米国最大の仮想通貨取引所であるコインベースが、同社のウォレットユーザーに対し、自身のイーサリアム(ETH)アドレスを利用したインスタントメッセージ機能の提供を開始した。7月12日のコインベースのブログ投稿で発表された

新機能は、ブロックチェーンアドレスを使用してユーザー間で通信を可能にするインスタントメッセージングシステム、XMTP(Extensible Message Transport Protocol)に依存している。XMTPは、分散型ソーシャルメディアネットワークのLensでも使用されている。

Demo of Coinbase Wallet instant messaging function. Source: Coinbase

コインベースの投稿によれば、一部のウォレットユーザーは、他のユーザーのcb.id、.eth、またはLensのユーザーネームにメッセージを送信することが可能になった。この機能は、ブログ投稿からQRコードをスキャンしたユーザーやLensアカウントを所有しているユーザーに最初に提供され、将来的にはすべてのユーザーが利用できるようになる予定だ。メッセージはエンドツーエンドで暗号化され、プライバシーが保証されており、ユーザーはメッセージを受け取りたくないアドレスをブロックすることも可能だ。

コインベースは、この機能をリリースする動機の1つとして、仮想通貨コミュニティ内の詐欺を減らすことを挙げている。ユーザーはウォレットアドレスの所有者に直接メッセージを送ることができるため、受信者のWeb3アイデンティティが確認できない別のプラットフォームでメッセージングを行う必要がなくなる。これにより、「不必要なリスクと潜在的な損失を排除できる」とコインベースは語った。

現在、仮想通貨ユーザーが最も頻繁に使用しているコミュニケーションアプリはツイッター、Discord、テレグラムであり、いずれも現時点ではユーザーが自身のWeb3アイデンティティを確認することは許可されていない。

また、コインベースはXMTPをメッセージングに使用することで中央集権化を減らすと主張している。もしコインベースがウォレットの提供を停止したり、会社として存在しなくなった場合でも、ユーザーは自身のXMTPチャット履歴を保持し、LensterやOrbAppなどの他のXMTPアプリを使用して閲覧することができる。「あなたのチャットは自動的に移行されるので、コミュニケーションに集中できる」とコインベースは語った。

XMTPのドキュメントによれば、メッセージングプロトコルは開発者であるXMTP Labsが100%所有するネットワーク上で動作している。しかし、ドキュメントでは「ネットワークの段階的な分散化に向けて作業中である」とも述べている。

XMTPの共同創設者であるシェーン・マック氏は、分散化の価値について強調した。彼はXMTPがソーシャルメディアやインスタントメッセージングアプリではなく、コインベースウォレットやLensなどの他のアプリケーションが利用できるプロトコルであると語った。「本当に相互運用可能で分散化したネットワークを持つためには、開発者がそれをベースに構築したいと思わなければならない。そのため、XMTP上で400以上の開発者が構築している。閉鎖的なサイロを構築するのではなく、開発者が一緒に構築することを奨励しなければならない」とマック氏は語った。

コインベースウォレットは、Web3ユーザーネームの採用を増やすための動きの一部となっている。同社は昨年9月にすべてのユーザーに無料のcb.idユーザーネームを提供し、年末に向けて登録数が急増した。Web3ユーザーネームは、ユーザーが仮想通貨を長い文字列で構成される仮想通貨アドレスではなく、人間が読みやすい名前に送信できるようにする。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン