エルサルバドルは、100万ドル(1億4400万円)のビットコイン(BTC)またはテザー(USDT)を同国に投資する意思のある1000人に対して居住ビザと市民権を付与する新たな市民権プログラムを開始した。しかし、市民権取得に必要な価格は、市民権を10万ドルから提供している近隣カリブ諸国と比べると、遥かに高額である。
エルサルバドル政府とステーブルコイン発行者テザーは12月7日、このプログラムを「エルサルバドル自由ビザプログラム」と命名して発表した。このプログラムでは、「100万ドルのビットコインまたはUSDTの投資」を行う1000人の富裕層の投資家に対して市民権を提供する。その最初のステップとして999ドルの返金不可の預託金が必要となる。
1000人から100万ドルを集めることができれば、エルサルバドルに総額10億ドルをもたらすことになる。
仮想通貨ヘッジファンドのアルタナ・デジタル・カレンシーの創業者アリスター・ミルン氏はSNSで「エルサルバドルの提案はグローバル市場で競争力がない」と指摘し、より安価に欧州連合(EU)の市民権を取得できると強調した。
「エルサルバドルが国に100万ドル(USTまたはビットコインで)投資する人にビザと市民権を提供するというが、正直なところグローバル市場で競争力がない。EUの市民権がより安く手に入るので、がっかりだ」。
El Salvador offering Visas and citizenship to anyone investing $1million (in USDt or Bitcoin) in the country
— Alistair Milne (@alistairmilne) December 7, 2023
Frankly uncompetitive in the global market (can get EU citizenship for less) so disappointing https://t.co/ALydiMAJRj
投資移住コンサルタント企業ヘンリー&パートナーズのデータによると、マルタは81万ドル(75万ユーロ)の投資で市民権を提供し、これによりEU各国にビザなしでアクセスすることができるようになる(具体的にはシェンゲン圏と呼ばれる23カ国へのアクセスが可能になる)。
また同社によれば、エルサルバドルの隣国であるカリブ諸国のアンティグア・バーブーダ、ドミニカ、セントルシアが10万ドルの寄付と引き換えに市民権を提供している。グレナダとセントキッツ・ネビスも同様のプログラムを持ち、それぞれ15万ドルと25万ドルからの寄付で市民権を取得できる。
しかし、エルサルバドルのナジーブ・ブケレ大統領によって施行されたビットコイン支持政策により、仮想通貨投資家はエルサルバドルへの移住を検討するかもしれない。エルサルバドルはビットコインを法定通貨としたほか、今後15年間にエルサルバドルに投資するハイテク企業に対する所得税とキャピタルゲイン税を廃止するとしている。
ブケレ大統領はまた、2019年6月に大統領に就任した際、世界で最も高い殺人率の一つを抑えるための取り組みを開始した。2022年3月に開始された取り締まりは成功を収めたが、アムネスティ・インターナショナルの4月のレポートによると、「重大な人権侵害」を伴い、6万6000件におよぶ恣意的な拘束があったという。
ブケレは2024年の再選に集中するため、12月1日に大統領を辞任し、2月の総選挙に向けて準備を進めている。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン