仮想通貨事業に特化する米アライズバンク社の最高経営責任者(CEO)が11月28日、数百人の投資家から400万ドル(約4億5000万円)余りをだまし取った罪でFBIに逮捕された。テキサス州北部地区連邦地検が同日、米司法省のウェブサイト上で発表した

逮捕されたアライズバンクのCEO、ジャレッド・ライス被告(30歳)は今年2月、米証券取引委員会(SEC)が提起した民事訴訟の被告となっていた。訴因は今回と同様、仮想通貨に関する証券詐欺3件および通信詐欺3件だった。

2月の民事訴訟前の1月下旬、テキサス州規制当局は、実際には「銀行サービス」を提供していない自称「仮想通貨銀行」のアライズバンクに無条件の緊急停止命令を出し、州の住民へのいかなるサービスも中止するよう命じていた。

エリン・ニアリー・コックス検事が昨日公開した裁判所文書により、ライス被告によるアライズバンクによる詐欺の詳細が明らかとなった。それによるとライス被告は世界で「初めての分散型銀行プラットフォーム」としてアライズバンクを宣伝していたという。ライス被告は、アライズバンク独自の仮想通貨「アライズコイン(AriseCoin)」のイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を行い、数週間で6億ドル(約680億円)を調達したと虚偽の情報を提示していたことが疑われている。

ライス被告はまた、自身がかつて別のインターネット関連詐欺で州に有罪答弁を行っていたことを公表することなく、投資家にビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、米ドルでアライズコインを購入するよう勧誘していたという。

ライス被告はアライズバンク社が「仮想通貨業務の他、Visaブランドのクレジットカードやデビットカード、米連邦預金保険公社(FDIC)の保険付き口座を取り扱い、従来型の銀行業務を提供できる」と虚偽の説明をしていた疑いも持たれている。ニアリー・コックス検事はこれについて、ライス被告がテキサス州で銀行業務を提供する権限を実際には有しておらず、アライズバンクはFDICの保護適用外であり、Visaとの提携関係も一切ないとしている。

ライス被告は、アライズバンクの「架空の」利益を紙媒体やウェブで宣伝したとされる一方、投資家から集めた資金を「ホテル代や食事代、衣服代、顧問弁護士代、さらには訴訟後見人代」といった自身の個人的費用に充てていた。

ニアリー・コックス検事は米司法省の報道発表で「テキサス州北部地区連邦地検は、仮想通貨部門に対し、法による規制を実施すべく尽力している。テキサス州北部地区は、オンライン上か否かに関わらず、このような目に余る欺瞞行為を断じて許さない」とコメントしている。

有罪となった場合、ライス氏は実刑判決を受け最長で120年間、連邦刑務所で過ごすことになる。

コインテレグラフが昨日伝えた通り、テキサス州証券委員会が仮想通貨投資会社「マイ・クリプト・マイン」に対し緊急の業務停止命令を出しており、同社および同社社長が未登録証券の販売と詐欺行為への加担、公衆への欺瞞の罪で起訴されている。

また今月、テキサス州証券取引委員会は、テキサス州住民に未登録証券を販売したとして、別の仮想通貨会社に対しても業務停止命令を出しており、不正あるいは詐欺の疑いがある仮想通貨関連企業に対する一連の介入としてはこれが今年の直近の事案となっている。