バンクオブアメリカは、以前取得した15の特許に加え、今月までにブロックチェーン技術に関する20以上の草案を米国特許商標庁に提出している。つまり、バンクオブアメリカはブロックチェーン技術に関する全ての特許をカバーし、100%完全にコントロールしようとしているということだ。一年前にもCoinbaseが同じ道を辿っている。
実際、数か月前にCoinbaseはビットコイン市場に関連するありとあらゆるもの、ビットコイン用のホットウォレット、ユーザープライベートキーの管理、コールドストレージ向けのビットコインプライベートキーの分配、即時取引、個人金庫、Eメールアドレスへのビットコインの送金、ビットコイン取引、チップボタン、ブロックチェーン上と非ブロックチェーン依存間での取引などを含む、様々な特許を申請しているのだ。
今回、コインテレグラフは弁護士に以下のような観点から調査を依頼した。
・匿名の人物(例えば我々が普段Satoshi Nakamotoと呼んでいるような人物)やグループによって発明された技術をどのように特許申請しオープンソース化するのか?
・今回の一件はビットコインやブロックチェーンを根絶やしにするための目論見ではないのか?
・もしそうだとすれば、どのように対抗すればよいのか?
つまるところ、バンクオブアメリカはブロックチェーン技術を盗み独占しようとしているのではないか、という疑問だ。
Coinlexの創設者兼ArezzoのCPA、AssobのディレクターであるStefano Capaccioli氏は次のようにコメントしている―
「バンクオブアメリカは今の時代にそぐわない古い礼節に従おうとしていると思います。イノベーションが増々オープンソース化され分散型のものへとシフトし始めている昨今、技術を一企業が独占してしまう特許登録のような制度は時代遅れだと私は思います」
また、Sian Jones氏との話では、この”技術の強奪”に関する話については意見を伺うことが出来なかった―
「何か特別な発明をした場合、特許を取れば、他の人間や企業に技術を渡さずにすみます。技術の独占権が得られるということです、そういう決まりになっています。いずれにせよ、一般的にそれは道徳的に正しい行動だと誰もが考えていることですので、別問題です」
「ビジネス(ブロックチェーン領域の内外)において、法律で認められていて、道徳的にも正しいと考えられていることであれ、企業は株主のために、その利益を最大限に得なければならないという義務を背負っています(常に他の利害関係者の都合を考慮する必要があります)が、それはつまり彼らが独占権を得ることが可能だということでもあります。それが”普通”だ、と皆言うかもしれません。しかしグローバルな金融機関がブロックチェーン技術もその限りではないと考えていることがどれだけ大きなことか、理解する必要があります」
と、コンプライアンスコンサルティンググループ、COINsultの創設者兼欧州仮想通貨ブロックチェーン技術フォーラム会長は語っている。
ビットコイン専門の弁護士で、フィンテックレギュレーション顧問会社、Diacle Limited のディレクターを務めるAdam Vaziri氏は次のように語っている―
「これは土地を強奪するようなものです、しかしうまくいけば、ブロックチェーン技術に関連するオープンソースやオープンスタンダードそのものには影響しないかもしれません。もっと具体的に言えば、私はR3が銀行のインターネット上の知的財産権に対する要求をいい方向に導く結果に繋がるのでは、と期待しています」
氏はさらにこう続ける―
「ブロックチェーンはこの10年を表す精神そのものです。誰もが皆自分のものにしたいとその所有権を主張してきました。しかし正直に言えば、(国際的に)特許権というのは実際には法整備と共に形作られてきたものなのです。つまり、本質的には特許権侵害の脅威は多くの企業にとって、技術をねじまげ、技術をライセンス化する口実になり得るということです―これは、積極的なIP戦略です。うわべだけ発明ということにしておいて、特許をペンディングさせておき、競争力をそいでいるのです。現実的に考えてみてください、もしあなたが素晴らしいアイディアを思いついたとして、ウォーレン・バフェットが提唱するようなやり方であなたがそれを実践したいとします―知的財産という要塞の周りに堀を築き上げ、競争力を完全に締め出すわけです。ビジネスに携わる人間は誰もがそうしようとするでしょう。
しかし特許と連携して何かをすることはできません。ですからどこかと共同で何かを実現したい場合、オープンソースだと銘打つことは重要なのです。標準設定を設け、それから独自の特許モデルを構築します。共同でビジネスを行うためにいくら必要で、どのような機関が関わるのか、によってその境目は変わってきます。AOLはemailのプロトコルを堀で囲い独占しましたが、のちにオープンソース化されました。教訓としてこういうことが言えます―”もしあまりにも大きな堀を築けば、人々はあなたが離れ小島で孤立していると考えるだろう”」
コインテレグラフの特派員としてはSatoshi Nakamoto氏に、現在の金融業界の構造上どのような企業でも、彼の発明や知的財産を特許申請し独占化することができてしまう現状について話を伺いたかったのだが、今回はその回答を得ることが出来ず原稿に間に合わせることができなかった。