仮想通貨取引所コインチェック記者会見 Q&A全文 和田氏、ICOやSTOへ興味示す|テレビCM再開は?

金融庁に仮想通貨交換業者として登録されたことを受けて、コインチェックは11日、記者会見を開いた以下は、コインチェックの勝屋敏彦代表取締役、和田晃一良執行役員、大塚雄介執行役員と記者とのQ&A全文だ。

去年1月のコインチェック事件からのマーケットの動きを勝屋氏や和田氏はどう捉えているのか?今後の目標は何か?また、和田氏が仮想通貨に感じる魅力は何か?Q&Aセッションを通して明らかになった。

記者会見 Q&A 全文

Q. 足元の相場が悪い要因に、去年のコインチェック事件を指摘する声も出ているが、それについてどのように受け止めているか?また不正流出事件は二度と起こさないと宣言できるのか?

勝屋氏「昨年、当社の不正流出事件を境に、必ずしもそれだけでもないとは思うが、マーケットの流れが変わったきらいはあると思います。当社のお客様、取引先だけではなく、マーケットに携わる方々に対して、ご迷惑をおかけしているという認識はあります。だからこそ私どもとしては、ほぼ1年間だが、しっかりセキュリティを高めて二度と不正流出がないように、努めてきました。ただセキュリティに関しては、『そこまでやれば万全』ということではなくて、内部管理と同様に不断に努力をしてようやくキャッチアップできるものだと思っております。私どもとしては、そうした不断の努力を惜しまずしっかりやっていくことに尽きるのではないかと思っております。」

Q.コインチェック事件から1年がたった。騒動があったことで現在仮想通貨に対して不信感を持っている人がいるし、逆に浸透したという面もある。1年を振り返ってあの騒動がどういう風なものだったと考えているか?

和田氏「確かにちょうど1年前に私たちの不正流出事件があって、その影響で色々なところにご迷惑をおかけしたことは大変申し訳なく思っています。またその中で相場についてこの1年間について振り返ってみると、事件が起こった以前から市場が活況である意味バブルのような状態になってしまっていたと個人として考えている。それが現在は落ち着いた状態になった。この状態が、元々、仮想通貨においての平常な状態だと思っているこのような状況だからこそ、例えば、新たな技術の開発であったり、新たな商品の開発であったり、色々なことに腰を据えて未来への投資ができると考えている新しいコインであったり、証券の方に近いような仮想通貨であったり、調査を行いながら、今後の業界の発展のために努力をしている次第でございます。

大塚氏「基本的には和田がお伝えしたことと同じだと思っております。去年の事件は、市場全体が熱狂していた中で起きたものであり、私たちは事業自体すでに4年やっているが、3か4年前が今と同じ状況だったと思っております。次に向かって進んでいきたい」

Q. 足元で今のマーケット状況を反映する形で収益状況はどう変わったのか?

勝屋氏「2017年は市場が非常に活況で、それに比べると足元ではだいぶ取引量が市場全体として下がっているのは否めないと思っております。今年度に関しては4月から10月のほぼ終わりまでにお客様の入金であるとか、お客様への販売を止めていた期間もございますので、コストが色々な内部管理体制の強化で上がっているところ、収入はかなり落ちている。11月以降に再開をして、当社のボリュームとしては伸びておりますが、まだ収支が均衡するところまでは、経常的にはいっていない市場にかなり左右される部分がございますので、市場が良くて当社の努力が実った場合には、それなりのコストを補うという局面もあるとは思いますが、それが平常的に続く状況にはなっていないのかなという風に考えています」

Q. 収支が均衡するのはどれくらいのタイミングか?

勝屋氏「二つございまして、一つ目は市場の状況で二つ目は当社の努力だと考えていますが、前者については『神のみぞ知る』というところがありますので、いつとは言えませんけど、当社が努力できる部分については、マーケティングの施策で書いたような観点でお客様が入会されてから取引をするまでのサポートをしたり、悪いはお取引の内容をしっかり分かっていただくことを通して取引を増やしていただくことは、非常に余地があると思っています。それを2019年は、しっかり転向させる形に持っていきたい。

Q. 去年の流出事件は、フィンテックという言葉のフィンとテックを分けた時に、フィンの部分の内部管理とか顧客保護をないがしろにした結果、事件が起きた部分があると思う。マネック傘下に入ったことによって、この1年、どこをどのように変えたのか?

勝屋氏コインチェックは非常に急成長したITベンチャーでしたので、ないがしろにしていたわけではないのですが、なかなか管理の強化というところまでは努力はしていたが十分ではなかったということだと認識しております。そこの部分をマネックスグループのマネックス証券が20年間やっていますので、そこで得た知見を導入する、ビルトインするという形で一気にかなりのレベルまで上げたという状況でございます。何をやったかということは、業務改善命令に書いてあるような地道なことをコツコツやっていく、金融機関というのはお客様から仮想通貨をお預かりしているという意味で、しっかりした管理体制を築き上げてきたと思っております。」

