仮想通貨の取引高で世界トップ3に入る仮想通貨取引所大手Huobi(フォビ)のCEOである李林(リー・リン)氏が、香港で上場する桐成控股 (英文名パントロニクス) の議決権付き株式73.7%を取得したようだ。27日、香港株式取引所における公式開示がない状態で、複数の中国メディアが伝えた。非上場企業であるフォビのトップがコイルや充電器等を製造するパントロニクス社の上場株式を取得することで将来的には裏口上場を狙う可能性が指摘されている

今回李氏と同時にパントロニクス株を6.8%を取得したのは著名なファンド「裂変資本」で、中国政府の証券監督部門出身者や二次流通市場に詳しい人物が関わっていると見られる。

これを受け、フォビが発行するHTは27日夜、前日比で7.20%上昇した。

パントロニクス株の取引が一時停止となった今月22日のレートで換算すると、買収額は100億円弱とみられる。上場会社として一般向けに流通させなければならない25%を除き、目一杯買った形だ。

一見すると、同社の2017年度の純利益は1億円に満たないことから高い買収額に見える。だが厳しい上場審査を迂回できる香港の裏口上場の相場は数年前でも85億円以上ともいわれており、妥当なラインだと言えるだろう。

もし将来的にフォビが取引所業務を上場会社へ注入し裏口上場が実現すれば、国際金融市場へのアクセスと、上場会社としての信用力を手にする。

今から一か月前に、フォビの李林(リー・リン)CEOはインタビューで裏口上場はコンプライアンス要件上難しいとしながらも、「伝統的な金融の世界における上場の可能性は排除しない」としていた。

業界大手といえども盛衰の激しいこの業界で勝つためには、今後、金融市場へのアクセスは欠かせない。年初に比べると取引量は減っている一方で、覇権争いは激しさを増している。バイナンスを筆頭とする中国勢の取引所に加え、日米のプレーヤーも抑えグローバル戦略をすすめるためにはカネと人材が必要だ。ちなみに中国のビットコイン採掘機器メーカーであるビットメイン(Bitmain)やカナンクリエイティブも香港証券取引所に大型IPOを申請中だ。

ところが中国では法定通貨対仮想通貨の取引は禁止されており、それを仲介する取引所業務も当然御法度だ。ちょうど先週も、中国政府による仮想通貨取引禁止令発布の一周年を見計らって、中銀等による注意喚起が行われた。

そこで法的枠組みの外で事業展開を進めるフォビは、合法的にビジネス展開を行える道を探っている。中国本土でそれが閉ざされた今、香港経由で国際市場にデビューしたいと考えるのは不思議ではない。実際、香港上場企業でCFOを務めた経験のあるOKEXのCEOを今年5月に迎え入れ、金融やファイナンス分野の機能強化に動いている。(関連記事「【速報】OKEXの元CEOがHuobi(フォビ)に電撃移籍 グローバル展開推進へ」)

もちろん、今後フォビが上場会社への資産注入に動いたとしても、香港株式取引所が待ったをかける可能性はある。もともと証券界は仮想通貨慎重派が多い

一方で、ルールに乗っ取った上場であれば、自由市場を体現する香港証券取引所の対応はひとつの試金石となるだろう。

ただし大株主となった上場企業に業務や資産を注入すると、開示やコンプライアンス要件も高くなる。市場との丁寧な対話が求められる。

資本市場も巻き込んだ仮想通貨取引所による秋の陣が、いよいよ始まろうとしている。