金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会は19日、第7回の会合を開き、仮想通貨の証拠金取引・信用取引の規制について議論が行われた。議論の中では、証拠金取引・信用取引について、金融商品取引法にならう形で業規制を行う方向で議論が行われた。研究会のメンバーの間では、投資家保護をより強化する意見や、証拠金倍率を上限2倍にすべきといった声が出た。
研究会では事務局側が討議資料をもとに現状の説明と論点をまず説明した。
証拠金取引は仮想通貨交換業者16社の中で7社が行っている。2017年度の仮想通貨取引量の約8割を占めている。その一方で証拠金取引を巡る相談は増加。2018年1~9月で376件の相談があったという(同時期の外国為替証拠金取引は75件)。「ロスカットが機能しない」といったシステム上の不備に関するものや、広告内容や利用規約と実際の対応のかい離といった内容だ。
金融庁:「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第7回)資料3より
「仮想通貨レバレッジ取引業者」は金商法で規制か
日本では仮想通貨の証拠金取引は、金商法で規制されていない状況だ。一方、米国やEUにおいては、包括的な規制のもと、原資産の内容に関わらず、金融規制の対象となっている。
今回の議論では、店頭デリバティブ取引と同様の規制の必要性が話し合われた。「仮想通貨デリバティブ取引業者」として規制を行う案が事務局から示された。委員からは「機能やリスクが同様ならば、同様の規制を設けるべき」と、金融規制を設けることについておおむね賛同が得られた。さらに「仮想通貨の固有のリスクから追加的な規制がいるのではないか」という声も出た。
また委員の中からは、仮想通貨の証拠金取引を行う際には、金商法の「第一種金融商品取引業」と資金決済法の「仮想通貨交換業」の2つのライセンスが必要ではないかという意見も出た。具体的な制度の仕組みについては、今後の議論になりそうだ。
証拠金倍率上限は4倍か2倍か
証拠金倍率については、現状では最大25倍としている業者もある。第5回の研究会で、日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が説明した自主規制案の中で、経過措置を設けた上で上限を4倍とする案が示されている。
今回の議論では、EUが上限2倍の規制をしていることが紹介され、委員の中からは「4倍でもまだ高いのではないか」という声が複数出た。
これに対して、JVCEAの奥山泰全会長は、「(4倍というのは)暫定的に置いている」ものだとし、「何倍が適切なのかをしっかりと検討したい」と応えた。
また仮想通貨のボラティリティや性質に応じて、証拠金倍率の上限を変える考え方も示された。
投資家保護の徹底
仮想通貨のデリバティブ取引については、顧客の資力に応じて取引を制限する意見も委員から数多く出た。ほかの資産と比較してもボラティリティが高いことから、投資家の理解度を確認することや、投資額を年収の一定割合に制限する案も出た。
また既に投資家からシステム上の不備や契約とのかい離といった苦情があることから、既存事業者の苦情対応を適切に行うことを求める声も上がった。