大手商社の丸紅は20日、米国のLO3エナジーと共同で、日本国内でブロックチェーン技術を用いた電力取引の実証実験を開始すると発表した。LO3社は米国や欧州などでピアツーピアの電力取引プラットフォームを構築した実績を持つ。LO3社にとって初のアジアでの事例となる。
今回の実証実験では、電力消費者と発電所にブロックチェーン機能を搭載したメーターを設置する。電力消費者は丸紅グループの施設や丸紅新電力の顧客先。また発電所は丸紅が国内に保有する発電所だ。
実験では、発電所で発電された電力を、電力消費者がバーチャル市場経由で購入したい価格を専用のモバイルアプリに設定し、購入することを模擬的に行う。
今回共同で実証実験を行うLO3社は、ブロックチェーン技術を活用した電力取引プラットフォームの構築を手掛ける企業だ。今回の実証実験は、同社にとってアジアに初めて進出するケースだ。
LO3社はニューヨークのブルックリン地区でブロックチェーン技術を使ったピアツーピア型の電力取引システム「ブルックリン・マイクログリッド」を2016年から始めている。またドイツの大手企業シーメンスとも提携した実績を持ち、米国や欧州、豪州で電力プラットフォームを開発してきた。
丸紅の横田喜明電力本部長は、リリースの中で、LO3社が海外で実施しているプロジェクトについて「消費者がより多くのエネルギーを選択できるようになり、エネルギー利用の効率が大幅に向上する可能性がある」と評価する。
今回のLO3と提携した実証実験により、日本でブロックチェーンによる電力取引を導入する際のケーススタディになり得ると語る。
「今回のプロジェクトは、この種のネットワークが日本でどのように機能するのかを評価し、いつ・どのようにこの種のプロジェクトを幅広く実行できるのかを判断する事例開発につながるだろう」
大手商社で相次ぐブロックチェーン活用
大手商社ではブロックチェーンを活用する動きが広がっている。三井物産は、三井住友銀行とR3の貿易金融プラットフォーム「マルコポーロ」を活用した実証実験を行った。
また伊藤忠は2月はじめ、インドネシアにおける天然ゴム原料調達サプライチェーンを対象に、ブロックチェーン技術を使ったトレーサビリティシステムの構築に向けた実証実験を実施すると発表した。これは、環境問題への配慮から、天然ゴム生産者やタイヤメーカーなどにおいて、サプライチェーンの透明化向上に対応するものだ。