2018年中の仮想通貨を使った不正送金は169件にのぼり、被害額は総額で約677億3,820万円にのぼった。2018年には仮想通貨取引所コインチェックでのNEM流出事件や、テックビューロでの仮想通貨流出事件が発生したことで金額を押し上げた。警察庁が19日に公表した「令和元年 犯罪収益移転危険度調査書」で明らかになった。

不正送金の件数は17年比で20件増となった。被害額は17年は6億6,240万円だったため、100倍以上に増えた。コインチェックの事件では、約580億円相当の仮想通貨が流出。テックビューロが運営する仮想通貨取引所Zaifでの事件は約67億円相当の仮想通貨が流出した。

警察庁は、「仮想通貨を取り扱う事業者において、事業規模が急激に拡大する中、マネー・ローンダリング等の各種リスクに応じた適切な内部管理体制の整備が追いついていなかったこと等が要因」と分析している。

2017年4月から18年末までの間の仮想通貨を使ったマネーロンダリングが疑われる取引の届出件数は、7,765件だった。架空名義などいによる取引が多く認められたという。

具体的な事例としては、次のようなケースを紹介している。

・不正に取得した他人名義のアカウント及びクレジットカード情報等を利用して仮想通貨を購入後、海外の交換サイトを経由するなどして日本円に換金し、その代金を他人名義の口座に振り込んでいた事例

・特殊詐欺の犯罪収益が振り込まれた銀行口座から現金を払い出し、ネット銀行に開設された仮想通貨交換業者の口座に振り込み、仮想通貨を購入し、その後、複数のアカウントに移転させていた事例

実際に仮想通貨を使ったマネーロンダリングに悪用された取引の件数は、16~18年で3件のみだった。

出典:令和元年 犯罪収益移転危険度調査書