ダイヤモンド業界の世界的な大企業であるデビアスが10日、ブロックチェーン技術を使って100個の高価なダイヤモンドを鉱山から小売業者まで追跡したと発表した。プレスリリースによると、「鉱山から小売業者までのダイヤモンドの遍歴がデジタル的に追跡されたのは今回が初めて」だという。

 デビアスは、自社の新たなプラットフォーム「Tracr」を今年後半に立ち上げ、ダイヤモンド業界全体に開放する予定だと述べている。この取り組みは、サプライチェーンの効率性を増すことに加え、デビアスのダイヤモンドが紛争ダイヤモンドではないことへの顧客の信用と大衆の信頼を高めるために計画されたという。紛争ダイヤモンドとは、戦闘の違法な資金源にするために紛争地域で採掘され取引されるダイヤモンドのことだ。

 Tracrはデビアスと5社の大手ダイヤモンドメーカー(ダイヤコア、ダイヤラフ、KGKグループ、ロージー・ブルーNV、ヴィーナス・ジュエル)が共同で開発した。デビアスグループのブルース・クリーバーCEOは次のように語る。

「Tracrプロジェクトチームはバリューチェーン内でのダイヤモンドの追跡が可能であることを実証した。これは以前には不可能だった方法での資産のトレーサビリティを保証する。これは業界の発展とイノベーションへのコミットメントを私達と共有する実証実験の参加者達の緊密な関与によって達成可能になった。意義深いブレークスルーだ…」

 Tracrは、カラット、クラリティ、カラーといった個々のダイヤモンドの特性を記録する固有の「グローバル・ダイヤモンドID」を割り当てる。そしてこのデータは不変のデジタル台帳に集約される。その後鉱山から小売業者へのダイヤモンドの移動の各チェックポイントで、Tracrはこのデータを検証する。この実証実験は当初1月に発表されていた

 「血塗られたダイヤモンド」の取引を阻止するための国際レベルでの努力はこれまでも行われている。00年の国連総会決議によってキンバリープロセス認証制度が作られており、いくつかの法的に強制力のある基準と証明をダイヤモンド業界関係者に課している。キンバリープロセスのウェブサイトでは、世界市場に入ってくる紛争ダイヤモンドの99.8%を阻止したとしている。だがカナダのNGOであるインパクトは取り組みが不十分だと主張し、今年1月にこの制度から離脱している。

 1888年創業のデビアスは、ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、カナダで採掘を行い、35ヵ国で事業を展開している。同社は21世紀初頭まで世界のダイヤモンド取引を独占していた。だが近年は、大きな備蓄を持つ国々からの圧力や大衆の紛争ダイヤモンドに対する関心の高まりによって、ビジネスモデルの変革を迫られていた。14年に世界で取引されたダイヤモンドは814億ドル相当にのぼる

 ダイヤモンドと貴金属業界の大手企業は4月、業界の透明性を高めると言うブロックチェーンプラットフォームのトラストチェイン・イニシアティブを開発するためにIBMと提携した。このイニシアティブはTracrのように、貴金属と宝石を原産地から小売業者まで追跡するよう設計されている。

 カナダのダイヤモンド関連企業であるルカラ・ダイヤモンドは2月、自社の近代化のために新たなCEOを任命した。新CEOのエイラ・トーマス氏は、ダイヤモンドの出自を保証するためにブロックチェーン技術を使用するデジタルプラットフォームであるクララ・ダイヤモンド・ソリューションズを買収している。