欧州委員会が暗号通貨利用者の中央データベース作成が必要だとして計画書を提出している。EUはテロリストによるマネーロンダリング対策がその理由だとしている。

委員会はビットコインを含む仮想通貨による資金移動がEU内の公共機関によって観測及び監視できていない状態であるとして、仮想通貨プラットフォームの規制の枠組みの確立が不可欠であると考えているようだ。

“そのためには、企業が個人情報を収集し、記録するプロセスが必要になり、そういったデータを公共機関(FIUのような)に提供するか、同じグループ内の民間企業に提出する必要性がある”と、提出されたプロポーザルには書かれている。

仮想通貨関連のスタートアップへの規制の枠組み作成に関連して―全てのEUにおける仮想通貨関連のスタートアップが、それぞれが抱えるプライベートでセンシティブな情報を収集する必要がある―として欧州委員会は、定期的に仮想通貨ユーザーのデータが中央データベースに登録されなければならない旨を4AMLDの第65条に記載している。

欧州委員会が提出したプロポーザルの内容は次のようなものだ―

 

「仮想通貨に関連する利用者のデータや個人情報及びウォレットアドレスを収集した中央データベース作成と管理におけるFIUに対するアクセス権限譲渡と、利用者による仮想通貨利用の自己申告フォームなどの適切な対処」

 

核となる問題

 

欧州委員会としては、分散型である仮想通貨ユーザーのデータベースを中央集権的に構築したいという狙いがあると思われるが、そこには核となる2つの問題が存在する―個人情報の過剰収集と、サイバーセキュリティにおけるお世辞にも堅牢とはいえないそのセキュリティ管理だ。

ヨーロッパの政府機関や、法執行機関、非営利組織などは、管理している個人情報の何十万というデーターベースを狙われ2004年から度々ハッキングの被害に遭ってきている。このうち、公的に記録されたデータの流出は229件とされているが、ヨーロッパの政府支援機関による古いシステムを利用した管理体制の脆弱性が原因だったことが判明している。

ヨーロッパ連合とそのサイバーセキュリティ対策部は長い間ダークネットやビットコインによる取引に対して対策を講じてきたが、仮想通貨が”テロリスト”の温床となっており非合法な売買が今日世界中で行われているという非論理的な理由を持ち出すことで、何億人分もの仮想通貨ユーザーの個人情報やセンシティブな金融情報の中央データベース化を図ろうとしているようだ。

おそらくこれは大手メディアがマイナスの要因を大々的に報道したことが原因だろうと思われるが、実際には現金の方が非合法な物の購入、テロリズムの資金源としては好まれている。それにはいくつか理由が存在する―現金は完全に匿名であり、仮想通貨はそうではないからだ。

暗号通貨はパブリックな分散型の共有された元帳が基盤となって作られたものであるため、透明性が高い。そのため、インターネットに接続した誰もが取引の情報を閲覧することが出来る。現に、欧州刑事警察機構はこのビットコイン・ネットワークにおける脆弱性を突くことで2016年の早期にシルク・ロードでの取引を追跡し検挙に成功している。

欧州委員会の主張基盤が仮想通貨の中央集権化による非合法な薬物購入やテロリストへの資金援助であるならば、現金利用者に対してこそ同じ対策を行った方が賢明だろう。現金を利用したマネーロンダリングや違法薬物の売買が行われたケースの方がはるかに多いのだから。