G20、世界的な仮想通貨規制の次の一歩は10月、FATFによる標準テスト後に

 フランスのブリュノ・ル・メール財務相により、ブエノスアイレスでのG20サミットで仮想通貨についての公開討論会が招集された、G20はデジタル通貨規制に関する世界的な協調に向けて一歩前進した。しかし、その一歩は小幅な一歩としてとらえるしかない。というのも、3月に開かれた財務相会議の終わりに、7月が「極めて具体的な勧告」の期限になると決定していたからだ。勧告に含まれる内容は、何を対象に規制するかではなく、何のデータが必要とされるかであった。7月の期限が過ぎた今、G20は3月のコミットメントを再表明したが、同時に10月に新しい期限を設けて、金融活動作業部会(FATF)が自らの標準が仮想資産と呼ばれる資産にどう適用されるのかを明確化するのを待つことに決めた。

仮想通貨が真剣に受け取られるようになるまでの道のり

 17年11月、投機と急成長によりいとも簡単に1万ドルの壁を破ったビットコインは確かに投資家の関心を引いたが、それだけではなく、非中央集権的で匿名なデジタル通貨は世界中の規制機関の注目を浴びるようになった。フランス財務相がアルゼンチンでのG20会談で仮想通貨を取り上げようと提案したのは、ビットコインの高値がピークに達したのと同時だった。

 G20加盟国がビットコインを議題とすることに関してコメントしたブリュノ・ル・メール氏は、急上昇する仮想資産に対する神経質な態度を示した

「次のG20議長国であるアルゼンチンに提案する。4月のG20サミットではビットコインの疑問について一丸となって議論が行われる。投機のリスクがあるのは明らかだ。これについて検討・調査を行い、残り全てのG20加盟国と協力して、どのようにビットコインを規制できるか見込みをつけなければならない」

 しかしビットコインブーム以前にも、政府の主要な首脳会談の注目を浴びて、主要な世界的経済討論に参加する試みが仮想通貨グループによって行われていた。例えば、オーストラリアデジタル通貨協会(ADCCA)は14年11月、オーストラリアのブリスベンで開催されたG20と日程を意図的に被らせて行事を開催した。ADCCAの議長ロン・タッカーは14年のこの動きの背後にある理由について以下のように説明する。

「今年オーストラリアがG20の議長国を務めるので、デジタル通貨産業が母国でも世界でも成長と繁栄を続けられるよう、利害関係者とやり取りを行うこれ以上の好機はない」

 この動きの効果を追跡するのは難しいが、ADCCAが15年にデロイトと協力関係を結ぶのに貢献した可能性はある。今となっては、オーストラリアは強力だが公平な規制を受けた仮想通貨大陸とみなせる。

ブロックチェーンがもたらす利益

 世界的な金融の安定性に対するビットコインの潜在的リスクと危険性を議論するための準備をする前に、G20は既にビットコインを支える技術の潜在的な利益について調査を行っていた。

 国際ガバナンスイノベーションセンターのジュリー・マウピンは17年3月の声明で、「国境を超えた経済協力への人々の信頼を取り戻すために戦う」一致した努力の必要性について詳しく述べた。声明にはブロックチェーン技術が潜在的な解決策であるという確信が見られる。

 しかしこの段階では、ブロックチェーン技術の潜在性については単なるささやき声と提案があるだけで、そういった混乱を招くフィンテックに取り組む具体的な計画があるわけではなかった。実際、デロイトによるほぼ同時期の報告は、世界の政府の準備がまだ整っていないことを示していた。

もう無視はされないし、脅威でもない

 ビットコインが財務相たちの話し合いの議題に挙がる様になって以来、仮想通貨の世界は、そのような大国の指導者たちが新しい金融技術に関してどの方向へ舵を切るのかを注視するようになった。イングランド銀行総裁と金融安定理事会(FSB)議長を務めるマーク・カーニーがG20加盟国に対して、仮想資産は世界経済にとって「リスクにはならない」と述べたのが、仮想通貨に関する前向きな議論の最初の兆候であった。これによりビットコインの価格は1000ドル上がった。

「それを仮想資産と呼ぼうが仮想トークンと呼ぼうが、決して仮想通貨ではない。それが私からの明確なメッセージだ」

 オランダ銀行総裁を務め、FSBの脆弱性評価に関する標準調査会の議長でもあるクラース・クノットはビットコインをこのように定義し、ビットコインが通貨とみなされた場合ほど厳しく規制されないような位置付けを行った

規制の動きを進める前にデータを収集

 3月のG20財務相会議の終わりに、具体的な制定を行う前にしばらく時間を取ることが決まった。声明は3月19日、アルゼンチン中央銀行総裁フェデリコ・スターゼネッガーにより発表された。

「7月には、『何を規制するか?』ではなく『何が必要なデータか?』を盛り込んだ、極めて具体的で極めて明確な提案を出す必要がある」

 それにより、G20が仮想通貨の規制に必要なデータに関する具体的な提案を提出する期限が7月と決定したので、複数の委員会に対して情報提供の依頼が行われた。G20は多種多様な機関に協力を要請した。金融安定理事会(FSB)、決済・市場・インフラ委員会(CPMI)、証券監督者国際機構(IOSCO)、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)、金融活動作業部会(FATF)などに報告を求めた。

7月の報告

 7月にFATFが報告を返してきたが、G20は新しい10月の期限を設ける決定をした。共同声明によると、G20はFATFが自らの標準を仮想通貨にどう適用できるかを確認するために待つとのことだ。

