日本経済新聞は12日、ビットフライヤーが顧客の本人確認を終えていないにもかかわらず、売買を可能にしていたと報じた。日経によれば、犯罪収益のマネーロンダリングに悪用される恐れがあるとして、金融庁が取引形態の見直しをビットフライヤーに求めたという。ビットフライヤーも同日、対応を発表した。

 一般的に取引口座を開設する際には、氏名や住所、生年月日、身分証の画像などの個人情報をインターネット経由で提出してもらう。交換業者は、個人情報の内容を審査し、口座パスワードなどを記載した書類を本人限定受け取りで郵送する。取引は書類受け取り後から、開始される。

 日経によれば、ビットフライヤーは書類の郵送に先立ち、口座パスワードを電子メールで伝えており、顧客は書類を受け取る前から、仮想通貨の購入や売却、他の口座との間での入出金などが可能となっていた。郵送した書類が、本人不在で戻ってきた場合でも、発送から30日間は取引ができるようになっていたという。

 これらの口座が「資金洗浄に使われたとみられるケースもあった」と、日経は伝えている。

 これに対してビットフライヤーは、日経の報道は「事実と異なる」と反論。「郵送書類が宛先不明と判明した場合には、直ちに売買取引を制限している」としている。また日本円の出金については、口座情報を銀行ネットワークに照会しているほか、クイック入金による日本円の出金や仮想通貨の送付などは、「本人確認のための書留郵便の受取を含む取引時確認が完了するまで…制限している」と説明している。

 2017年4月施行の改正犯罪収益移転防止法について、「仮想通貨交換事業者に、口座の開設に当たっての顧客の本人確認を義務付けているが、本人確認の具体的な手続きは明記しておらず、書類送達前の取引開始も禁じていない」と日経は説明している。

 だが別の記事では「マネロン対策のため、取引開始を郵送書類の送付後とするのは当然だ」という、ほかの交換業者の声を紹介。ほかの交換業者と比較して、ブットフライヤーが郵送書類の送達を待たずに売買と送金できたと指摘し、「インターネット上に広まった評判の原動力となっていたのが、本人確認の不十分さと引き換えにした取引のスピード感だった」と書いている。

 ビットフライヤーは同日、26日付で本人確認を強化することを発表した。本人確認のための書留郵便の受取を含む取引時確認が完了するまで、いかなる場合においても日本円の出金、仮想通貨の送付などが行えなくする。また書類受取を含む取引時確認が完了するまでは、ビットコインを使って換金性の高い商品を購入できなくする。

 これらの変更は「犯罪による収益移転を防止する観点より関係当局と協議の上」で決定したと説明している。