本稿は、仮想通貨・ブロックチェーンデータ提供を手がけるコインゲッコー(CoinGecko)の四半期レポートの一部を編集・再構成したものです。
「ブロックチェーンのインターネット」と呼ばれ、注目を集めるコスモス(Cosmos)。2019年3月にメインネットを公開し、3月13日に初めてのブロックがマイニングされた。その後、1週間ほどでステーキングの額がトップ3に浮上するなど、クロスチェーンの大本命であるCosmosとは、どのようなものなのだろうか。
今回はCosmosとはどういうものなのかを簡単に解説してみよう。
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Cosmosとは
仮想通貨データ提供を手がけるコインゲッコー(CoinGecko)によると、Cosmosは「インターネット同様にインターオペラビリティ(相互運用性)とスケール性を持った独立したブロックチェーンのネットワーク」という。
一般的にCosmosの説明として、ビットコインとイーサリアムなど、異なるブロックチェーンを結びつける「ブロックチェーン」であると説明される。
これまでであれば、新規のブロックチェーンを作成する時には、フォークをするか、もしくはイーサリアムのスマートコントラクトを使うしかなかった。後者であれば、ブロックチェーンをイーサリアムに依存し、処理をスマートコントラクトとする方法だ。しかしこれは難易度が高く、送金が遅延したり、さらに手数料が高いといったスケーラビリティの問題がある。バグがあったり、見つかったりした時に一から書き直す必要がでるなど、対処が非常に煩雑になるという問題があった。
(出典:CoinGecko)
Cosmosはこうした問題に対し、ブロックチェーンを簡単に作れるようにした点が大きな特徴と言える。さらにブロックチェーンがお互いにコミュニケーションを取れるようにすることで、参加者全員が自分自身のコンピュータを所有し、ブロックチェーンのネットワークを形成する。まさに「ブロックチェーンのインターネット」だ。
簡単にまとめると、これらは以下のような特徴が示される。
- ブロックチェーンを簡単に作成
- 相互運用性
それぞれはCosmosが採用するTendermint CoreやCosmos SDKが必要になる。
作成のための雛形 Tendermint Core
ブロックチェーンをゼロから作ることも可能だが、非常に高い技術力を要するためにあまり現実的ではない。そのため、作成するためにはテンプレートが必要になる。Cosmosはこのテンプレートとして、Tendermintというネットワークとコンセンサスの高速エンジンを用意している。
アプリケーション開発者はテンプレートに自身の分散型アプリケーション(dApps)に必要な機能を加えていくだけだ。Tendermintを利用することでブロックチェーン上に簡単にアプリケーションを開発できる。
このTendermint上でチェーンを開発するツールにCosmos SDK(コスモス・ソフトウェア・デベロップメントキット)があり、この開発ツールがCosmosの特徴と言えるだろう。
Cosmosを使った例としてはステーブルコインLCNEMを開発するLCNEM社がLCNEMMINTというチェーンを開発している。
Cosmos HUBが実現する相互運用性
Cosmos-SDKによって作られたチェーンはインター・ブロックチェーン・コミュニケーション(IBC)を利用してCosmosネットワークを構築する。このCosmosネットワークにはHUBとゾーンと呼ばれる機能があり、これらによって相互運用(データやコインの移動)が可能になっている。
このゾーンにはTendermintだけではなく、ビットコインやイーサリアムといったブロックチェーンも含まれる。それぞれのゾーンはHUBに繋がりさえすれば、他のゾーン、つまり異なるブロックチェーンとコインを交換できる。ビットコインやイーサリアムのそれぞれで作ったDappsを相互運用できるのだ。
(出典:Cosmos)
イーサリアムにとって代わる?
Cosmosはこうしたネットワーク性や拡張性から、これまではイーサリアムが多くを占めていた部分をCosmosがある程度とって行くのではないかと予想する向きもある。LCNEM社の木村優CEOは「特に中規模開発はイーサリアム、大規模開発はCosmosというように住み分けが起きていくのではないか」と予想する。実際にLCNEMではCosmosを使って開発が進められている。
Cosmosは基盤システムのために、まだまだどのようなビジネスやアプリケーションに応用されるかは開発段階と言える。
ただ、インターオペラビリティという点はブロックチェーンを大きく進化させる可能性がある。異なるブロックチェーンで作られた分散型アプリケーションが接続され、利用しやすくなれば、より社会への普及が進むと考えられるからだ。もちろん資産管理もしやすくなり、それに伴うアプリケーションの開発にも有用と言えるだろう。
今後の動向に注目したい。
参照 コインゲッコー
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編集 コインテレグラフ日本版