世界は、仮想通貨やNFTが普及する上で上質な土壌にもなるだろう。Play to earn、分散型ID、ブロックチェーンゲーム、トークンを使ったeコマースなど、前例のないユースケースが今後増えると考える。

アップルの発表に対する反応は2021年のメタ社に対する反応と大きく異なっているようだ。当時、仮想通貨業界はメタ社に対して、トップダウンのメタバース世界の支配は仮想通貨の哲学に反すると批判した。アップルの発表に対しては同様の反応は起こっていないようだ。

Web3の未来にとっては大きな潜在力がある動きだが、「Web3」、「分散化」、「NFT」もしくは「ブロックチェーン」といった言葉が不在であることには注意しないといけない。アップル社は最近NFTのアップストア内での購入に30%の税金をかけると述べた。

プライバシーの側面では、アップルの新しいゴーグルによる多くの個人情報獲得には注意が必要だとLedger CTOのチャールズ・ギルメットは警告した。

メタバースの世界を形作る上でアップルの影響力は大きい。ルール作りでも発言力を持つかもしれない。空間コンピューティングは、オーナーシップと自由、プライバシーといった重要な要素に取り込む必要があるだろう。

著者 Milan ORBAN, News & Thought Leadership Lead, Ledger

Ledgerは 2014年に誕生した仮想通貨のハードウェアウォレットの会社。拠点はフランスにあり、現在はLedger Nano XとLedger Nano S+、Ledger Nano Sという3種類のハードウェアウォレットを製造・販売している。Ledger Nano S +は2022年4月4日発売の最新作。Ledger Nanoシリーズに接続して使うソフトウェアであるLedger Liveを、全ての仮想通貨サービスが1箇所に集まるプラットフォーム、いわば「Web3.0のハブ」にすることを目指している。公式サイト:https://www.ledger.com/ja