日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告カルロス・ゴーン被告が逮捕されてから2ヶ月。検察官によるゴーン被告の長期拘束は「人質司法」という批判が海外から上がる中、米大手メディアのCNNが、同じような「人質司法」の犠牲者として、かつて最大の取引量を誇った仮想通貨取引所マウントゴックス(Mt.Gox)の元社長にインタビューを行った。

(引用元:CNN「カルプレス被告とゴーン被告」)

カルプレス氏はゴーン容疑者と同じくフランス人実業家で、資産家であり、同じく金融犯罪の容疑で司法の裁きを受け、自由を失った人物。昨年12月に行われた裁判では業務上横領の罪などに問われ、検察側から懲役10年の求刑を言い渡された。今年3月15日には判決が言い渡される予定だ。ゴーン容疑者と同じく、カルプレス被告も一貫して無罪を主張している。

「人類最大の敵」であってもやるべきじゃない

CNNへの取材に対しカルプレス氏は「あの体験は悪夢だった」と告白。「あのようなことは誰にも起きてほしくない。たとえそれが私の最大の敵、いや人類にとっての最大の敵だとしてもね」と述べた。

CNNによると、カルプレス氏は11月半に及ぶ拘束期間中、詳細なノートを取り続けた。検察から一日の休みもなく50日間連続で尋問を受け、カルプレス氏は、早く終わらせるために罪を認めてしまうことを考えたという。

自由が与えられず、協力すれば全てが簡単になる、と毎朝言われるシステムの中にあって、罪を認めることは魅力的です

(引用元:CNN「カルプレス氏が拘束期間中に書いたノート」)

また、カプレス被告は7ヶ月の拘置所生活でて77パウンド(約35キログラム)体重が減ったことも明かしたそうだ。独房は窓のない6畳の部屋。トイレ、洗面所、そして日記を書くことができる小さなテーブルがあるだけの質素な部屋で、一日に約10時間、直立で起立していることを強いられていたそうだ。もし前かがみになったり、寝ているのが警備員に見つかった場合にはドアを通じて怒鳴られる状態。応じない場合には「お仕置き部屋」に連れていかれて、両手を後ろで縛られた状態で数時間床に放置されたこともあったそうだ。

カプレス被告は2年前に釈放されたが、現在も日常生活への適応に苦労していると語っている。告訴された犯罪者として、住む場所、そして仕事を見つけることもとても苦労していると述べた。

現在はある米国の会社でCTOとして勤務。まだ審議の途中ということで国外に移動することも認められておらず、フランスで病気療養中の母親とも過去6年間の間、会うことができていないそうだ。

海外から批判集まる「人質司法」

今回のCNNが報道を含め、海外からは日本の「人質司法」に批判が集まっている。ゴーン被告の妻、キャロルさんは、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)に、容疑者の長期拘束を伴う「人質司法」の見直しを日本政府に訴えるよう求める要請文を送った

また米有力紙ワシントンポストへの寄稿の中でテンプル大学のジェフ・キングストン教授は、ゴーン被告が「弁護士無しで8時間尋問を受けている」とし、検察は「心理的に」ゴーン被告を追い込み、よく分からない日本語での供述書にサインをさせようとしていると批判。関与を認めることでようやく抜け出せる「人質司法」は、「日本ブランド」を台無しにしていると論じた。

Mt.Gox事件(マウントゴックス事件)とは、仮想通貨史上初の巨額ハッキング事件。マウントゴックスは東京・渋谷に拠点を置いていた仮想通貨取引所で、世界中のビットコイン取引の約70%を実施していた。2014年、大規模なサイバー攻撃を受けた結果、顧客が預けていた75万BTCと預り金28億円、そして自社保有の10万BTCを失い、破綻に至った。最終的にそのウェブサイトと全サービスを停止、裁判所に破産手続きを行ったが、その後民事再生への道を進むことになった。今後の進展は明確ではない。

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