和田氏「全般的な内部管理体制であったり、勝屋が申し上げた通りだが、私の担当する分野である開発であったりサイバーセキュリティーの分野で、この1年で特徴的に行った部分というのは、コールドウォレットの採用がメインに上げられると考えております。私たちの事件が起こった際に、ネムがすべてホットウォレットに管理されていたという状況でありまして、そこを改善するために、コールドウォレット全通貨対応というところをやりました。その対応自体は4月に全部終わりましたが、それからさらに改良を進めてきました。改良の経過や考察に関しましては、仮想通貨の自主規制団体とコミュニケーションを取りまして、私たちの事例を踏まえた上で、再度事件を起こさないように連携を図りながら業界の発展に貢献していきたい」

大塚氏「マネックスの方から経験のある方に来ていただいた。今まで20年間やってきたマネックスのノウハウだったりとか、知見を我々のところに注入していただいて、まさにテックとフィンで取り組んでいきたいと考えています。」

Q. 一年前の事件は結局どういう原因で起こったのか?

勝屋氏「1年前に起きた事件については、昨年の3月8日に事案の概要を当社のプレスリリースで出しました。外部の攻撃者が当社の社員の端末にマルウェアを感染させて、外部のネットワークからその社員の端末経由で個人のネットワークに不正にアクセスをした。遠隔操作をしてネムを管理しているサーバー上で通信の傍受を行なって、秘密鍵といわれるものを盗んで不正送金をした。

Q. それは分かっています。どういう犯人像で捜査がどのくらい進んでいるのか?

勝屋氏「それについては、警察に全面協力をしていますが、申し訳ありませんが、捜査に関することはコメントできませんのでご容赦いただけたらと思います」

Q. 今回のセキュリティ対策には予算がどれくらいかかったか?人をどのくらい増やしたか?

和田氏1月の事件でシステムに携わってた人は、40名ほどだったが、現在に至るまでで人員が増強されていて、1.5倍から2倍ほどの人数になっております。またサイバーセキュリティに関する専門家の人数も事件後から増えまして、現在では5名から6名ほどになっています。

勝屋氏「予算に関しては、何億円単位であります」

Q. 現在、当時のセキュリティ対策を振り返ってみて、体制はどうだったか?

和田氏「現在に比べると当然、人員も予算も不十分な点はあったと考えております。ただ業界が2018年までに急速に成長したという状況を踏まえると、私たちのできる最大限の努力の中で、セキュリティ対策は行なっておりました。最大限の努力はしていたところではありますが、あのような事件が起こってしまったということになります」

Q. テレビCM再開の予定は?

大塚氏「テレビCMはマーケティングの一つの方法でやるかということでありますので、現時点ではマーケティングの施策を優先して、今使っていただいているお客様を優先してやっていきたいと考えています」

Q. 新しいビジネスとしてICOやSTOをコインチェックとして取り組むか?

和田氏ICOSTOなど色々なビジネスがあると思うが、継続的に調査・検討をしております。仮想通貨やブロックチェーンは、これまでの投機的な性質だけがすべてではないと考えております。私たちの会社も元々は仮想通貨での決済をグローバルに行うのを一番に考えていました。今後は販売所・取引所というのは、短期的には集中していこうと考えていますが、中長期的には新しい仮想通貨の技術を使っていこうと考えています。」

Q. 金融庁への登録を受けて執行役員になっている和田氏や大塚氏の処遇は変わるか?

勝屋氏「両人を前に言うのもなんですけど、決まっていません。ただ考え方としては、マネックスグループ100%にはなっていますが、コインチェックという会社の良さとマネックスグループで培ってきた知見をしっかりインテグレーションするというのが将来の社業の発展に資すると考えております。そういった文脈の中で人事についてはその時その時でグループの意志もありますけど、判断されるものと理解しています。」

Q. 利益を上げられるようになるのはいつ頃か?

勝屋氏19年度には収支均衡させて利益が出るような体制にしていきたいと考えています。

Q. 収益を稼ぐ中心は、当面はやはり交換業か?

勝屋氏「その通りです。170万人のお客様がいますので、しっかりそのお客様に対して、サービスの内容を今まで以上に説明することによって、失われた信頼を取り戻すことが大事だと思っております。

