仮想通貨のタックスヘイブン? プエルトリコの場合【米法務弁護士による寄稿】

ここに述べられている見解や意見は、あくまで筆者/寄稿者のものであり、コインテレグラフおよびコインテレグラフジャパンの見解を反映するものではありません。

 プエルトリコにとって、2017年は至難の年だった。まず2つのハリケーンが立て続けに襲った。救助活動は遅れ、アメリカ政府とプエルトリコ政府がその責任をなすり付け合った。現在でも電力が安定しているのは国内のたった60%。さらに、議会を通過したばかりの税制改革法案によれば、プエルトリコに子会社を持つ企業に新しい税率が適用される。

 それでも、プエルトリコを仮想通貨の新たなタックス・ヘイヴンと見る者もいる。さっさと荷物をまとめてプエルトリコへ引っ越すべきだと顧客にアドバイスしている税理士もいる。理論的には、プエルトリコに住まいを構えると、保有する仮想通貨を売却した場合に100%非課税になるという。素晴しい話だ。まずどこから手続きを始めたらいいんだろう?と思うに違いない。

 もし今述べたことが事実なら、多額の仮想通貨資産を保有する人の利益になるだけでなく、プエルトリコ経済にも恩恵がもたらされるだろう。しかし、実際にそう上手く行くのだろうか? 仮想通貨の税に関しては、いつも十分な注意が必要だ。

 自分は大丈夫と思っている人もいるかもしれないが、米歳入庁(IRS)は、仮想通貨の保有を特定し、査定し、何十億もの税金を徴収するための方策を講じつつある。米国やプエルトリコの税務当局が、仮想通貨の(何十億とは言わないまでも)何百万ドル規模の取引を全く見過ごすということは、控えめに言っても、かなり楽観的だと言わざるを得ない。

米政府は、プエルトリコに引っ越した後の仮想通貨売買にも課税するだろうか?

 一般的に言えば、納税者は、プエルトリコに住居を構えてから会計課税年度一年が過ぎれば、「プエルトリコ国内の収入」をIRSに申告する必要は無い。この点、問題が無いように思える。

 しかし、書類上だけでなく、実際にきちんと引っ越さなくてはいけないのだ。さらに、米国の課税対象ではなくても、いずれにせよIRSに売買取引について申告しなくてはいけない可能性がある。

 もちろんより重大な心配は、実際にプエルトリコに引っ越した後も、IRSが仮想通貨取引に課税するのかということだ。そんなことができるのだろうか? 「かつての米国居住者の財産」を巡る複雑な規則に従えば、その可能性はある。もしかしたらIRSはプエルトリコでの仮想通貨売買によって生じた利益の大半は米国の課税対象とすべきだと主張するかもしれない。例えば、15年にビットコインを購入して、18年にプエルトリコに引っ越した人を例にしてみよう。IRSは、ビットコインが値上がりしたのは引っ越し前だとして、売買で生じた利益のほぼ全額を課税対象とする権利があると言うかもしれない。そうすると、米国の課税を回避するためには、仮想通貨を売る前に10年待たなくてはいけなくなる。

 もしこの問題を裁判所で争った場合、IRSの主張に勝ち目はあるのだろうか? 税務の専門家には、勝ち目は無いと考えている人たちもいる。しかし、多額の税金がかかっているからには、慎重にならなくてはいけない。仮想通貨取引に対する徴税努力を強化しているIRSの態度は、納税者に敵対的なものになるかもしれない。価格が上昇して、もしかしたら何十億ドルもの価値がある仮想通貨の売買を、プエルトリコに引っ越して行えば、完全に免税されるという考えは魅力的だが、あまりに出来すぎた話だ。

プエルトリコの立場は?

 もう一方の当事者はプエルトリコだ。(引っ越し後の)プエルトリコでの仮想通貨取引は米国の課税対象ではないとIRSが認める完璧な世界をまず想定してみよう。

 プエルトリコ政府はこの取引に課税するだろうか? これについても、税務の専門家の中には課税しないだろうと言う人がいる。根拠として挙げられるのは、新しい住民のキャピタル・ゲイン(の含み益?)に対するプエルトリコの税制上の優遇措置だ。しかし、ここでも注意が必要だ。後で高くつく災難を避けるためにも、プエルトリコの税務の専門家にまず相談することが賢明だ。

 例えば、課税控除の対象になるのは、プエルトリコの「誠実な住民」になった後に生じた利益だけかもしれない。さらに、国家予算が不足し、国内経済も振るわない中で、不測の事態が生じる可能性もある。今のところ、プエルトリコで税を回避することが可能だとしても(それも実際には疑わしいが)、その状態が続くかどうかというのは慎重に考慮しなくてはいけない。

 何十億もの仮想通貨取引がプエルトリコで行われて、政府が売り上げに税を徴収しようとしない世界を思い描いてみよう。本当にIRSやプエルトリコの税務当局が、手を出さずに見ているだけなどということがあるだろうか?

 そうした世界が思い浮かべられるなら、プエルトリコはあなたにおあつらえの楽園だ。

ダシエル・シャピーロはサンフランシスコのウッド LLP(www.WoodLLP.com)の税務法パートナー、米公認会計士、元米司法省税法弁護士。