 その一方、G20はFSBが他の標準設定機関と行った作業についてのFSBの概要報告を受け取った。様々な委員会が、仮想資産が世界経済に与える影響について、より詳細な説明を行った。

 IOSCOの作業の焦点はイニシャル・コイン・オファリング(ICO)と仮想資産プラットフォームの規制リスクへの対処の仕方であった。

 BCBSは、規制強化、監督、銀行の実務の視点から仮想資産の発達を監視することに関わっていた。「銀行の仮想資産への直接または間接的な関与の実在性の定量化、そういった関与を自由裁量権を持って行う方法の明確化、銀行と監督機関のための、仮想資産とフィンテックに関する発達の監視」

 最後になるのがCPMIで、支払いと清算の安全性と効率性の視点からデジタル通貨と分散台帳技術の発達を監視し、独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行しようとしている銀行に注意を喚起していた。

 一方、FSB自体は仮想資産の成長が金融の安定性に与えるリスクの初期評価実施に関わっていた。

金融の安定性に関する懸念

 FSBははじめ、仮想通貨の進歩が金融の安定性に与えるリスクは低いと述べていた。しかし、仮想通貨市場の急激な成長を踏まえ、FSBとCPMIは協力して新たに発生しつつある金融の安定性リスクの監視と特定を支援するための枠組みづくりを行うよう要請を受けた。

「この枠組みの目標は、金融の安定性に関する新たな懸念を時間通りに明らかにすることだ。この目的のために、そのようなリスクを一番良く強調できるリスク指標が枠組みに含まれている。リスク指標の計算には、可能な場合は公開情報源のデータが用いられている」

「FSBは複数の基準をもとに監視の枠組みで使われる指標の選択を行った。基準とは、時間と法域をまたいだ比較可能性、入手のしやすさと再現性、指標がデータと結びついている程度、そして算出するための分析にかかる労力だ」

 基本的にFSBは、終値、時価総額、価格変動、日々の取引の月平均の監視を行ってきた。これらの値は報告書内でグラフとして見ることができる。

Chart

Source: Financial Stability Board

仮想資産と取引所の分類

 ICOSCOがICOと取引所の監視作業を行い、以下のことが分かった

「一つ目に、取引された仮想資産が証券、商品、またはその他の金融商品のどれに該当するか、またはそのようなプラットフォームの運用をどうするかといった問題は、金融規制の議論で真っ先に挙がる疑問だ」

「二つ目に、いわゆる『仮想通貨取引所』は取引所の準拠法に違反していることがある。場合によっては、取引所が仲介業者として分類されていて、それでも準拠法に違反していることがある」

「最後に、既存の規制モデルでは、投資家を保護し、他の多数の規制項目、例えば監視などを実行するのを支援するために規制対象の組織を通じたアクセスに頼ることがあるが、現在仮想資産プラットフォームへのアクセスにはそのような規制対象の組織が関わっていないこともある」

 またアメリカ合衆国の米国証券取引委員会(SEC)は、自らの証券の定義を盾にとって、数多くのICOを証券と分類し続けている。その上、特に日本や韓国といった国では取引所の運営方法が大きな争点となってる。日本が多数の取引所に業務改善命令を出す役目を自ら引き受けた一方、韓国は取引所を銀行法が適用される合法的な組織として分類した。

FATFの標準の実施

 G20から、資金洗浄とテロリストによる仮想資産を通じた資金供給を防ぐための計画を策定するよう命令を受けたFATFは、18年7月1日から19年6月30日まで実施される作業計画を公表した

「米国大統領のもとで、FATFは大量破壊兵器の拡散に使われる資金の供給を防ぐ作業を優先させ、テロリストの資金供給対策に置く重きを今より強化し、仮想通貨/仮想資産の規制と監督を向上させる予定だ」

 FATFはまた、G20加盟国の間で異なる、規制の必要性およびアプローチについて調査を行った。

「国によっては一切の仮想通貨/仮想資産の使用を禁止していたり、金融機関が仮想通貨/仮想資産を扱うのを禁止している」

「マネーローンダリング及びテロ資金供与対策を仮想通貨/仮想資産に適用する国もある。国によっては仮想通貨/仮想資産やそれを扱う取引所の明確な規制は行わないものの、広範囲にわたる要件により、怪しい取引の報告を求めている。多くの国は法律や規制を制定する最中にある」

規制と期限

 G20が集り世界的な仮想通貨規制に向けた次の一歩が踏み出されるのが10月だが、それまでの間に仮想通貨の世界がどれだけ発達するか見ものである。
この決定が発表された文書の言葉遣いは、現在の仮想通貨のありのままの姿に対するバランスの取れたアプローチという印象を受ける。

「技術的イノベーションは、仮想資産を支えているものもそうだが、金融制度やより幅広い経済にとって大きな利益になる可能性がある」

 しかし、仮想通貨の脱税や資金洗浄への使用に関するそれ以外の懸念を示す警告がある。そういった問題はFATFの計画によって更に対処・調査が行われると期待したい。

「しかし、仮想資産が消費者と投資家の保護、市場の一体性、脱税、資金洗浄、テロリストの資金供給に関する問題を生んでいるというのは事実です」

締めくくりの言葉は:

「FATFの標準の実施に関する3月のコミットメントを改めて表明させて頂きたい。そしてFATFには10月に、標準が仮想資産にどう適用されるかを明確にして頂きたい」