【訂正】「2019年第1四半期」とあるのは、「2019年度第1四半期」の誤りでした。タイトル及び原稿内部の表記を2019年度第1四半期に変更しています。(2018年12月13日 19:00)

マネックスグループは12日、都内でメディア向け事業説明会を開催し、米国子会社のトレードステーションが2019年度第1四半期に仮想通貨トレーディング事業を開始することを明らかにした。またアジア・パシフィック地域でイニシャル・コイン・オファリング(ICO)やセキュリティ・トークン・オファリング(STO)などの新規ビジネスにも取り組む考えを示した。

コインチェックの仮想通貨交換業の登録取得については、登録はあくまで金融庁の判断としつつ、「しっかりとしたオペレーションを行い、有言実行の姿を見てもらことが大事」(コインチェックの勝屋敏彦社長)と述べた。

米国での仮想通貨事業は来年第1Qに

トレードステーションはマネックスグループ傘下で米国でオンライン証券事業を手掛けている。トレードステーションのジョン・バートルマン社長は、事業説明会の中で、「数か月にわたり準備してきた仮想通貨トレーディング事業を19年度の第1四半期に開始することになった」と語った。

トレードステーションは、12月6日に米仮想通貨取引所ErisXのシリーズBの資金調達ラウンドに参加。ErisXはこの資金調達で、トレードステーションやナスダック、フィディリティ、ビットメインなどから2750万ドル(約31億円)を調達した。バートルマン氏は「Eris Xといった新しい企業と連携して、仮想通貨事業を展開していきたい」と述べた。

また「デジタル・セキュリティ(証券)やデジタル・コモディティ(商品)の分野にも可能性がある」と述べ、デジタルアセット分野でのビジネス展開を今後進める考えを示した。

【追記】
バートルマン氏は、コインテレグラフ日本版の単独インタビューに答え、米国での仮想通貨トレーディング事業で「まずはトップ5の仮想通貨」の取引を始める予定だと話した。「まだ最終リストの作成中」としながらも、ビットコイン(BTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)、イーサリアム(ETH)、そしてリップル(XRP)を候補にあげた。

また「米国すべての州でMoney Transmitter License(送金事業者ライセンス)の取得を目指している」ことを明かし、「(送金事業者ライセンス)をすぐに取れる州から事業を始める」と述べた。米国で通信を使ってマネーの送金・受金を行う業者は、送金事業者ライセンスを州ごとに取得する必要がある。バートルマン氏によると、トレードステーションは個人投資家が中心のコインベースやロビンフッドと異なり、機関投資家などプロフェッショナルな投資家を対象にする予定だ。

さらにバートルマン氏は、ErisXに出資した狙いについて「ErisXこそ本当の取引所」と強調。「直接的な仮想通貨交換業と先物市場を統合」することで強固なマーケットを構築する存在と指摘し、「株式市場などでよく見られる構造」を持っていると解説した。ErisXは、2019年度の第2四半期までにビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)のスポット取引をはじめ、米商品先物取引委員会(CFTC)の認可を待って先物取引を開始する見込みだ。

コインチェックは着実に事業再開

コインチェック事業については、コインチェック社の勝屋敏彦社長が説明。10月末の新規口座開設の再開や11月末の全取扱通貨での取引再開など、着実に業務再開を進めていることを強調。「3月22日に提出した業務改善計画に基づき、しっかりとオペレーションを行っている」とし、ガバナンスやサイバーセキュリティへの強化を進めていると語った。

具体的には、ユーザーサポートでは100人体制で臨んでいるほか、マルチシグニチャによる仮想通貨管理の強化、マネーロンダリング対策(AML)への対応を進めてきた点を説明した。

松本大CEOも「(登録の時期について)見通しはない」とし、「(登録に向けて)淡々と準備をしていくだけだ」と語った。

コインチェックの勝屋社長によると、「60数名のエンジニアを要し、ブロックチェーンのエンジニアを数多く抱えているのがコインチェックの強み」だ。「コインチェック創業者の和田晃一良はスーパーエンジニアなので、彼と一緒に働きたいというエンジニアは多い」という。将来的には交換業に限らず、クリプトアセット(暗号資産)事業を進めることにも意欲を見せた。

交換業以外でのビジネス展開も

マネックスグループの松本大CEOは「日本では直接投資が進まず、一番大切な屋台骨であるが、逆風が吹いている状況」と語る一方で、「トレードステーションによる米国事業は絶好調であり、クリプト事業も大きな可能性を占めている」と、米国事業・仮想通貨事業への期待感を示す。

現在の仮想通貨相場については「市況の低迷で、短期的な投機家が市場を退場することになっている」とし、新しいアセットにおいては歴史的に起こったことだとみる。松本氏は、「長い目でみれば、仮想通貨の未来を信じる人々が市場に残ることになり、しっかりとしたマーケットが形成されるはずだ」と話す。決済やスマートコントラクトなど、ブロックチェーン技術を使った新しいビジネス展開が期待できると強調し、仮想通貨の将来性には強気の姿勢を崩さない。

どんな金融商品でもトレーディングから始まり、そこから様々なサービスが作られてきた。クリプトについても、もっと社会で有用性が実感できるサービスがあるはずだ。我々がそのサービスを作っていきたい。実社会での利用では様々な企業とのコラボレーションが期待でき、我々はそのような仮想通貨ビジネスにおけるカウンターパートナーとなっていく。

事業説明会では、アジア・パシフィックでも仮想通貨事業を展開する考えを示した。コインチェック社と連携しながら、アジア地域でイニシャル・コイン・オファリング(ICO)やセキュリティ・トークン・オファリング(STO)などの仮想通貨ビジネスの新規開拓に取り組んでいく考えだ