デジタルガレージの子会社でブロックチェン金融サービスを手掛けるクリプトガレージは21日、仮想通貨と法定通貨建てトークンの同時決済サービスの実証実験を開始すると発表した。政府が新技術の社会実装を目指して、規制の一部を緩和する「サンドボックス制度」のもとで実施する

ブロックチェーン開発企業のブロックストリームが提供するサイドチェーンの決済ネットワーク「Liquid Network」上で行う。このネットワーク上にあるビットコインとペッグしたトークン(L-BTC)と、円建てのトークン(JPY-Token)を発行。アトミックスワップの技術を用いることで、取引参加者間が2つのトークンをリアルタイムで同時決済を行う。

この実証実験には国内の仮想通貨交換業者3~5社が参加する。期間は19年1月21日から20年1月20日までの1年間だ。

実証を通じて、サイドチェーン上の財産的価値。記録・取引の安全などを検証し、「安定的かつ公正なOTC取引市場が成立することの検証等」を行う。

クリプトガレージは、これにより「取引相手に対する信用リスク(カウンターパーティリスク)を排除しつつ、迅速で安全、かつ秘匿性の高い暗号資産の取引を実現する」としている。

実証実験のイメージ:クリプトガレージの発表資料より

今回の実証実験は、内閣府が進めるサンドボックス制度のもとで実施する。同制度のもとで認定されたプロジェクトは3件目。フィンテック関連の事業としては初めてだ

クリプトガレージは、実証実験を進めることで、次のような問題を改善できると説明している。

  • 一般大衆向けの仮想通貨市場が拡大する中、交換業者のカバーマーケットが確立しておらず、流動性・価格面等において不安定な状況が発生しやすい。
  • 共通の決済基盤ならびに共通の取引基盤がないため、仮に仮想通貨交換業者が他の業者から流動性を獲得する場合、①多大なる信用リスクを取引相手に対して取らざるを得ない(法定通貨と暗号資産を同時決済できない)、②参加者間で取引を秘匿しにくい、③当局が業者間大口取引を捕捉しづらい。
  • 一般投資家を対象とした仮想通貨交換所(仮想通貨交換業)では、取引の迅速性、利用者のITリテラシーの観点から、秘密鍵を交換業者が預かる形式をとる例も多いが、同様の形態をとると、セキュリティ上のリスクが高くなる。

Liquid Networkは、ブロックストリームが昨年9月に立ち上げたビットコインのサイドチェーンだ。企業と個人の間でビットコインとのトランザクションを高速化を図ることが目的としており、10月の発表時点では23の仮想通貨取引所が参加している。国内の取引所ではBitbank、BTCBOX、Zaifの名前が並んでいる。

クリプトガレージは、デジタルガレージと東京短資が共同で設立したフィンテック分野におけるブロックチェーン金融サービスの研究開発と事業化を行う合弁会社だ。今回の実証実験でも活用するLiquid Network上のアプリ開発を目的としたプロダクト「SETTLENET(セトルネット)」を開発している。21日の発表によれば、ブロックストリームもクリプトガレージに出資している。

またデジタルガレージは18年12月にブロックストリームに対して1000万ドルの追加出資を行ったことも発表している。

サイドチェーンとは、メインチェーンの性能向上や拡張機能を付与するための技術。スケーラビリティ問題への対応策に必要な技術の一つとして注目されている。

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