Q. ある程度、交換業が軌道に乗った上で、次の技術に進むのか?

勝屋氏「一緒に考えます。もちろん研究はICOやSTOを含めて致します。ただビジネスとして注力する分野というのは、足元は交換業であることは間違いないです」

Q. 1年間の思いは?

大塚氏「目の前にあること、やるべきことをひとつひとつやるしかないという状況でした。一つ一つ着実にやり続けた一年だったと思っております。その結果、今回の登録に至ったと思っております。これからもお客様に使っていただけるような信頼していただけるようなことを一つ一つ積み上げていくことが私たちのできることだと思っています」

和田氏「確かに1年以上、登録申請から経過しましたが、その中で積み上げた部分は多いと感じております。先ほどのコールドウォレットの話もそうですし、内部管理体制であったり、そこらへんに関して私たちが足りなかったからこそ、本日までに登録に至れていなかったというのが基本的な考えです。それがしっかり完了したからこそ本日の登録に至ったと考えております。その中で、他社の事例がどのようなものか分からないですが、これだけの仮想通貨交換業というものが、色々な管理体制が必要になったというところで、それは逆に仮想通貨業界の発展という点では、今後の成長につながっていくと思っております」

Q. 事件を受けてJVCEA(日本仮想通貨交換業協会)から技術的なサポートはあったか?

勝屋氏「JVCEAさんは10月24日に金融庁に認定されました。当社は今年の1月4日に2種会員として参加をさせていただきました。参加の前に今日の短いバージョンのような形で事件の経緯などについて、当社の方から説明させていただきました。」

Q. 今後、技術的な側面をどのように捉えているか?今後、業界のリタラシーの発展に対してどのようにコミットしていくか?

和田氏「技術的な側面に関しては、個人的には先ほどのICOSTOに興味があります特にSTOに限った話で言うと、中々小さい企業がグローバルに資金調達するのが難しい状況があった。それが仮想通貨の登場によって、非常に流動性が高く、またその反面怪しい業種が出てきたりという状況もあったんですけど、そうは言っても、そういったことが可能になったということは魅力的で社会的にも影響力が大きいと感じております。そういった仮想通貨の技術の利点を生かした上で、今度は健全な形で健全な発展に貢献していきたいと考えています。

大塚氏「リタラシーのところに関して、仮想通貨というのはどうしても技術的な側面であったり、セキュリティ的な側面であったり、専門的なところが非常に強くなっておりますので、やはり新しいことが出てきた時に、一般の方が分かるような形で、翻訳というか、分かりやすく伝えていうことがリタラシーを向上させる上で一つのキーポイントではないかと思っております。我々で言うと、使いやすいプロダクトを提供し、技術的に難しいところはわかりやすく情報提供していくことで、リタラシーを上げていただいて、日本全体の仮想通貨に対する理解度を上げていただけたらと思っております。」

Q. 苦情対応の拡充について具体的に。

勝屋氏「拡充しております。当社は事件の前からお客様のお問い合わせに対する対応体制はかなり強化しておりましたし、ブームがあったということもあって、カスタマーセンターの人員を増強してきた経緯があります。事件の後もそこを強化して、メールや電話に対する体制について、多分業界の中では一番陣容的には揃っていると理解しています。」

Q. 何人体制ですか?

勝屋氏人員的には、100人くらいのスタッフの人が対応しているという形になっております。

Q. 匿名通貨についてはどうするか?

勝屋氏「匿名通貨に関しては、取り上げる基準を社内で作りまして、これをこないだ加入した自主規制団体、JVCEAの基準とすり合わせた上やっていきます。そう言った基準をクリアする通貨について、今後とも増やしていきたいと言う風には思っていますけど、結論ありきでいつまでに増やすとか、そう言う計画を立てているわけではありません。匿名性が高い通貨に関しては、自主規制団体が規制している以上は計画を立てていません」

Q. 現在のコインチェックの稼働している口座数は?

勝屋氏「口座数に関しては、開示はしておりません。上場企業であるマネックスグループの開示の判断から、現状ではしていない。将来的には、開示をすることも考えたいとは思っておりますが、現在はしておりませんので、ご容赦いただけたらと思います」

Q. コインチェックという名前自体は変えないのか?

勝屋氏全く現状どおりです。

Q. 理由は?

勝屋氏「先ほど申し上げたように、コインチェックの良さをマネックスグループと合わせて社業を伸ばしていくというのが、今回のグループ入りのコンセプトでございますので、コインチェックの名前を変えるわけにはいかないと考えております。」

