日本で初めてのブロックチェーンを用いたネット投票が20日、つくば市で始まった。つくば市の支援事業のプロジェクトを選ぶ投票に活用。つくば市の五十嵐立青市長は「ブロックチェーン技術により、ネット投票の改ざんの問題を解決できる」と期待を寄せる。

 今回のネット投票は、つくば市が実施する「Society 5.0 社会実装トライアル支援事業」のプロジェクトを選ぶのに使われる。

 ネット投票は、つくば市に設置された専用の投票用のパソコンに接続されたカードリーダーにマイナンバーカードをセット。認証画面で電子証明書の署名用パスワードを入力して本人確認を行い、投票画面でプロジェクトを選択する。

つくば市のブロックチェーン投票の投票選択画面(パイプドHD提供)

 つくば市の五十嵐市長は「ネット投票と最大の課題は情報の信頼性。本人確認と改ざん防止の仕組みがカギとなる」と指摘し、マイナンバーカードとブロックチェーンを組み合わせることで、この課題に対応できるとしている。

 また将来的にネット投票が本格化すれば、コスト削減も期待できるとしている。五十嵐市長は「開票作業にかかる人件費は、数千万円にものぼる。ネット投票が実現できれば、劇的なコスト削減にもなる」と話す。

 今回の実証実験を企画したVOTE FOR(東京都港区)の市ノ澤充社長によれば、今回のブロックチェーンは3つのノードを設置。それぞれのノードのデータを記録し、データを検証する。市ノ澤社長は「今回は小規模な実証実験のための最小のノード数で行った」と説明する。

 つくば市のネット投票は、つくば市役所に設置した専用のパソコンでしか行えない。これは「マイナンバーカードの認証や、データの暗号化をするためのプログラムが重く、誰でもダウンロードして手軽にできる状態ではないため」(市ノ澤氏)。また処理にも5~6秒ほどの時間がかかる。今回の実証実験を受け、アプリを通じてスマホやパソコンから手軽に行える仕組みも作っていきたいとしている。

 今回の実証実験はつくば市の事業の一環だが、五十嵐市長は今後もネット投票など、行政でのブロックチェーン技術の応用を進めていきたいという。「つくば市にはJAXAもある。将来的にブロックチェーンを使って宇宙から投票できるようにもしたい」と意気込む。

 ただ今後ネット投票を実施する上でも課題は残る。五十嵐市長は「本人確認のためにマイナンバーカードを使用したが、マイナンバーカードの普及率は未だ10%台。また本格的に選挙で使うとなれば、セキュリティのシステムの構築や、管理者の信頼性なども解決する必要がある」と話す。

 今回のブロックチェーン投票はマイナンバーカードがあれば、つくば市民でなくても投票可能。20日から24日までつくば市役所で投票できるほか、28日の最終審査の際にも会場の「つくばカピオホール」で投票できる。

 ブロックチェーンを用いた投票は、世界でも取り組みが進んでいる。7月には「クリプト・バレー」とも呼ばれている、スイスのツーク市で住民投票にブロックチェーンが活用された。また米国ウェストバージニア州でも予備選挙を行う際、ブロックチェーンとスマートフォンを組み合わせた投票の実証実験が行われている