マルタはいかにして世界のブロックチェーン・ハブになったのか:主要な法律事務所に聞く

本稿は投資のアドバイスをするものでもありません。全ての投資にはリスクが伴います。投資の判断をする際はご自身で調査をお願いいたします。

 18年7月4日、マルタ共和国の議会はブロックチェーン技術のための規制の枠組みを承認し、世界で最も「ブロックチェーン・フレンドリー」な国の一つとなった。このことがマルタ共和国、投資家、将来にとって何を意味するのか本稿は法律のドラフト作成に関わったマルタを代表する法律事務所の一つ、ガナド・アドボケイツのパートナー弁護士のシモン・シェンブリ氏にインタビューした。

始まりについて

 「2年ほど前、国内のいくつかの小規模な団体の間で初めの運動が起こった。昨年6月、現政権が再選を果たすと、この運動が加速した」

 「運動の目的はマルタをブロックチェーンのハブにして、多くの投資を国に集めることだった。そして、規制の目的が既に多くの関心を集めていた。法律事務所として、弊社は多くの依頼をうけ、数多くの取引に関わっていた。法整備が行われたいま、私たちはこの動きが将来さらに進むものと予測している」

 シルヴィオ・シェンブリ氏、金融サービス、デジタル経済・イノベーション担当副大臣

「マルタは、仮想通貨空間に法的な確実性を提供した世界で初めての国となった」

企業がマルタでビジネスを行うことを検討すべき理由について

 「私たちは他の国とは違ったやり方をしていて、単にICO(イニシャル・コイン・オファリング)と金融資産にだけ注目しているのではない。私たちがしているのは、DLT(分散型台帳技術)とブロックチェーンのための法的環境を整備することだ。そこにはもちろん、ICO、仮想通貨資産、交換所、販売者、通貨発行者等の規制も含まれる」

 「法整備は、出来たばかりのDLTの枠組みにマルタを本拠に選ぶとともに、彼らが望むなら、マルタ・デジタル革新局という新たな公的機関による登録、あるいは、認可または認証を得る機会も提供する。それはつまり、ある一定の範囲で、DLTの枠組みに法的な裏づけを与えるということだ。仮想通貨空間について誰もが知る大きな課題の一つは、銀行との関係である。私たちはDLTの枠組み、ブロックチェーンおよび仮想通貨をなんらかの形で規制することで、法的な裏づけを行う。ただし、マルタがやろうとしていることは、強権的な規制ではないことに注意していただきたい。マルタは、3つの法律を導入したが、これらは原則に基づく、軽度の規制である」

OKExの最高経営責任者(CEO)、クリス・リー

「弊社はマルタ政府との共同作業に期待している。マルタは前向きで、私たちと同じ価値を共有しているからだ。お互いに最も重視しているのは、トレーダーと一般ユーザーの保護、マネーロンダリング防止法と銀行顧客のID情報収集基準の遵守、ブロックチェーン環境の継続的な発展の重要性と革新の認識である」

 多くの仮想通貨企業が既に事業の本拠地をマルタに移している。その中には、バイナンス、OKEx、トロン等が含まれる。7月12日、バイナンスはデジタルトークン投資家のために「ブロックチェーン・ベースの銀行」をマルタに開設する計画を発表した。

マルタ政府が仮想通貨を導入する計画について

 「現時点では、マルタ政府の計画にそのような予定はない。しかし、他の国にはこうした計画があり、既に手続きが開始されていることを私たちは知っている。マルタが将来計画したとしても驚かない」

仮想通貨のエコシステムについて

 「先ほど述べたように、法制度の目的は全体的な法的枠組みを整備し、規制を行うことである。規制当局(同国では、マルタ金融サービス局が担当する)の目的は、トークンを発行する際のホワイトペーパーの作成方法についての規制を導入することである。これにより、企業がICOを開始することもより容易になる」

今後のイニシアチブについて

 「マルタでは今まさに動きが起こっている。政府と民間セクターが多くの活動を組織しようとしている。例えば私たちは法律事務所として、数週間前に現地で講演会を開き、3つの法案について説明をした。様々な団体がセミナーを主催しており、こうした機会には積極的に出席するようにしている。マルタでは10月に大きなイベントが予定されており、国内の関係者だけではなく、マルタで何が起こっているか関心を持っている海外の関係者も多く集める予定である」

「世界で初めてDLTの枠組み全体の規制を試みた国になったという明快な理由で、私たちの国は注目を集めている。事実、業界の主要なプレイヤーたちがマルタに本拠を移している」

他国の政府もブロックチェーン業界を受け入れるべき理由について

 「仮想通貨をめぐっては、懐疑的な見方をする人もいることを理解しているが、それが現実である。私たちの国の政府は―与党だけでなく野党も含めて、ということを強調したい―国全体として仮想通貨を受け入れている。今回の法案は全会一致で議会を通過した。こうしたことはマルタではあまり起こらないので、マルタ人が概してこうした動きを前向きに捉えていると考えられる。仮想通貨空間に関わる最も真面目な投資家たちも、今何らかの規制が必要であるという事実を認めている。私たちが国として行っていることを、他の国も注視しているのではないかと私は思っている」