Shivcharan Singh Maranさんは小さな家庭を持つ父親で、93歳で亡くなる以前に、500ルピー札で50,000ルピー、ドルに換算すると750ドル分の遺産を家族のために残していた。

しかし、インド準備銀行 (RBI) は、500ルピー札はナレンドラ・モディ首相の決定により既に廃貨済みであるとして、家族の資産両替を拒否した。

 

Shivcharanさんの息子であるMastanさんは、亡くなった父親の部屋を片付けている際に部屋のクローゼットに隠されていた500ルピー札の現金の束を見つけたのだという。Mastanさんと残された家族は、500ルピー札が廃止になった場合どういうことが起こるのか、Shivcharanさんから一切伝えられていなかったことに後から気付いたのだそうだ。

後に、地元の有名メディアNews18の取材で、Shivcharanさんが短期記憶障害を患っていたことがわかり、政府が課したインドの金融規制やその他の変化をShivcharanさん一家が一切認識してなかったことが判明している。

たとえ、Shivharanさんが500ルピー札と1,000ルピー札が廃止になるということを知っていたとしても、彼の持つ障害が家族とShivcharanさんの高額紙幣廃止の問題について話しあう機会を奪っていただろう。

 

インド準備銀行―廃貨はなかったことにはできない

 

家族の代わりに、Mastanさんは地元のインド準備銀行の支店に出向き、公式に古く無効となった紙幣から新しい紙幣へと両替したい旨を申し出たが、Mastanさんが状況説明をしたにも関わらず銀行側はこれを拒否している。

RBIの従業員はMastanさんに対し、インド政府が発行したパスポートを持ち、過去半年以上仕事などの目的で海外に住んでおり当時インド在住ではなかったインド人を除き、紙幣交換は出来ないと伝え、ニューデリーにあるRBI本部に現金を提出しない限り、古い紙幣を交換することはできないとMastanさんに伝えたという。

News18は、Mastanさんが報償として新札で父親からの50,000ルピーを受け取る別の方法を探していると伝えているが、RBIがそのような例外的な処置をMastanさんに行うことはかなり可能性が低いと思われる。

 

インドの人々はビットコインのような新たな選択肢を探し求めている

 

金の没収や廃貨によるインド国内の金融危機や経済の不安定化は、インド国民に対して大きな不安をもたらしている。

皮肉なのは、上記のような政策は犯罪者取り締まりを目的としてインド政府によって行われたことであり、それにも関わらずインドの一般市民の大多数にマイナスの影響が出ている点だ。

今週初めに、コインテレグラフは、インド国内でのビットコインの急成長を取り上げた"インドでビットコイン・ブーム―勢いは止まらず"と題した記事を掲載している。インド国内でセーフ・ヘイブンとして金に資産を変えることや、価値の保存的手段として現金を利用することはいよいよ非効率且つ運用が難しい状況となってきている。インドの人々が自らの富を守るためにビットコインのような選択肢を模索し出している事実は、徐々に顕在化してきている。