新たなレポートによると、2025年に入って以降、仮想通貨運用会社がブロックチェーン上の保有資産を大幅に拡大している。また、機関投資家は分散型金融(DeFi)をサービスの裏側に組み込む動きを強めている。
分析プラットフォームのアルテミスとDeFi利回りプラットフォームのヴォールツは、「『仮想通貨ネイティブ』の資産運用会社の新たなクラスが登場している」と15日に発表したレポートで述べた。
「2025年1月以降、このセクターはオンチェーン上の資本をおよそ10億ドルから40億ドル以上に増やしている」
資産運用会社は「多様な投資機会に静かに資本を振り分けており」、その一例として、主要な企業が分散型融資・借入プラットフォームであるモルフォ・プロトコルに約20億ドルをロックしていることが挙げられている。
仮想通貨市場は今年、米国のトランプ政権が業界規制の緩和に動いたことで急成長している。これにより、規制上の懸念なしに仮想通貨やDeFiプロトコルを活用できるという安心感が、機関投資家の間で広がっている。
DeFiはバックエンドインフラに
アルテミスとヴォールツは、米国における規制の変化と、DeFiプロトコルの進化により、機関投資家の仮想通貨に対する見方も変化してきたと指摘する。
「DeFiインフラが成熟するにつれ、機関投資家はDeFiを『統制の利かない破壊的な空間』ではなく、補完的で柔軟に構成可能な金融レイヤーとして認識し始めている」という。
また、フィンテック企業、仮想通貨ウォレット、取引所などがDeFiツールを「見えないバックエンドインフラ」として活用しているとも記されている。
「DeFiの複雑さを抽象化することで、これらのプラットフォームは利回りをユーザー体験に直接組み込み、ユーザーの定着率を高め、新たな収益化の道を開き、資本効率の向上を図っている」という。
ユースケースの三本柱
レポートによれば、機関投資家によるDeFiの活用法は主に3つあり、「ステーブルコインの利回り」、「仮想通貨の利回り」、「仮想通貨の借入」が中心で、いずれもDeFiの複雑さをユーザーから隠す形で提供されている。
たとえば、コインベースはUSDCの預金に対して利回りを提供しており、ペイパルも自社のステーブルコインであるPYUSDに対して同様のサービスを展開している。
仮想通貨の借入や利回りに関しては、レポートはこれらのサービスを「DeFiマレット(フィンテックが前面、DeFiが裏面)」と表現している。たとえば、コインベースが提供する仮想通貨ローンサービスは、モルフォ・プロトコルを活用している。
ユーザー体験が採用の鍵に
アルテミスとヴォールツのレポートでは、DeFiプロトコルのユーザー体験が今後の採用率や資本の定着性においてますます重要になると強調されている。
「ユーザーは信頼性、予測可能性、全体的なユーザー体験(UX)といった要素を重視している」とレポートは指摘。「やり取りを簡素化し、摩擦を減らし(ガス代不要の取引など)、信頼性と透明性によってユーザーの信頼を築くプラットフォームほど、長期的にユーザーを定着させやすい傾向がある」という。