欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、ユーロ圏が独自のデジタル通貨を発行する必要があるかについてまもなく判断すると話した。9月11日付のブルームバーグが報じた

ラガルド氏は、9月10日夜にドイツのブンデスバンクとのオンラインイベントでユーロ圏のデジタル通貨発行について言及。ユーロ圏がデジタル通貨への世界的な移行と支払いにおける世界の変化の中で取り残されないようにするために、そのようなイニシアチブは重要かもしれないという見方を示した。

「ユーロシステムは、デジタルユーロ導入についてこれまで意思決定をしてこなかった。しかし、他の世界の中央銀行と同様に恩恵とリスク、運用面での課題を検討している」

その上でラガルド氏は、ユーロシステムのタスクフォースの報告が「今後数週間」であるだろうと述べた。

デジタル通貨めぐる政治的な駆け引き

デジタル通貨開発競争の1つの焦点は、欧米や日本など「自由主義」連合が中国によるデジタル人民元に対抗できるかどうか。すでにテスト段階にあるデジタル人民元だが、欧米や日本がデジタル通貨でまとまれるかがデジタル人民元の普及阻止に影響するとみられている。

Xcoin代表で作家の竹田恒泰氏は、コインテレグラフ ジャパンとのインタビューの中で、中国がデジタルドルやデジタル円など、人民元以外のデジタル通貨を発行する事態に対抗する構想がないことを懸念している

「(中国は)デジタル人民元を出すだけでなく、デジタルドル、デジタル円、デジタルユーロを出してくるのではないか考えている」

ただ一方で中国が「自滅」する可能性も指摘されている。

Fisco取締役の中村孝也氏は、コインテレグラフ ジャパンに対して、中国政府が長年掲げてきた「中国の夢」がデジタル人民元の普及の足かせになってしまうかもしれないという見方を示した

「中国の夢」とは、2012年に習近平国家主席が打ち出した政治スローガン。「中華民族の偉大な復興」を「近代以降の中華民族の最も偉大な夢」として掲げてきた。

最近の香港国家安全維持法による事実上の香港併合について反発する自由主義諸国は多く、デジタル通貨普及の鍵を握るのは技術開発競争だけでなく政治面での駆け引きになってきている。