Q. 口座数とアプリのダウンロード数は違うのでは?

勝屋氏「おっしゃる通り、本人確認後の口座数とアプリのダウンロード数は違います。ただダウンロードした段階で当社の提供しているスマホのサービスであるチャートなどがみれます。そういう意味で私たちの潜在的なお客様という風に捉えておりますが、口座数の開示につきましては、先ほどの質問にもお答えした通り、マネックスグループと相談して検討して参りたいと考えております。

Q. 2017年末の仮想通貨相場の盛り上がりについて。

和田氏「当時は、仮想通貨に対する認識がまだ世間一般の中で低いと感じておりました。認知が低いということは当然やっている方も持っている方も、少ないと感じておりました。仮想通貨に関しては、仮想通貨を持っている人が必要で、その母数が多ければ多いほど、仮想通貨のメインになるサービス、決済であったり、送金であったりとか、そういうサービスがないといけないと考えております。当時の考えとしては、まずは仮想通貨を持つ人を増やすこと、それが一番私たちの会社にとっても業界にとっても良いことだと考えておりました。その一環でテレビCMであったり、プロモーションを行いました。またその盛り上がりを私たちが本当に作ったのかというところに関しては、中々判断がむずかしいところと感じておりまして、私たちがあまり営業をしていない海外でも同様の盛り上がりがあったり、同じような事例があったと考えております。その観点で、私たちでなかったとしても、他の業者であったりとか、過程の話になりますが、そういったことがあったのではないかと思います」

Q. 新しいビジネスに関して分かりやすく

和田氏「今後どういうサービスを展開していくかは決まっていない状態でして、その中で先ほどのICOだったり、STOだったり、最近話題のものですとステーブルコインなど、そういったところを総合的に判断していって決めるということです。私が仮想通貨で一番魅力だと感じているところは、グローバルで簡単に送金できることだと感じております。AML(アンチマネーロンダリング)とかの観点も必要になってきますが、そこの対応があったとしても中々今日では海外への送金であったり、個人間の送金とか難しい状況にありますので、そこを解決する手段として仮想通貨が一番有望なのではないかと感じております。またブロックチェーンの技術に関しては、仮想通貨の性質とはまた違った話でして、価値の移動というところに限らず、分散型に台帳を保存するというか、情報を共有して、一般の中で認知を一致させるというか、そういったところに価値があるのだと思います。そこについても今後、サービスを展開していって、より良いサービスを世の中に出していきたいと思っております」

Q. 他の取引所との差別化はどうする?

勝屋氏資料にある「システムセキュリティの拡充」だと思っているが、それを裏付ける優秀なエンジニア、それが和田を筆頭にコインチェックには集まっているというのが、コインチェックの強みという風に思っております。だからこそ優れたUIやUXができますし、それから仮想通貨の数も日本の中では一番多い。それからブロックチェーンについても高い技術力がある。そういったところが強さに繋がってくると思っております。」

Q. マネックスグループの傘下に入って、コインチェックの企業文化は変わったか?

大塚氏「私たちやスタートアップ企業というのは、新しいことにチャレンジして試していくところが一つの強みであるし、そこを伸ばしていくのが良いこと。ただ、こういうサービスをやっている中においては、ただ試すだけではなくて、試すまでにどういうリスクがあるかということを確認するというところをマネックスの中の内部管理体制だったりを理解してやっていく。ここの両方の文化が融合している形になっていますので、もともとコインチェックとしてよかった文化のところと、我々の学んだところによって、より早くやるのだが、よりリスクを減らしながらどうやるか、両者が理解し合いながら、やっていかないと難しいところではあると思います。」

 

(Q&Aでの発言については表現などを一部編集しています)

 

ICOとは、Initial Coin Offering(新規仮想通貨公開)の略。仮想通貨の新規発行を用いた資金調達方法で、株式市場でいうIPO(新規株式公開)による資金調達方法に類似する。IPOとの相違点は、証券会社などの監査機関を通さずに直接的に個人や企業がオンライン上で資金調達を行えることである。発行側は資金調達コストを低く抑えられる一方、信用が十分に付与されないので、反故になる事例や、そもそも詐欺目的で作られたものなどが多いため、ICOで投資を行う場合十分に注意が必要であると考えられている。

仮想通貨用語集

STOとは、Security Token Offeringの略。セキュリティ(証券)トークンを用いた資金調達。セキュリティトークンとは、一般的なトークンをユティリティトークンと表現するのに対し、発行したトークンを証券同等として扱うことで、区別するトークンの呼称。仮想通貨業界で行われる資金調達としてICO(イニシャル・コイン・オファリング)が有名だが、投機的な資金集中が問題視されている。これに対し、STOは証券法などの規制に準拠した資金調達を行うので、異常な資金の流れを正すことができる方法として注目されている。

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