仮想通貨モネロ(XMR)の研究チーム「モネロ・リサーチ・ラボ(MRL)」は1月6日、仮想通貨送金時などに複数人数の公開鍵を束ねて電子署名を行う「リング署名」において、新たな手法を用いる「Triptych(トリプティック)」に関する文書を公開した。進行中の研究ではあるものの、XMRの匿名化コアメカニズムにおいて、プライバシー保護機能を大幅に改善する可能性があるという。

XMRでは、送金元秘匿のため、仮想通貨送金時などに複数人数の公開鍵(最低値はダミー含めて11個)を束ねて電子署名を行う「リング署名」という手法を用いている。電子署名が有効な場合、どの公開鍵に対応した秘密鍵で電子署名が行われたのか、分からないというものだ。また、送金額や支払額などの難読化には「リングCT(Confidential Transactions。機密取引)」、受取人のアドレスを隠す手法にはステルス(使い捨て)アドレスを利用している。

トリプティックの特徴は、リング署名における公開鍵の数に応じてバイト容量を対数的にスケーリングすることにある。これにより、大きなパフォーマンスの問題を発生させることなく、リング署名における公開鍵の数を増やせるという。リング署名を利用したトランザクション(取引)承認にかかる時間は、公開鍵の数により変化し、トランザクション承認を行うノード(コンピューター)に負荷を強いる可能性があるそうだ。

米SNS「レディット」では、MRLのサラン・ネーター(Sarang Noether)氏が、511個の公開鍵を用いた場合、標準的なXMR環境におけるトランザクションに要した承認時間(推定)は約45ミリ秒になると説明した。予備テストによると、現在のXMRの認証時間に匹敵するものという。

コインテレグラフがネーター氏に実装可能なスケジュールを尋ねたところ、同氏は以下のように答えた。

「トリプティックは正式なレビューを受けていない初期段階のため、トリプティックを実装したプロジェクトの可能性については、推測できない」

またネーター氏は、トリプティックを改善したバージョンに触れ、「同じ検証で複数鍵を使用して署名できるようになるが、全体的なトランザクションがさらに小さくなる」と述べた。ただし現状では技術的な障害が存在し、さらなる研究を要すると明かした。さらに次のように述べた。

「公開鍵の数を大幅に増やすことは、正しい方向への大きな1歩になるだろう」


翻訳・編集 コインテレグラフ日本版